「お嬢さんはノーマルスーツに着替えて、スタンバイしてください」
「新型の調子は?」
「おまかせください」
二人がエレカを降りると、廃工場の中は騒然としていた。十人ほどの作業着を着た、男たちが忙しそうに動きまわっているのだ。
「実戦は初めてになるので、ご迷惑をかけるでしょうけど?」
「俺とオクトーが脇を固めます。大丈夫、そのための俺たちですから。お嬢さんは戦場の空気に慣れるところから、はじめてもらいます」
「わかったわ」
「ぼさぼさしてるんじぇねえ! 夜明けまで一時間もねえぞ! オクトーは準備できてるんだろうな!?」
オズベルトの怒号が廃工場に響く。その声で廃工場の中の空気がより引き締まったような気が、シャルナにはした。
シャルナはすぐさまに廃工場のロッカールームに入り、自分用のノーマルスーツを手にとる。
ノーマルスーツに着替えたシャルナは、ロッカールームをでて、大広間にでる。そこにはキャリーの上にモビルスーツが寝かせてあった。
「ご苦労様。アルエットの調子はどうですか?」
シャルナがモビルスーツの点検を行っていた男にねぎらいの言葉をかける。
「システムオールグリーン、いつでも行けますよ」
男は誇らしげに指を立てて応える。
「少佐の思いつきには困ったものね?」
「モビルスーツの性能を試すには、もっとも効果的ですがね」
「そうね……」
シャルナはそういって、モビルスーツのコクピットに乗りこむ。
「アルエットは、従来のモビルスーツの規格とは異なりますので、扱いにはお気をつけください」
「わかったわ」
本来の任務というのは、フロンティア4でアルエットを受領して、グリュ・プランセッスに持ち帰ることだった。
しかし、アーガマRが入港してきて、予定が変更されることとなった。
グリュ・プランセッスの艦長である、アレン・ラッティがアーガマRに攻撃を仕掛けるといいだしたからだ。彼はアトラス隊を何度も退けたというアーガマRに興味を
持ったのと、新型のテストを兼ねてという意味合いがあった。
聞いた話だとアーガマRに配備されているモビルスーツは全部で四機。対して、フロンティア4に潜ませてあるモビルスーツは新型を含めて三機。さらに外で待機して
いるグリュ・プランセッスには四機のモビルスーツがある。しかし、フロンティ4に駐屯している連邦軍もいるので、数で押し切られれば、不利はいなめない。
『最初にグリュ・プランセッスが港に砲撃をしかけ、封鎖します。それから我々は
《河》を突き破って本隊と合流、迫りくる敵は実力を持って排除という流れです。なにか質問は?』
フロンティア4の夜明けまで、あと三十分。