機動戦士ガンダムJ   作:あかつきp dash

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第二十一話『再会は戦場で』

 サイキ小隊とアイラがJの援軍に駆けつけるころには、アークジオンの増援も到着していた。

 

 Jと交戦していた二機のバルバールに、さらに一機のバルバールと指揮官機であるエグゾセの姿まであった。

 

「そのGキャノンはどうしたんだ?」

 

 デュランがアイラの機体を見て訊ねる。

 

「空いてた機体があったようなので、無理をいってお借りしました」

 

 なんてことはないという風に、さらりといってのけるアイラに、デュランは苦笑を浮かべる。

 

「あとでちゃんと返せよ?」

 

「了解です」

 

「敵機をJから遠ざけるぞ! 各機は俺の旗に続け!」

 

 デュランはビームフラッグを発生させて、敵機の部隊へ向かって突撃をする。その後をサイキ小隊の面々とアイラが追った。

 

 それに対して合流した三機のバルバールとエグゾセが迎え撃つ。

 

「白いモビルスーツの動きが止まっているようだが……」

 

 エグゾセに乗ったアレンが呟く。

 

「どうしますか?」

 

 横にいたバルバールのパイロットが話しかけてくる。

 

「動かぬなら捨ておけ。いまは目の前の敵に集中しろ」

 

 サイキ小隊とアイラの手練れた動きを見たアレンは、まわりに注意をうながす。油断す

ればやられるのはこちらだと悟ったのだ。

 

「しかし、そうでないとな……!」

 

 エグゾセのビームが火を噴く。アレンは久々に血のたぎりを感じるのだった。

 

 

   ――◇◇◇――

 

 

 シャルナを乗せた真紅の機体が二機のバルバールとともに、スペースコロニーの河を突き破って、宇宙にでた。

「オクトー、ネズミが追いかけてきているのには気づいたか?」

 

 オズベルトはオクトーの機体に近づけて、直接回線を開く。

 

「連邦の量産機が一機、気づいてますよ」

 

「一機といえど背中をつかれるのは面白くない。しんがりを頼めるか?」

 

「へへっ。帰還祝いはおごりですぜ?」

 

「ちゃんと帰ってこいよ」

 

 オクトーのバルバールは親指を立てると、減速をしてその宙域に留まる。後ろからやってくる連邦の機体を迎え撃つためだ。

 

「さあ、きやがれ!」

 

 オクトーはシャルナとオズベルトの機体を見送って、コロニーのほうに向きなおる。

 

 連邦の機体――ヘビーガンの機影を見つけたオクトーはニヤリと笑みを浮かべる。センサー系に関しては、バルバールの性能が上まわっていたようで、あちらがこちらに気づい

ている様子がなかったからだ。

 

 照準が合うとともに、バルバールのビームがヘビーガンに向かって放たれる。しかし、そのビームは直撃せずに、ヘビーガンに回避される。

 

「バカな! 照準は完璧だったんだぞ!?」

 

 オクトーが驚愕の声をあげる。

 

 一方のヘビーガンに乗っていたのはシンクであった。

 

「待ち伏せか……」

 

 シンクは舌打ちをしながら、敵機のビームの速度を計算しだす。

 

「ひっかかってくれよ」 

 

 そして、ヘビーガンのシールドを相手に向かって、押しだすようにして手放した。

 

 バルバールがビームライフルを発射させる。シンクはそのビームがシールドに着弾するタイミングを見計らって、シールドにめがけてグレネードランチャーを撃ちこんだ。

 

 こうすることで自機がやられたと錯覚させようというのである。ミノフスキー粒子散布下ではレーダー系統が役をなさないという、制約を利用したやりかたであった。

 

「やったか?」

 

 オクトーは爆発を確認して、そうつぶやく。それでも確信に至らないのは、宇宙空間における相対距離の測りづらさとミノフスキー粒子散布下のレーダー系統の麻痺のせいであ

る。

 

 そして、その一瞬の油断がオクトーにとっての命とりになってしまったのである。

 

 停滞する爆煙を突き破って、ビームの光りが向かってきたのである。それは瞬きするような一瞬の出来事だった。

 

 オクトーがそれに気づいたときは、ビームが直撃したときで、反応する間もなく、ビームの熱で塵と化したのだった。 

 

 

