機動戦士ガンダムJ   作:あかつきp dash

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第二十六話『オルマ・サンクス』~第二十七話『鉄仮面』

   第二十六話『オルマ・サンクス』

 

 

 

 ジュピトリス7の避難民たちとユーナたちが合流して、一日が経っていた。あれからアーガマRには帰らずに、集会所の付近に留まっていた。

 

 それぞれの顔には悲壮感が漂っており、皆は一様に疲れが滲みでていた。

 

 ユーナはその空気に耐えきれなくなって、その場を離れた。なにかしていないと気が塞ぎこむばかりになるという自覚があったからだ。

 

 外をでると乳母車を押している中年の女性に出会う。よく見ればユーナの顔見知りであった。

 

「ファーナおばさま……」

 

 その女性は彼女の友人の母親であった。リストを見るかぎり、その友人の名前は見当たらなかった。

 

「その声はユーナちゃんかい?」

 

 そういって驚いたようにユーナの顔を見あげる。

 

「ご無沙汰してました。レメスの友達のユーナです」

 

「あんたは無事だったんだね……」

 

「お散歩にお付きあいしてもいいですか?」

 

 ファーナは疲れきった表情に安堵を浮かべて、コクリとうなずいた。

 

 ―◇◇◇―

 

「情けない話さ。娘も夫も死なせて、あたしだけ生き残ったってんだからさ」

 

 ファーナは自嘲気味に語る。その視線は目の前ではなく、はるか遠くを見ていた。

 

「いまでも思いだすよ。レメスの体温がどんどん下がって、声もとぎれとぎれになって、

最後にはなにもしゃべらなくなった。あたしはなにもできなくて、レメスの名前を呼ぶだけだった。どうしようもなかったっていったらそれまでだけど、もしかしたら救う方法があったんじゃないかってね」

 

「私はいまだに信じられません。いまにもレメスが顔をだして笑いかけてくれるんじゃないのかなって……」

 

「そうだね……。あの娘が生きてたのは昨日のことのように感じるけど、ジュピトリス7での生活は大昔のように感じるよ」

 

「私もです……」

 

 二人の間に沈黙が流れる。森林の合間を小鳥が飛びかい、さえずる鳴き声が響く。生い

茂る葉っぱの隙間を縫って降りそそぐ光が乳母車を照らしだす。そこには赤ん坊が小さな寝息を立てて眠っていた。

 

「ところでこの子は?」

 

「この子はオルマ・サンクス。この子の母親の死を看とっちゃってね。それが縁で世話をさせてもらってるんだ」

 

「そうなんですか……」

 

「みんな、無くなったんだよ。家も家族も……」

 

 森林のトンネルと舗装された道はずっと遠くまであるのに、なぜか目の前は暗かった。

 

 

 

   第二十七話『鉄仮面』

 

 

 

 フロンティア4から少し離れた宙域で、グリュ・プランセッスは補給を受けていた。

 

「補給艦のブラック・バードだけでなく、巡洋艦のドラグートまでとはな。大層な補給だ」

 

 アレンはふとそんな感想を漏らす。

 

 ドラグートから直々にやってくるという指揮官を出迎えるために、アレンは格納庫で他の士官とともに待っていた。

 

 間もなくして一機のスペースボートが着艦する。そこから降り立ったのは、一人の大男であった。かつての西洋貴族を彷彿させる出で立ちに、顔を鉄仮面で覆っている姿は一見すると大道芸人だが、その体から発せられる気のようなものがその姿に説得力を与えていて、決してそのような感想を持てなかった。

 

「これは……鉄仮面殿」

 

 アレンはその訪問者に素直に驚いた。この鉄仮面という男の名前などは知らない。しかし、その鉄仮面という通称はアークジオンでも有名であった。鉄仮面は《ラフレシア機関》の最高責任者であり、アレンのような一将校が目にかかるような人物ではなかったのである。

 

「アレン少佐ともあろう人物がバルバールを二機も失ったそうだな」

 

 鉄仮面がアレンに向かっていった、最初の一言だった。

 

「かえす言葉もありません」

 

「少佐は油断がなかったから、自らも出撃したのだろう? だったら恐るべきは少佐が計り知れなかった敵の戦力だよ」

 

「……敵にニュータイプがいると?」

 

「外見だけでは、モノの本質を見抜けぬときがあるということだ」

 

「以後、肝に銘じておきます」

 

「今回は私も手を貸そうと思ってな。ドラグートがあればフロンティア1の浸入も容易であろう」

 

「寛大な処置に感謝の言葉もありません」

 

 アレンは恭しく礼をする。

 

「して、鉄仮面殿はどのようにして補給艦どころか巡洋艦まで連れて、連邦軍の勢力圏内に浸入できたのですか?」

 

「ここは私にとって庭のようなものだ、という回答では不満かな?」

 

「いえ……」

 

 鉄仮面の語気には、それ以上の詮索は許さないというものが発せられており、アレンもそれ以上は聞かなかった。

 

(計り知れぬ男だと聞くが、本当のようだな)

 

 アレンは鉄仮面に対し、そのような感想を持ったのである。

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