「うっ……」
「だ、大丈夫か⁉ 雷電!」
「ううっ……」
俺の問いかけに対し、雷電はうめくのみである。
「戻れ、ジョアンナ」
「……」
帽子の女子の呼びかけに応じ、フェルナンデスは人間の身体に戻る。
「……今、謝るのなら、仕置きはこれくらいにしてやっても良いぞ?」
「あん⁉」
「どうする? 紅蓮龍虎?」
「寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ、誰が謝るかよ……」
「ふむ、まだ仕置きが必要なようだな……」
「上等だ! 行くぜ!」
「お待ちなさい!」
疾風が紅蓮を制止する。
「ああん⁉」
「……貴女が出るまでもありません。ここは私にお任せ下さい……!」
「お、おう……」
疾風が前に進み出る。上手い事紅蓮をコントロールしたな……いや、感心している場合じゃないだろう、俺。
「ま、待て、疾風! 校内で揉め事は……!」
「ご心配には及びません」
「え?」
「さっさとケリをつけます……!」
「あ、ああ、なるほど……って、そういう問題じゃなくてだな……」
「変化!」
「ああっ!」
疾風が怪異に変化してしまった。
「………」
疾風が右腕の鎌をクイっと上げる。
「へっ、一瞬で終わらせるってよ」
紅蓮が笑みを浮かべながら告げる。
「面白いことを言う……」
帽子の女子も笑みを浮かべる。
「シャアアア!」
疾風が生徒怪の連中に向かって物凄いスピードで襲いかかる。
「おっと!」
生徒怪の3人が廊下に飛び出して、疾風の突撃をかわす。疾風は身を翻してそれを追いかけ、俺と紅蓮もそれに続く。
「シャア!」
「む……」
「待て、ジョアンナ。蘭」
「は……」
「お前が行け」
帽子の女子に促されて、小柄でおかっぱ頭の女子が前に進み出る。
「シャアア!」
疾風が飛びかかろうとする。
「……変化!」
「!」
疾風だけでなく、俺と紅蓮も驚く。
「変化した⁉」
「あいつも怪異かよ……」
おかっぱ頭は身体が緑色の鱗に包まれ、まわりにボサボサと毛の生えた頭頂部には、まっさらとしたお皿が載っている。
「あ、あれはひょっとして……」
「ひょっとしなくても“河童”だぜ、村松っちゃん……」
「カ、カッパ⁉」
紅蓮の言葉に俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。
「へっ……」
紅蓮が鼻で笑う。
「紅蓮……?」
「カッパなんざ河のもんだろうが。陸に上がって何が出来るよ……やっちまえ!」
「シャア‼」
疾風が両腕の鎌を素早く振るって、斬撃を飛ばす。
「パッ!」
「‼」
かっぱと化したおかっぱ頭が、軽い身のこなしで斬撃をかわす。
「か、かわした⁉」
「す、素早いじゃねえか……」
驚く俺の横で紅蓮が意外そうに呟く。
「
帽子の女子が淡々と呟く。
「怪童だあ? へっ、所詮はお子ちゃまだろうが! 怯むなよ、眼鏡!」
「シャアア‼」
紅蓮を皆まで言うなというように制してから、疾風が小森に迫る。
「パッ‼」
「シャアア⁉」
疾風の振り下ろした鎌を小森が飛び上がってかわす。
「……パアッ!」
「シャアアア⁉」
小森がかかとを振り下ろす。凄まじい勢いのキックが疾風の右腕に当たる。疾風は思わずのたうちまわってしまう。俺は声を上げる。
「は、疾風!」
「水の重さから解き放たれた河童を甘く見るなよ……」
帽子の女子が低く鋭い声で告げる。
「シャア……」
「眼鏡! 一旦距離を取れ!」
「シャ、シャア!」
紅蓮の声に応じ、疾風が起き上がって、体勢を立て直しつつ、距離を取る。
「多少の距離など関係ない……」
「パアアッ!」
「シャ⁉」
小森が鞭を疾風の左腕に巻きつける。
「……パアアアッ!」
「シャアアアアッ⁉」
「パアアアアアッ‼」
「シャアアアアッ‼」
小森によって持ち上げられた疾風は、天井と床に交互に思い切り身体を叩きつけられて、動かなくなる。
「は、疾風!」
「む、鞭を使うカッパちゃんとか、無茶苦茶だし……」
「金剛!」
目を覚ました雷電が廊下に出てくる。俺が声をかける。
「だ、大丈夫か⁉」
「な、なんとか……」
「貴様らのしょうもない物差しで我々生徒怪を測るな……おこがましい!」
帽子の女子が帽子を被り直しながら吐き捨てる。