   ――◇◇◇――

 

 

 サイキ小隊とアイラの部隊は、アレンの部隊となんとか互角の戦いを演じていたが、シャルナとオズベルトが増援にきて、その流れは一変した。

 

「ケネス、敵の増援だ。動かないとただの的だぞ!」

 

「わ、わかってるよ……!」

 

 ケネスには、すでに先ほどの威勢はなく、戦場の空気に完全に呑みこまれていた。

 

「オズベルトは、少佐の部隊を援護してあげて。白いモビルスーツは私が抑えるわ」

 

「了解」

 

 オズベルトのバルバールは、軌道をアレンの部隊へ向け、シャルナはJへ向かっていく。

 

「き、きた!」

 

 ケネスはJを逆噴射させ、シャルナの機体と距離を保とうとするが、シャルナの機体との距離は開くどころか縮まる一方だった。

 

 シャルナの機体――アルエットはJと距離を詰めると、そのまま蹴りの一撃をお見舞いする。Jは機体をバランスを崩して、後方へ吹き飛んでしまう。

 

「なんなの……。あの白い機体、てんで話になってないわ」

 

 シャルナは呆れたようにつぶやく。噂に聞いていたほどのモノとは思えない手応えのなさであった。

 

「ケネス、相手は新型だ! もう力押しは利かないぞ! もっと、動かないと――」

 

「うるせえよ! お、俺だって必死なんだ!」

 

 ソールの言葉をさえぎって、ケネスが吼える。先ほどの増援で、サイキ小隊やアイラから援護を受けるのはほぼ絶望的であった。それはケネスとソールだけでアルエットの相手をしなければならないということだ。

 

「こ、怖いよ……。母さん、助けてよ」

 

 とうとうこらえきれずにケネスは泣きだしてしまった。

 

「泣きたいのはこっちのほうだ……」

 

 ソールの顔にも憂鬱な影が射す。これで自分も終わりか――そんなあきらめが胸底から湧いてきた。

 

 そのときであった。アーガマRの部隊とアレンの部隊が交戦しているところで爆発が起こったのだった。

 

 

――◇◇◇――

 

 

 爆発はシンクのヘビーガンがグレネードランチャーを投げて爆発させたからである。

 

 そのおかげで敵機の編隊は、嫌が応にシンクのヘビーガンに注意が向かう。

 

「もう連邦は増援をよこしたのか……?」

 

 アレンがヘビーガンを注視しながらつぶやく。

 

 シンクはさらに、グレネードランチャーをいちばん近くにいたバルバールに投げつけ、それとともに推力を前進するためにかたむける。姿勢制御に使うためのアポジモーターの出力を最低限にしぼったために、機体の安定性は犠牲になったが、一刻も早くJの救援へ向かうための措置であった。

 

 バルバールは向かってくるグレネードランチャーに対し、後退しながらビームライフルで撃ち落とす。

 

 爆発したグレネードランチャーは、爆煙を散らして相手の視界を覆う。シンクはその合間を狙って、敵陣を突き抜けていく。

 

 敵陣の隊列は乱れ、隙が生まれる。それをサイキ小隊とアイラは見逃さず反撃に移る。

 

 一機のバルバールがシンクのヘビーガンにビームライフルを向ける。

 

 アイラはGキャノンの両肩のキャノンを外して、スラスターを全開にして、そのバルバールに対して、ビームライフルを放つ。

 

 シンクに気をとれていたバルバールのパイロットは、向かってくるアイラの対応が遅れてしまった。そのせいで脚部にビームライフルが直撃して、バルバールは機体のバランスを崩す。

 

「目の前の敵に集中できないなんて、手癖の悪いパイロットね!」

 

 Gキャノンのビームサーベルがそのバルバールの頭から胴を一文字に両断した。

 

 シンクは一直線にJが交戦している宙域へ向かう。

 

 そこではJとアルエットがもつれ合ってるのが見えた。

 

 シンクはグレネードランチャー二機のもつれ合っている。その隙間を縫うようにして、シンクはグレネードランチャーを撃つ。

 

 そして付近までグレネードランチャーが向かうのを狙って、ビームライフルで狙撃する。

 

 グレネードランチャーの爆発の衝撃がJとアルエットを離れさせる。それがシンクの狙

いであった。

 

「Jを操縦しているのは誰だ?」

 

