資源惑星ヴラシオを占領したアークジオン軍は湧き立っていた。
旗艦アルヴィルダのプライベートルームでは、アークジオンの指導者であるディリジャン・アズナブルがアレンとともに食事をとっていた。
「まずはこの歴史的な勝利に祝杯をあげるべきでしょうね」
「そして、アレン少佐の旅の無事を祈って」
赤ワインの入ったグラスがかち合いカランとした音を立てる。
「ようやくここまでこぎ着けることができました」
「ああ。十二年待った甲斐はあった」
ディリジャンは不敵な笑みを浮かべる。
「しかし、ヴラシオで離反者が思ったより多かったのには、驚きました」
「連邦軍という組織は、群れることはできても団結のできない集団だということだ。民衆も主義主張もないくせにパンはよこせという。衆愚政治の極みだよ」
「民衆は為政者に飼い慣らされているという事実を真摯に受けとめるべきです」
「そのためには人類全体をニュータイプにする必要がある」
「そのためのアークジオンでしょう?」
「フフッ、そうだな」
アレンは空になったグラスをテーブルに置く。すると横に控えていた男がすぐにワ
インをつぎ足してくれた。
「本当ならドラグートをまわしてやれればよかったのだがな」
ドラグートとはアークジオンで運用されている巡洋艦のことである。大多数のモビルスーツの運用を第一に考えられた戦艦で、航続力と推進力が高いのが特徴である。
「そのお気遣いだけで十分です。グリュ・プランセッス一隻とモビルスーツの四機もあれば、任務を完遂してみせましょう」
「男に二言はないぞ?」
「総帥もお人が悪い」
アレンは苦笑いを浮かべ、ディリジャンは大笑いする。
「フロンティア4で受領するモビルスーツだが、誰を乗せるつもりか?」
「私はシャルナ・レイドに任せようと考えております」
「お前が一年前拾ってきたという少女か?」
「彼女は本物ですよ。彼女ならば《赤い彗星》を受け継げると確信しております」
「民衆は常にアイドルを求めている。為政者をやるということは、そのような要望に
も応えていかねばならないのだ」
「存じております」
「あと《ラフレシア機関》からの依頼があってな。モビルスーツ受領後にフロンティ
ア1へ向かってほしいとのことだ」
「それは鉄仮面殿、直々に?」
「ああ。サナリィがそこで新型のモビルスーツを開発しているらしい。鉄仮面はその
機体のデータがほしいそうだ」
「我々は便利屋ですか?」
「いうなよ。彼らはモビルスーツ開発でもよくやってくれている。こちらもできるか
ぎり借りは返済していかねばな」
「強奪は一年前の火星以来です。海賊稼業と聞けばクルーも喜びましょう」
「気負うなよ。モビルスーツ受領後は補給もまわす。詳しい指示はそのときに伝え
る」
ディリジャンがグラスを掲げる。するとアレンもそれに続いてグラスを掲げた。
「ジークジオン」
歓声が外でも響いている。勝利の宴はまだ続きそうだった。