「! 生徒怪⁉」
「そうだ……」
帽子の女子が頷く。
「な、なんの用だ?」
俺はまたもやベタベタ過ぎる問いかけをしてしまう。
「お仕置きと言っただろう……」
帽子の女子が呆れた様に切れ長の目をさらに細めて、俺を見つめる。
「ぐっ……」
「同じことを言わせるな……」
「……お仕置きとは?」
「言葉通りの意味だ」
「される理由が分からない」
「理由? ……簡単なことだ」
「え?」
「貴様らの上位互換である存在である我々にとって、貴様らは少々……いや、かなり目障りなものになってきたからだ……はあ、だから同じことを言わせるな……」
帽子の女子がため息をつく。
「!」
「‼」
「⁉」
紅蓮たちの顔色が変わる。
「お、お前ら……」
「目ざわりとか……随分ご挨拶だし……」
雷電が頬をぷうっと膨らませる。
「上位互換……聞き捨てなりませんね……」
疾風が眼鏡をクイっと上げる。
「要は……ケンカを売っているということだよな?」
紅蓮が指の骨をポキポキと鳴らす。帽子の女子が再び頷く。
「概ね、そういう理解で構わん……」
「よっしゃあ!」
「お待ちなさい!」
疾風が飛びかかろうとする紅蓮を制止する。
「なんだよ⁉」
「こんな時間にこんな場所で変貌したらどうなるか……」
「変身!」
「なっ⁉」
疾風が驚いた。雷電が怪人に変身したからだ。
「ミャア!」
「雷電さん!」
「ははっ! 金剛の方がキレてやがったか!」
紅蓮が笑う。
「こ、こんな時間にこんな場所で……大変な騒ぎになりますよ!」
「心配には及ばん、疾風晴嵐……」
「む?」
疾風が帽子の女子に視線を向ける。
「仕置きはすぐに終わる……ジョアンナ……」
「……おう」
帽子の女子の呼びかけに、ジョアンナと呼ばれたソフトモヒカンが応じて、雷電の前にゆっくりと進み出る。
「ミャア?」
「……変身!」
「ミャア⁉」
雷電が驚く。ジョアンナが黒い犬の頭をした怪人に変身したからだ。
「変身した⁉」
「燃えるような赤い目……ヘルハウンド……」
驚く俺の横で、疾風が冷静に呟く。
「ほう、さすがに多少は物を知っているな……ジョアンナ=フェルナンデス、怪人だ……」
帽子の少女が淡々と語る。
「ウ~バウ‼」
「ミ、ミャア⁉」
フェルナンデスが吠える。雷電がややたじろぐ。
「ビビんな! 金剛!」
紅蓮が声を上げる。
「ミ、ミャア……」
雷電が不安そうな声を出して、紅蓮を見つめる。
「猫が犬に負けるわけがねえだろう!」
「どういう理屈ですか……」
疾風が呆れる。
「うるせえ、理屈なんざ関係ねえ!」
「無茶苦茶ですね……」
「……ミャア!」
雷電がフェルナンデスの方に向き直り、力強い声を発する。
「お、気合が入ったみたいだな」
「単純な方々ですね……」
俺が呟く横で、疾風が俯いて、自らの額を軽く抑える。
「……ミャアア!」
「バウ!」
雷電は勢いよく飛びかかるが、フェルナンデスが横に飛んでかわす。
「ミャア! ミャア!」
「バウ! バウ!」
雷電が立て続けに飛びかかる。それをフェルナンデスが次々とかわす。
「いいぞ! 金剛!」
紅蓮が声を上げる。
「……どうやら俊敏性では、雷電さんに若干の分があるようですね」
疾風が冷静に分析する。
「ミャア~?」
どこか得意気な声を発する雷電。
「バウウ……」
低い唸り声を発するフェルナンデス。
「……遊びはそろそろ終わりにしろ、ジョアンナ」
帽子の女子が告げる。
「……バウウウ!」
「! 熱っ⁉」
「な、なんだ⁉ 急速に温度が……」
「あのヘルハウンドの発する熱でしょう……」
戸惑う紅蓮と俺に対し、疾風が熱気でくもった眼鏡を拭きながら冷静に呟く。
「! ミャアアア⁉」
雷電が自らの顔のあたりを抑えながらよろめく。
「⁉ ど。どうしたんだ、雷電⁉」
「猫舌を刺激されてしまったようですね」
驚く俺の横で、眼鏡をかけ直した疾風が状況を理解する。
「バウウ!」
「ミ、ミャア⁉」
距離を詰めたフェルナンデスに殴りつけられて、雷電は倒れ込む。変身が解ける。
「雷電!」
「うう……」
「野良猫ごときが地獄の番犬に敵うものか……」
帽子の女子が笑みを浮かべる。