 シンクはJに近づいて、直接回線を開かせる。

 

『シンクなのか? アーガマRを降りたんじゃなかったのか?』

 

 聞こえた声はソールのものであった。

 

「こっちもいろいろあってね。ソールとケネスは下がってくれ。あの赤い機体は俺が相手をするから」

 

 それだけ言い放つとシンクは、アルエットに向きなおる。真紅のボディ、モノアイに頭の先端の角――それは伝説の赤い彗星を彷彿させるものであった。もっとも、シンクはその呼び名を知るよしさえなかったが。

 

 先に動いたのはアルエットであった。新型なので機動力はエグゾセ並に高いであろうと予想はしていたが、アルエットの機動力はその予想をはるかに越えていた。

 

「速い!?」

 

 シンクは舌打ちして、アルエットと距離をとるようにして後退する。グレネードランチャーを二発撃ちこんで、さらにビームライフルを撃つ。

 

 アルエットはグレネードランチャーをビームサーベルで切り払い、さらにビームライフルをもう片方の腕からビームサーベルを取りだして、切り払ってしまう。

 

 そしてアルエットはなにごともなかったように、突撃してくる。こうなったらお互いの距離は縮まるばかりだった。

 

 シンクは覚悟を決めると、ビームライフルを捨てて、両の手にビームサーベルを持ちかえ、アルエットに突撃する。

 

 シンクは二本のビームサーベルを束ねて、頭上から両手で振りおろす。対してアルエットもビームサーベルで防御する。

 

「性能がちがうなんてのはわかっていたけど……」

 

 それにしてはアルエットのパワーは異常だと、シンクは感じた。いままでのモビルスーツとは、なにかがちがうように思えたのである。

 

 両の手で斬りかかったはずが、アルエットは片手だけでそれを押しのけようとしている。

 

 シンクは残りのグレネードランチャーを撃ちこんで、もう一度アルエットと距離をとる。それでも離脱が間に合わず、ヘビーガンの表面装甲の一部が破損するが、構っている場合ではなかった。

 

「あの赤い奴は……?」

 

 あの至近距離でグレネードランチャーを撃ちこんだのだから、ただではすまないはずだが、アルエットがあの程度でやられたとも思えなかった。

 

「なかなか小技の利くパイロットのようだけど、機体が悪かったわね!」

 

 アルエットは無傷の状態で、ヘビーガンの頭上をとっていた。振りおろされるビームサーベル。シンクはかろうじて反応して、その攻撃を避けるが、それでも回避が間に合わず、左腕を切り落とされる。

 

 そしてアルエットの蹴りがヘビーガンをめがけて襲いかかる。シンクはそれを紙一重でかわすと、そのまま片手でアルエットにしがみついた。

 

「こいつ!」

 

 シンクが叫ぶ。しがみつけば打開策があるとは思っていないが、それでも対抗手段がまるで思いつかないので、どうしようもなかった。

 

 そしてシンクはこのときまで直接回線の回線が開きっぱなしだったということを忘れていた。それはシャルナも同様であった。

 

『この声……。あなた、もしかして……?』

 

「なんだ、回線が開いてるのか……?」

 

 敵パイロットの声らしきものが聞こえ、シンクは狼狽する。それと同時にその声には聞き覚えがあった。

 

『戦艦を降りたといっていたのに、モビルスーツに乗っているなんて!』

 

「そっちこそ、モビルスーツのパイロットだったなんて……」

 

『おかしい?』

 

「子供がモビルスーツに乗って戦ってるのがおかしいんだよ」

 

『そうね』

 

 シャルナが自嘲気味に笑う。

 

 それと同時に離れたところで光りが広がった。ジオン側の退却信号である。

 

『退却ね……』

 

「行ってしまうんだな」

 

『あちらが私の帰るところだから』

 

 シンクはそれをいわれるとなにもいいかえせなかった。

 

『そういえば自己紹介がまだだったわね。私はシャルナ・レイドよ』

 

「シンク・アルファード……」

 

「ありがとう、シンク。決着は次の機会にとっておきましょう」

 

 シャルナはそれだけ言い残すと、ヘビーガンを振り払って退却していった。

 

「それが別れの言葉かよ……!」

 

 シンクのやるせない感情だけが虚しく宇宙にわだかまっていた。

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