同好怪!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(3)夜の校庭にて

「……」

 

 俺は言われた通り、夜の校庭にやってくる。我ながら何をやっているんだか……。貴重なプライベートの時間を削ってさ。まあ、そのプライベートの時間、特別何かをするっていうわけでもないんだけども……。

 

「……いらっしゃいましたね」

 

「村松っち、こんばん~♪」

 

「! お、おお……こ、こんびゃんは……」

 

 暗がりから疾風と雷電が現れる。いきなり声をかけられた俺は挨拶を噛んでしまう。

 

「アハハ! こんびゃんはだって! ウケる~」

 

 雷電が笑う。俺はややムッとする。

 

「ちょっと言い間違っただけだ……大体、呑気に挨拶なんかしている場合か」

 

「え?」

 

 雷電が首を傾げる。

 

「え?じゃない。なんだか言われるがままに来てしまったが、もう下校時間はとっくに過ぎているだろう。さっさと帰るんだ」

 

「え~」

 

 雷電が唇を尖らせる。

 

「だから、え~じゃない。家に帰れよ」

 

「そういうわけにはいかないよ~」

 

「なんでだ?」

 

「なんでって……ねえ、晴嵐っち?」

 

 雷電が疾風に対して視線を向ける。疾風が口を開く。

 

「監督してくれる方がいらっしゃいますので、急いで帰宅しなくても良いですね……」

 

「監督? 誰がだ?」

 

 俺は周囲を見回す。

 

「……村松先生ですよ」

 

「お、俺がか?」

 

 俺は自分を指差す。

 

「はい」

 

 疾風が首を縦に振る。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。なんで俺が監督せなならんのだ?」

 

「顧問ですから」

 

「まだ顧問になると決めたわけじゃないぞ」

 

「ちっ……」

 

 おい、今小さく舌打ちしたぞ、この優等生。俺には聞こえた。強引に俺を顧問にしようとしやがった。意外と勢い任せなところがあるんだな……。

 

「……俺も帰るから、お前らも早く帰れ」

 

「……あいにくですが、そういうわけにも参りません」

 

 疾風は首を左右に振る。

 

「疾風、お前までそういうことを言うのか?」

 

「ええ」

 

「あまり困らせないでくれよ……」

 

「顧問になっていただけるのであれば大人しく帰りますが」

 

「いやいや、どんな交換条件だよ」

 

「承知していただけませんか?」

 

「だから顧問になれって言われてもな……」

 

 俺は後頭部をポリポリと掻く。

 

「まあ、そのように駄々をこねられるだろうと思いまして……」

 

「駄々をこねるってなんだよ」

 

「『わがままを言う』の類義語です」

 

「それくらいは知っている。なんで俺が困った子どもみたいな扱いになってんだよ」

 

「……実際に我々、同好怪の活動内容がどんなものなのか見てもらおうかと思いまして、こうしてお呼びした次第です」

 

「実際の活動内容?」

 

「はい」

 

 疾風が頷く。

 

「なんだ、学校の怪談でも調べるのか? 『トイレの花子さん』か? 『動く二宮金次郎像』か? この学校にそんなベタな噂なんてないだろう? 比較的新しい学校だしな」

 

「村松っち……」

 

 雷電が口を開く。

 

「な、なんだよ……」

 

「急に口数が多くなったね……」

 

「そ、そうか?」

 

「もしかして……ビビっている?」

 

「ビ、ビビってない!」

 

「声が震えているよ?」

 

「むっ……」

 

 雷電が笑みを浮かべる。

 

「自分に正直になりなよ……」

 

「……夜の学校が好きだ、得意だっていうやつの方が少ないだろうが」

 

「先生なのに?」

 

「この場合、先生も生徒も関係ない」

 

「そういうもんなんだ」

 

「そういうもんなんだよ」

 

 疾風が口を開く。

 

「ご心配は要りません。そういう肝試しをするわけではありませんから……」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ええ、ただ……ある意味、度肝を抜かれることになるかもしれません……」

 

「え? ……おわっ⁉」

 

 地面が大きく揺れる。地震か、これは結構大きいな……って、そうじゃなくて、こいつらを避難させないと……。

 

「来ましたね……」

 

「そうだね~」

 

「お前ら、建物から離れて……!」

 

「ガルルアッ!」

 

「はっ⁉」

 

 俺は驚く、突然、二足歩行の巨大なトカゲのような生き物が現れたからだ。校舎よりも大きい。こんな生き物は見たことがない。その巨大なトカゲが再び咆哮する。

 

「ガルルルアッ!」

 

「な、なんだ⁉」

 

「なんだと思う~?」

 

 雷電が呑気な声色で尋ねてくる。俺はまったく馬鹿げたことだと思いながらも、一番に頭をよぎったフレーズを口にする。

 

「か、『怪獣』……?」

 

「これはご明察……」

 

 疾風が感心したように呟く。

 

「か、怪獣なんているわけがないだろうが!」

 

「実際に目の前にいるではないですか」

 

「な、なんかの映像だろう⁉ プ、プロジェクションマッピングとかそういうの!」

 

「くくっ、そうだったら面白いんだけどな……」

 

 暗がりから紅蓮が現れる。

 

「ぐ、紅蓮! お前もいたのか⁉」

 

「そりゃあいるさ……こういうのはオレの担当だからな……『変貌』!」

 

「!」

 

「ガアアッ!」

 

「ええっ⁉」

 

 紅蓮が目の前で燃えるような真っ赤な体をした巨大な竜のような二足歩行の生き物に変貌したので、俺は度肝を抜かれてしまう。ここで話は冒頭に戻る。

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