「……はっ!」
俺は目を覚ます。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「おはよ~♡」
視線をやると、薄紫色の全身タイツを着た、虹色の髪をツインテールにした小柄な体格の女の子が椅子にちょこんと座っていた。
「……誰だ?」
俺は半身を起こしながら問う。
「まあ、誰でもいいじゃない~」
「いいわけないだろう。俺をさらっておいて……」
「あはははっ、お兄さん、こんないたいけな女の子にさらわれちゃってるのダサ~クソ雑魚じゃん~ざぁこ♡ざぁこ♡」
「なっ……」
ツインテールの女子にいきなり嘲笑され、俺は面食らう。
「言い返せないのもかっこ悪~」
「い、いや……大体……」
「大体?」
俺は周囲を見回してから問う。
「こ、ここはどこなんだ?」
「……ぷっ! 場所把握してないのウケる~」
ツインテールは自らの腹を抱えて笑う。
「ど、どこなんだよ?」
「はははっ……」
「笑ってないで教えてくれ」
「……天国?」
「ふざけるな」
「学校の美術室だよ~」
「美術室?」
俺は冷静になって周囲を見回す。石膏像などが置いてある、水洗い場なども設置されている……なるほど、美術室だな。
「ふふっ……」
「いや、しかし……」
「しかし?」
「妙だな……」
「なにが~」
「ここは俺の知っている美術室じゃないぞ」
「あはっ、お兄さんってさ~地学?の先生だっけ?」
「そ、そうだが……」
「要はさ~理科の先生でしょ?」
「ま、まあ、そうだ」
「理科の先生が美術室に出入りすることある~?」
「う……ま、まあ、そんなに無いな……」
「それじゃあ美術室を知っているって言わなくない~」
「そ、それはそうかもしれないな……」
「あははっ!」
「!」
ツインテールが先ほどよりも大きな声を上げて笑う。
「はははっ!」
「な、なんだよ……」
「い、いや、妙だな……とか言って、秒で論破されてんのウケるんですけど~はあ~待って、笑い過ぎてお腹痛い……」
ツインテールが自らの腹を大げさに抑える。
「論破って言うほどのものじゃないだろう……」
俺はムッとした表情で呟く。
「はい、ムキになった~」
ツインテールが俺のことを指差す。
「な、なんなんだよ、さっきから!」
俺は大きな声を上げてしまう。
「はい、うるさいで~す」
ツインテールが自らの両耳を塞ぐ。
「す、すまん……」
「う~ん、許す♪」
「あ、ああ……」
「まあ、それは良いとしてさ~お兄さん……」
「お兄さんってやめてくれないか?」
「先生って呼ばれたいの?」
「いや、別にそういうわけじゃないが……」
「お兄さん……村松藤次さんでしょ」
「あ、ああ、そうだ……」
俺のことを知っている?
「そして、同好怪の顧問と……」
「あ、ああ、そうだが……」
同好怪のことも知っている⁉
「ははっ、さっきから、あ、ああ……しか言ってないじゃん。ウケるんだけど」
「と、戸惑っているんだから仕方ないんだろう?」
「確認なんだけど……生徒怪の連中から聞いた?」
「何をだ?」
俺は首を捻る。
「何も聞かなかったの?」
「き、聞いたことと言えば……そもそもの話だな」
「そもそもの話?」
ツインテールが首を傾げる。
「ああ、何故この地域に怪獣などの出現が頻発するとか……この地域自体に強力な磁場が発生しているとかなんとか……」
「ああ~そういう話ね~」
ツインテールはうんうんと言った感じで頷く。
「他にどういう話があるんだ?」
「その土地だけではないんだよ、人間も大事……」
「人間?」
「そう、人間が誰しも持つ物……」
「? な、なんだ、それは……」
ツインテールが自らの胸元にそっと両手を添える。
「……肉体だよ」
「肉体?」
俺は首を傾げる。話がよく見えない……。
「分かった?」
「全然分からん……」
俺は首を左右に振る。ツインテールは小さくため息をついてから話す。
「はあ……お兄さんの肉体の鼓動や脈動のリズムがこの地域の安定をもたらすし、乱してしまうこともあるってこと」
「はあっ⁉」
いきなり核心を突かれても……いや、それでもどういうこっちゃ?
「ん?」
「シャア!」
「コ、コウモリ⁉」
「変形!」
「ええっ⁉」
俺は大いに驚く。コウモリの顔をした怪人が窓を叩き割って現れたかと思うと、ツインテールが自らの倍くらいの大きさのものに変わったからだ。