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「ううっ……はっ⁈」
俺が目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた。
「おっ、目を覚ました」
視線を向けると、そこには小森蘭河がしゃがんでいた。
「鳳凰……」
小森の後ろに立っていたジョアンナ=フェルナンデスが目配せをする。その視線を追いかけると、織田桐鳳凰が背もたれ付きの豪奢な椅子に腰かけていた。
「お前! うっ……!」
俺は半身を起こすが、めまいに襲われる。
「いきなり動かん方が良いぞ」
「な、何をした?」
「なに、ちょっとばかりクロロホルムを多目に嗅がせただけだ」
「は、はあ?」
なんだこいつら、普通じゃない……。
「あまりに暴れるものでな」
「まったく……」
フェルナンデスが自らの二の腕部分をさする。そうだ、確かこいつ……彼女にお姫様抱っこをされていたのは覚えている。なんて力持ちなんだ……。
「抱かれ具合が良くなかったか?」
織田桐が笑みを浮かべる。
「い、いや……」
俺はどう答えれば良いか戸惑う。
「分からんでもないですね」
小森が織田桐に同調する。
「……お前に何が分かる」
フェルナンデスが小森を睨みつける。
「分かるさ、そのゴツい腕に包まれて、五体満足の方が奇跡だ」
「なんだと……!」
「あ、ああ! ちょっと待って! とっても良い抱かれ心地だったぞ!」
「なっ⁉」
「はあっ⁉」
フェルナンデスと小森が驚きの視線を向けてくる。生徒怪とか言っていたけど、こいつらも海道学園の生徒なんだよな? 生徒同士のいさかいは止めるのが教師の務めだ。ちょっと、わけわからんことを口走ってしまったが。
「そ、そうか……」
フェルナンデスが照れくさそうに自らの鼻の頭をこする。
「何を照れているんだ、気持ちの悪い……」
「何⁉」
小森の言葉にフェルナンデスが怒る。
「ああ、ちょっと待った! こ、小森……」
「うん?」
「お前の鞭もなかなかの巻き付き具合だったぞ……」
「なっ⁉ 何を言っているんだ⁉」
本当に何を言っているんだろうな……。
「え、えっと……」
「……そ、そうか……鞭さばきには多少の自信があるんだ……」
小森が両手の人差し指同士をツンツンとする。自信を持つのは良いことだが……。
「はっはっは!」
視線を向けると、織田桐が椅子から立ち上がっていた。
「お前ら、君たちは何者なんだ?」
「うん? 言っただろう、生徒怪だ」
「こ、この学園の生徒なんだよな?」
「まあ、そうだな」
認めちゃったよ。
「き、君たちを見かけたことがないんだが……?」
「……」
織田桐が俺をじっと見つめる。
「な、なんだよ……」
「貴様は………」
「き、貴様って……」
「今まで教えた生徒の人数を覚えているのか?」
「え?」
「どうだ?」
「いや、どうだろう……」
俺は考え込む。
「………」
「え、ええっと……」
「……つまりはそういうことだ」
「あ、ああ……」
何故か頷いてしまう俺。いや、どういうことだ? 訳が分からないが、なんというか、この織田桐鳳凰という人物……謎の説得力があるな……。
「まあ、それはどうでもいいだろう」
「い、いや、どうでもいいってことは……」
俺は首を傾げる。
「そもそもの話をしようじゃないか」
「そもそもの話?」
「そうだ。我々生徒怪やあの同好怪の連中がどうして怪獣・怪異・怪人に変貌・変化・変身をするのか……興味はないか?」
「あ、ある! 大いにある!」
俺はブンブンと首を縦に振る。
「この学園の場所はどこだ?」
織田桐が床を指差す。
「え……静岡県?」
「静岡県の懸念事項は?」
「懸念事項?」
「不安要素と言った方が良いか?」
「不安要素……?」
俺は首を捻る。 織田桐が呆れ気味に呟く。
「なんだ、それでも地学教師か?」
「……! 南海トラフ地震⁉」
「そうだ、この地域が抱えている潜在的な不安だな」
「地震がどう関係ある?」
「ざっくりと言えば、地震には大きなエネルギーが伴う……」
「ざ、ざっくり言ったな……」
「地学教師に対して地震の説明など、釈迦に説法だからな……」
「あ、ああ……」
「この地域には、他では見られない特殊な磁場が発生している……」
「特殊な磁場? そ、それが怪獣などを引き寄せているのか?」
「簡単に言えばそういうことだ」
「ひょ、ひょっとして、君たち生徒怪は……この地域を安定させるために存在しているのか? そして後から出てきた同好怪が目障りになった……」
織田桐は少し驚いた後、満足気に頷く。
「なかなか察しが良くて助かる」
「……俺は?」
「ノリで連れてきてみた」
「ノリで⁉」
俺は愕然とする。