陰陽師安倍晴明の優雅なオフ~五人の愛弟子奮闘記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(1)凍える怒気

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 五人は朱雀大路に到着した。

 

「おらあっ! 道満、どこだ!」

 

 栞が声を上げる。

 

「ふっ……怖じ気つくかと思ったが……」

 

 道満の声が大路に響く。

 

「冗談も休み休み言いたまえよ……」

 

 基が髪をかき上げながら呟く。

 

「怖じ気づいているのはそっちじゃないの~」

 

 焔が笑う。

 

「……」

 

「あら? 黙り込んで……どうやら図星のようですわね」

 

 金が微笑む。

 

「……減らず口は師匠譲りか」

 

 道満が忌々し気に呟く。

 

「それだけではないということを証明してみせます……!」

 

 泉が鋭い声で告げる。

 

「ふん、大口を叩きおる……それならば、やってみせろ……!」

 

「!」

 

「……!」

 

「危ない!」

 

 土の中から、何者かが現れる。泉の声かけにより、四人がその突進をかわす。

 

「………」

 

「な、なんだ、こいつは⁉」

 

 栞が驚く。土の中から現れたそれには、腕が生えてなく、魚の背のような形をした禿げ頭をしている。長い頭身の半分を頭が占めており、上あごに一本、下あごに二本の大きな牙を有していた。

 

「まあ、外の国の物の怪なんだろうね……」

 

 基が自らの顎をさすりながら呟く。

 

「体が土気色ですわね……」

 

「っていうことは……?」

 

 金の言葉に焔が反応する。

 

「おそらくは土属性……ここは私が参ります」

 

 泉が前に進み出る。

 

「…………」

 

 土の中から現われた物の怪は、泉の方にギロリと視線を向ける。

 

「気をつけろよ、泉!」

 

 栞が声をかける。泉が頷く。

 

「ええ……」

 

「……………」

 

「ここは先手必勝! 『水流』!」

 

 泉が印を結んで、勢いよく水を出す。

 

「‼」

 

 土の物の怪は水を全身に浴びて怯む。

 

「やった!」

 

 泉が笑顔を浮かべる。

 

「流石ですわ!」

 

 金が声を上げる。

 

「一気にたたみかけるんだ!」

 

「はい!」

 

 基の言葉に応じ、泉が再び印を結ぼうとする。

 

「ああ、仕方がねえなあ!」

 

「⁉」

 

 突如として大音声が響く。泉が視線を向けると、長い銀色の髪で碧い目をした長身の少女が腕組をして立っていた。

 

「手を貸してやるよ! 土の精!」

 

 銀色の髪の少女が自らの頭をポリポリと搔きながら、土の物の怪に声をかける。

 

「な、何者……?」

 

 泉が首を傾げる。

 

「泉、ためらうな!」

 

「はい! 『水流』!」

 

 栞に声をかけられて、ハッとした泉は印を結び、先ほどよりも多い量の水を放出する。

 

「ほらよ! 『凍結』!」

 

「ああっ⁉」

 

 銀色の髪の少女が印を結ぶと、泉の放出した水があっという間に凍ってしまった。

 

「へへっ……」

 

「こ、氷の術?」

 

「そうだ! 道満の一番弟子、凍(こごえ)とは、俺のこった!」

 

「こ、小声? そのわりにはバカみたいに大きな声だけど……」

 

「お、おい、そこの赤毛! 凍だ! そっちの意味じゃねえ!」

 

 凍と名乗った銀色の髪の少女が焔をビシっと指差す。

 

「あ、ああそう……」

 

「……道満の……弟子?」

 

「おい、金髪! 一番を忘れんじゃねえぞ!」

 

 凍が今度は金を指差す。

 

「ふむ、向こうにも弟子がいたのか……しかし、氷の術者とは、聞いたことがない」

 

 基が淡々と呟く。凍が基を指差す。

 

「世の中は広いんだよ! お前ら田舎もんは知らないだろうが!」

 

「ああ、世間知らずに色々教えてくれて助かる。そちらは土の精と言うのだね。土属性ということに確信を持てたよ、ありがとう」

 

「あっ⁉」

 

 凍がしまったという表情になる。

 

「……どうやらお馬鹿さんのようですわよ?」

 

「そのようですね!」

 

 金の言葉に泉が大いに頷く。

 

「おおい! 誰がお馬鹿さんだ! この野郎が! 『凍結』!」

 

「ぐっ⁉」

 

 泉の両脚が地面と一緒に凍りつき、泉は動けなくなってしまう。

 

「はははっ! 俺とてめえは『相絶』の関係だ!」

 

「そ、相絶?」

 

「そうだ、『氷絶水』! てめえに勝ち目はねえ!」

 

「くっ……」

 

「やっちまえ、土の精!」

 

「………………」

 

「ぐうっ⁉」

 

 泉がガクッと首を曲げる。

 

「泉⁉ どうした!」

 

 栞が声をかける。

 

「ははっ! 土の精は相手に取り憑いて、気を失わせ、やがて死に至らしめる!」

 

「な、なんだと⁉」

 

「これでおしまいだぜ!」

 

「そうはさせない! 『狐火』!」

 

 焔が印を結び、火を放出して、泉の脚の氷を一瞬で溶かす。

 

「な、なにぃっ⁉」

 

 凍が驚く。焔が叫ぶ。

 

「泉ちゃん!」

 

「はっ⁉ あ、熱い⁉」

 

 泉が慌てて、脚に付いた火を消す。

 

「よしっ! 気がついた!」

 

 焔が拳をグッと握る。

 

「だ、大分強引だな!」

 

「無茶なことをしないでください!」

 

 栞と金が声を上げる。

 

「まあまあ、いいじゃないの、結果が良ければ……」

 

 焔は二人を落ち着かせる。基が泉に声をかける。

 

「泉!」

 

「え、ええ! 『水の矢乱れうち』!」

 

 泉が水の矢を多数生じさせて、土の精に向かって放つ。

 

「……!」

 

 土の精の体を多数の水の矢が貫く。

 

「ちぃ!」

 

 凍が舌打ちする。

 

「……‼」

 

 崩れ落ちた土の精がたちまち霧消する。

 

「くそが!」

 

「凍らせる手間を与えないようにするまでです!」

 

 泉が凍を指差す。

 

「調子に乗んな! だったらてめえごと凍らせるまでだ! 『凍剣』!」

 

 凍が凍った剣を発生させて、それを手に取り、泉に向かって勢いよく斬りかかる。

 

「はっ⁉」

 

 凍の出足は鋭く、泉との距離が一瞬で詰まる。

 

「もらった!」

 

「『灼』!」

 

「な、なにぃっ⁉」

 

 焔が火に包まれた笏状のものを発生させて、凍の振るった剣を受け止めて、溶かす。

 

「あ、ごめん、あっという間に溶けちゃったね」

 

「ち、畜生め!」

 

 凍が印を結ぼうとする。

 

「『火炎放射』!」

 

「ぐはあっ⁉」

 

 焔が放射した火炎を浴びた凍が力なく倒れ込む。

 

「『火絶氷』ってところかな~」

 

 焔がニヤリと笑う。

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