同好怪!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(4)徒歩で来た

「……はい、すみません……それでは失礼します」

 

 俺はそう言って、学園への電話を切った。

 

「ズズズッ……」

 

 俺は鼻水をすする。ひょっとしなくてもまだまだ風邪引きの身である。昨日ちょっと元気になったからと言って、はしゃぎ過ぎてしまったのがいけなかった。

 

「ふう……」

 

 薬を飲んだ。効き目はなかなかあるようで、起きたばかりよりは大分体が楽である。しかし、これ以上の油断は禁物。今日という今日はとにかく大人しくしておこう……。

 

「♪」

 

 ん? なんだ? インターホンが鳴ったぞ。何も注文はしてはいなかったはずなのだが……とにかく応答する。

 

「……はい」

 

「うーっす、村松っちゃん」

 

「!」

 

 俺は驚いた、何故なのかは知らないが、ドアの外にスカートと気の短いヤンキー……紅蓮龍虎がいるのだ。俺は戸惑い気味に玄関のドアを開ける。

 

「徒歩で来た」

 

 紅蓮は片拳を掲げて呟く。

 

「……プリクラでも撮ってきたのか?」

 

「後で気が向いたらな」

 

「……何の用事だ?」

 

「お見舞いだよ、お見舞い」

 

 紅蓮は手首に提げたドラッグストアのビニール袋を見せてくる。

 

「……お礼参りじゃなく?」

 

「オレにどういうイメージ持ってんだよ……」

 

 紅蓮が目を細める。

 

「……気持ちだけありがたく受け取らせてもらうよ」

 

 俺はドアを閉めようとする。紅蓮はがっとドアを掴む。

 

「……ちょっと待ちなって」

 

「風邪が移るといけない。一応聞くが、お前、学校は?」

 

「はっ、んなもんサボりに決まってんだろ」

 

 紅蓮は胸を張る。

 

「威張るな、今からでも行け」

 

 俺は再度ドアを閉めようとする。

 

「だから待ちなって。『ヤンキーズフード』、食いたくねえのか?」

 

「自分でヤンキーって言うな……分かった、それだけありがたく受け取っておくから……」

 

「つーか村松ちゃんがこの間言ってきたんだろ、『お前らのことをよく知りたい』って……」

 

「⁉」

 

 俺は紅蓮を見つめる。紅蓮はいつものとおりの勝気な表情だ。別にふざけているわけではないようである。俺は紅蓮を部屋に入れる。

 

「おじゃましまーすっと……へえ、意外と片付いてんな」

 

「……ええっと」

 

「ん?」

 

 俺より先にリビングに入った紅蓮が振り向く。

 

「俺がこの間言ったことだが……」

 

「これだよ」

 

 紅蓮は自分のスマホを見せてくる……うん、同好怪三人のグループRANEに、俺が『お前らのことをよく知りたい』という文を送信しているね。

 

「ああ……」

 

 俺は頭を抱える。三日前の軽率な行動を三度恥じる。

 

「村松っちゃんが今日も休みだっつうから、こうしてやってきたんだよ」

 

「ああ……そうか、分かった。しかし、悪いんだが今日は帰ってくれ。繰り返しになるが風邪を移したりするといけないからな」

 

「心配すんな。そんなヤワっちい体じゃねえから」

 

 紅蓮は右腕を曲げて力こぶを作るポーズを取る。

 

「しかし……」

 

「なんつったって……『怪獣』だぜ?」

 

「! そうだ……それについて聞きたかったんだよ」

 

「……お見舞いをさせてくれたら、話すかもしれねえな……」

 

「……分かった。ヤンキーズフードとやらをご馳走になろうか」

 

「ちょっと待ってな……えっと……よし」

 

 紅蓮からスマホを操作する。しばらくすると、俺の家に宅配ハンバーガーとコーラが届く。

 

「こ、これは……」

 

「ヤンキーズフードってやつだ」

 

「ええ……いや、まあ、ある意味ヤンキーズフードか……しかし風邪には……」

 

「この店は食いやすいんだって。ちなみにこれはオレのおすすめな。さあさあ食いな」

 

 俺はハンバーガーとコーラを口にする。

 

「……美味いな、そうか……こういうアメリカンな食事を取ることによって、ダイナミックな怪獣と肉体を同化させたわけか」

 

「全然違えよ。わけわかんねえこと言うな。まだ熱があるんじゃねえか?」

 

「そうか」

 

 にべもなく否定された。熱はかなり下がったはずなのに、顔が真っ赤になってしまう。

 

「ああん⁉ バウアーとアルベルト、巨星かよ! マジか……」

 

「……」

 

「信じていたのによ……」

 

「………」

 

「だけど、面白いな『乱撃の巨星』……人気になるのも分かるぜ」

 

「…………何をやっているんだ?」

 

 ベッドで寝ている俺の横で漫画を読んでいる紅蓮に尋ねる。

 

「何って、看病だろうが」

 

「どこがだよ、帰れよ」

 

「これ読み終わったら帰るよ」

 

「貸してやるよ」

 

「良いよ、オレは読むの結構早ええんだよ。小難しいところは飛ばすからな」

 

「あのな……」

 

「ついうっかりと秘密を話しちまうかもしれねえぞ?」

 

「ちっ……」

 

 俺は舌打ちしながら目を閉じる。しばらく経って目を開けると、パソコンの画面を見て興奮する紅蓮の姿が目に入ってくる。

 

「うおおっ!」

 

「……何を観ているんだ?」

 

「ネトフレだよ」

 

「勝手に人のアカウントで……格闘技の試合か?」

 

「いや、『善良天使』だよ」

 

「こ、興奮する要素あったか?」

 

「むしろ興奮する要素しかねえよ」

 

「そ、そうか、まあ、感性は人それぞれだからな……って、もう帰れよ」

 

「ちょい待ち、このエピソードを観たらな……」

 

「ったく……」

 

 それからまたしばらくして……。

 

「……はい、勝ち~」

 

「くそ、何度やっても勝てない!」

 

「村松っちゃん、オレにゲームで、しかも『金太郎鉄道』で勝とうだなんて甘えよ……」

 

「おかしい、頭を使うゲームなはずなのに……もう一度だ!」

 

「なんか引っかかる言い方だな……別に何度だって構わないぜ! ……と、言いてえところなんだが、もうこんな時間だ、そろそろ帰るぜ」

 

「あ、ああ……」

 

 紅蓮は帰宅する。秘密については聞けずじまいだった。またまたなにやってんだ、俺……。

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