陰陽師安倍晴明の優雅なオフ~五人の愛弟子奮闘記~ 作:阿弥陀乃トンマージ
「す、すごい……」
「これが旭さんと朧さんの実力……」
「恐れ入るね……」
泉と金がただ驚き、基が舌を巻く。
「いや……まだだ!」
「えっ⁉ ……あっ!」
焔の反応に戸惑いながら、栞が視線を戻して驚く。
「ガラアッ!」
「グラアッ!」
「ゴラアッ!」
「!」
「‼」
三つの頭を持った大きな犬が姿を現したのである。旭と朧も身構える。
「こ、こんどは頭三つかよ!」
「晴明ちゃん、あいつは?」
栞が困惑する横で、焔が問いかける。
「あれは……ケルベロスだね」
「ケルベロス?」
泉が繰り返す。
「ああ、あの世の番犬さ」
「あの世の番犬……」
「それはまた穏やかじゃないねえ……」
金が呟く横で、基が苦笑を浮かべる。
「オルトロスは様子見ってことかな? まったく、道満め……」
晴明も苦笑交じりで呟く。
「晴明さま……」
「下がっていてください……」
旭と朧が前に進み出て、晴明を守るように立つ。
「いやいや、それでは、数の上で不利じゃないか」
「はい」
「そうなりますね」
旭と朧が頷く。
「いや、はい、そうなりますね、じゃなくて、ここは我も加勢するよ」
「……それでよろしければ……」
「どうぞ、御随意に……」
旭と朧が互いの距離を少し開く。
「お邪魔するよっと……」
晴明が旭と朧の間に立つ。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………」
ケルベロスと晴明、旭と朧がそれぞれ見つめあう。
「……!」
晴明がスッと右手を挙げる。
「せいっ!」
「めいっ!」
旭と朧がケルベロスに飛びかかる。
「先に仕掛けた!」
焔が声を上げる。
「ガアッ!」
「ゴアッ!」
「むっ!」
「ぬっ!」
旭と朧が繰り出した槍と鎌をケルベロスの左右の頭が牙で防ぐ。
「はあっ!」
晴明が剣を生じさせて、ケルベロスの中央の頭に対し、攻撃を仕掛ける。
「グアッ!」
「うっ!」
晴明の振るった剣もケルベロスの牙に防がれる。
「な、なにやってんだ⁉ そ、そんな剣さばきじゃあ、そりゃあ防がれるだろうが!」
栞が顔をしかめる。
「いや……これは狙い通りだ!」
基が声を上げる。
「ええっ⁉」
金が驚く。晴明が片手で素早く印を結ぶ。
「爆!」
「ガアアッ⁉」
「グアアッ⁉」
「ゴアアッ⁉」
ケルベロスの三つの頭がはじけ飛んだ。
「爆発させた……なるほど、慣れない接近戦はケルベロスの動きを固定させるため……」
「そういうことだよ」
泉の呟きに対し、晴明が頷く。
「……シャアアッ!」
一瞬間が空いて、残ったケルベロスの胴体が動き出し、大蛇と化した尻尾を振るって、晴明の首元にかみつこうとする。
「『日光』!」
「『月光』!」
「シャアアアッ⁉」
旭と朧が素早く印を結び、光線を発生させて、左右から大蛇を貫く。
「尾が蛇に変化するのは、先ほども見ました……」
「馬鹿のひとつ覚え……」
旭と朧が呟く。
「馬鹿は貴様らだ……!」
「「⁉」」
声がしたと次の瞬間、旭と朧の身体が黒い球体に包まれて見えなくなってしまう。
「……道満か!」
「晴明……余裕ぶって、のこのこ出てきてくれたな……」
姿を現した道満が、印を結ぶ。晴明の足元に黒い大きな穴が生じる。
「しまっ……⁉」
晴明が穴に落ちる。
「お師匠さま!」
泉が声を上げる。
「……形代を通じて、見ておるだろう、晴明の弟子ども……」
「……‼」
道満に鋭い視線を向けられて、金が思わず身構える。
「……今宵、羅生門からこの京の都に妖を多勢呼び寄せる……」
「多勢だと……」
基が目を細める。
「止められるものなら、止めてみせろ……! 師匠抜きではたかが知れているがな……」
道満が形代を切り裂く。焔が頭を抱える。
「あっ! これじゃあ様子が分からない……」
「とにかく朱雀大路に急ぐぞ! 全員揃って出動だ!」
「「「「……‼」」」」
栞の檄に四人は決意した表情で頷く。