「て、てめえ……!」
紅蓮が帽子の女子を睨みつける。
「……なんだ?」
「許さねえ!」
紅蓮が殴りかかる。
「ジョアンナ」
「おう!」
フェルナンデスが紅蓮を抑え込む。
「くっ! 放せ!」
紅蓮がジタバタとするが、フェルナンデスはビクともしない。
「芸の無い殴り合いなどに興味はない……蘭河」
帽子の女子が元の状態に戻った小森に目配せをする。
「はっ!」
小森が廊下の窓を勢いよく開く。
「ふん!」
「どわっ⁉」
フェルナンデスによって、紅蓮が窓の外に投げ込まれる。
「ぐ、紅蓮!」
俺は慌てて、外に出る。
「ぐっ……」
「大丈夫か⁉」
「咄嗟に受け身は取ったけどよ……」
俺の声に反応し、紅蓮は体を起こす。
「仕置きならば、それにふさわしい形で行ってやる……」
外に出てきた帽子の女子が淡々と告げる。
「ふさわしい形?」
「そうだ、変貌しろ、紅蓮龍虎」
「! 後悔すんなよ?」
「こちらの台詞だ」
「ぐ、紅蓮、挑発に乗るな!」
「変貌!」
「ああっ!」
「ガオオオッ!」
俺の制止もむなしく、紅蓮は怪獣に変貌してしまった。
「ふん……我みずからの仕置き、光栄に思え! 変貌!」
「⁉」
「ガエエエッ!」
「え、ええっ⁉」
俺は驚いた。紅蓮も驚いたようだった。帽子の女子が、燃えるような真っ赤な体色をした大きな鳥に変貌したからだ。
「ガオオッ!」
「ガエエッ!」
向かい合って威嚇し合う両者。
「ギオオッ!」
「ギエエッ!」
紅蓮が爪で引っ搔こうとするが、帽子の女子は翼をバタバタとはためかせて、紅蓮の顔のすぐ近くに飛び上がり、紅蓮の顔に両脚を下ろす。
「グオオッ!」
「グエエッ!」
帽子の女子がくちばしで、紅蓮の顔を何度か鋭くつつく。
「ゲオオッ!」
「ゲエエッ!」
嫌がる紅蓮がなんとか振り払おうとするが、帽子の女子も体勢を崩さない。
「ゴオオッ!」
「ゴエエッ!」
紅蓮が尚も振り払おうとするが、帽子の女子は離れない。
「……ガアッ!」
「‼」
紅蓮が頭を左右にではなく、前後に振った。帽子の女子は紅蓮から離れる。
「ガアアッ!」
その勢いのまま、紅蓮が大きく開いた口から火炎を放つ。
「キエエッ!」
「ガアッ⁉」
紅蓮が驚いた。帽子の女子が翼をバタバタとさせて、炎を吸い取ってしまったからだ。
「ほ、炎を吸い取った……?」
「ふん、愚かな……」
「はっ⁉」
俺が視線を向けると、そこには小森とフェルナンデスが立っていた。
「フェニックスに火炎放射とか……くくっ、大好物だぜ」
フェルナンデスが笑う。
「フェ、フェニックス?」
「なるほど……」
「! 疾風⁉」
振り返ると、疾風と雷電が外に出てきていた。
「晴嵐っち、なにがなるほどなの?」
雷電が尋ねる。
「あくまでも予想に過ぎませんが、恐らくはあれは火を司るもの……火炎は吐きかけても逆効果です」
「ぎゃ、逆効果?」
「ええ」
疾風が雷電の問いに頷く。
「……ってことはつまり……」
「お考えの通りです」
俺を見て、疾風が再度頷く。
「ケエエッ!」
「グオオッ⁉」
「ああっ⁉」
俺が視線を戻すと、紅蓮が帽子の女子が体全体から放った炎に包まれ、崩れ落ちた。
「……ちぃ……」
紅蓮が元の姿に戻って、うつ伏せに倒れる。
「ぐ、紅蓮!」
俺と疾風と雷電が紅蓮の元に駆け寄る。体から煙が立ち込めてはいるものの、火傷はしていないようだ。
「炎には耐性があるようだが……練度が違う」
「‼」
元の姿に戻った帽子の女子がズレた帽子を被り直しながら淡々と呟く。
「お、お前は……」
「我は
「‼ か、怪鳥……」
「自己紹介も済んだ……蘭河、ジョアンナ」
「はっ!」
「どわっ⁉」
小森が俺の身体を鞭で巻き付け、思い切り持ち上げる。フェルナンデスが受け止めた。
「……村松藤次は我々がもらい受ける!」
織田桐が踵を返して歩き出す。小森と俺をお姫様抱っこしたフェルナンデスが続く。
「む、村松っちゃん……」
うめくような紅蓮の声がフェルナンデスの背中越しに聞こえた。