同好怪!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(2)同好……怪?

「……は?」

 

 俺は首をこれでもかと捻る。紅蓮が重ねて言ってくる。

 

「いや、顧問になってくれってことだよ」

 

「それは分かるが……」

 

「分かってんなら、は?っていうリアクションはなんだよ」

 

「いや、すまん……」

 

 俺は頭を下げる。

 

「謝らなくてもいいけどよ……」

 

「……なんで俺なんだ?」

 

「……聞いたところによると、村松先生はまだいずれの部活動や、同好会などの顧問もされていないということでしたので……」

 

 疾風が眼鏡の蔓を触りながら呟く。

 

「……誰に聞いたんだ?」

 

「それは秘密です」

 

「ちっ……」

 

 俺は三人に聞こえないように小さく舌打ちする。教師という仕事で面倒なのが、部活動やら同好会の顧問というやつだ。これまでは新人ということで何かと負担がかかるだろうということで免除されていた。しかし、もう三年目だ。さすがにそういうわけにもいかないだろうという雰囲気は感じ取っていたが、なんとか誤魔化しながら新年度を迎えていた。だが、やはり他の先生方にはバレていたのか……。お前だけ楽はさせんぞってか……。

 

「それほど面倒をかけるつもりはありません」

 

 疾風がこちらの考えを見透かしたようなことを言ってくる。

 

「う~む……」

 

「お名前だけでも貸して頂ければ……」

 

「いや、そうは言ってもだな……」

 

「どなたかに顧問になって頂けないと、活動が出来ないということなので……」

 

「顧問になる以上は監督責任というものがある……こう見えても、教材研究などで色々と忙しくしている身なんでね……」

 

「もちろん、負担をおかけするようなことは致しません……」

 

「とは言ってもだな……」

 

「いいじゃん、村松っち、どうせ放課後は暇なんでしょ?」

 

「……今の話、聞いていたか? 雷電?」

 

「だって彼女とか居ないじゃん」

 

「! い、居ないじゃんって断言する根拠は?」

 

「そのコンビニ弁当。情報によれば、ほぼ毎日それらしいじゃん」

 

「だ、だから誰から聞いたんだ?」

 

「それは秘密~♪」

 

「むっ……」

 

「だから、結構時間はあるはずだと思うんだよね~」

 

「いや、それは……」

 

 俺は露骨に嫌そうな顔をする。紅蓮が口を開く。

 

「今断っても、いずれはお鉢が回ってくるぜ? もっと面倒臭そうなやつとか」

 

「うっ……」

 

「ここでオレらの顧問になっておけば、そういうのは回避できるぜ?」

 

「ぬっ……」

 

「まあ、年貢の納め時だと思って、ちゃちゃっとサインしてくれよ」

 

「くっ……」

 

 紅蓮のいちいち古臭い言い回しを気にしながらも、俺は受け取った書類に一応目を通す。

 

「それじゃあ、お願いするぜ」

 

「……」

 

「どうかしたか?」

 

 無言の俺に対して、紅蓮が尋ねてくる。

 

「いや……」

 

 俺が視線を書類から上げる。

 

「なにか気になることでもありましたか?」

 

 疾風が不思議そうに首を傾げる。

 

「ああ、『同好怪』っていうのはなんだ?」

 

「!」

 

「‼」

 

「⁉」

 

 俺の指摘に三人の顔色がわずかに変わる。

 

「……そこに気が付くとは、村松っち、なかなかやるね……」

 

「いや、気付くだろ、それは」

 

 雷電の呟きに、俺は突っ込みを入れる。

 

「……まあ、それはいいじゃん♪ お茶目な書き間違いってことで……」

 

「よくない」

 

「え~」

 

「大体、これでは何の同好会なのかも分からないじゃないか。ダンスだとか、お笑いだとか、色々あるだろう?」

 

「……だってよ、龍虎っち?」

 

 雷電が紅蓮に視線を向ける。紅蓮が少し間を空けてから言う。

 

「……余計な言葉は必要ねえ。同好怪で頼む」

 

「いや、頼まれてもな……」

 

「この通りだ……!」

 

 紅蓮が勢いよく頭を下げてくる。俺は戸惑いながら答える。

 

「! い、いや、そうやって頭を下げられてもな……」

 

「……活動の内容などから鑑みても、ベストとは言わないまでもベターなネーミングだと考えております」

 

 疾風が眼鏡のブリッジを触りながら話す。俺は少し驚く。

 

「驚いたな、お前さんも賛成なのか、疾風……」

 

「浅慮な龍虎さんにしては良い考えかと……」

 

「おい、今なんか馬鹿にしただろう?」

 

 紅蓮が顔を上げ、疾風を睨む。俺は紅蓮を宥める。

 

「ああ、待て待て、ここが職員室だというのを忘れるなよ?」

 

「ふん……」

 

 紅蓮が視線を疾風から逸らす。俺は自らの後頭部をポリポリと掻きながら問う。

 

「う~ん、よく分からんが、怪ってことはあれか? いわゆる怪談的なものか?」

 

「そう、いわゆるひとつのそれだ」

 

 紅蓮が頷く。

 

「だったら尚更却下だな」

 

「な、なんでだよ⁉」

 

「その手の会なら、オカルト研究会がいるだろう。同じような会はふたつも要らない……」

 

「あ~そっか、なるほどね……」

 

 雷電がうんうんと頷く。紅蓮が注意する。

 

「おい、納得してんじゃねえよ金剛。……オレらはそういうお遊びとは違うんだよ」

 

「お遊びとは違う?」

 

「ああ、れっきとしたチアイージーカツ丼だ」

 

「……治安維持活動です」

 

 紅蓮の言葉を疾風が訂正する。俺は首を傾げる。

 

「治安維持って大げさな……」

 

「他に適切・適当な言葉が見つかりませんので……」

 

「……風紀委員会的なことか?」

 

「それとはまた異なりますね」

 

 疾風が眼鏡のフレームを触りながら答える。

 

「話が見えないんだが……」

 

「……まあ、いいや、百聞は一見になんちゃらってやつだ、今夜、校庭に来てくれよ、面白えもんが見られるぜ?」

 

 紅蓮がそう言ってニヤリと笑う。なんだよ、究極だか至高の料理が食べられるのか?

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