避難所は硝煙と砂埃が舞いあがる異様な空気に包まれていた。
その中心にいたのがソールとケネスを焚きつけた将校――グレイグ・ザウナー少佐であった。
彼は若手の訓練兵ばかりを寄せ集め、避難所を占拠した。そして避難民をも巻き込んでアークジオンの部隊に攻勢をしかけたのであった。
彼の思惑というのは自分の命を危険にさらしたくないが、さりとて命惜しさに逃げたとあればこれからの昇進に響く。それは彼にとって都合が悪い。
そこで考えたのが内外に戦う意志を示すことであった。そのためになにも知らない訓練兵を焚きつけ、避難民をも巻き込んだ。無垢なだけの訓練兵なら騙すのはたやすいし、避難民がいくら死んでも、義勇軍として尽力してもらい名誉の戦死だったとでもいえば、いいわけは立つ。
フロンティア1に限らず訓練兵などいくらでもいるし、避難民などは限られた大地しかないコロニーを余分にとるばかりか、出費しかコロニーに与えない害虫でしかない。ならばその数を減らしてやるほうがよっぽど健全というものだ。
そしてグレイグはは指揮官として安全な場所で指示をだせばよい。連邦軍の被害を最小限に抑え、かつ自分の昇進になるような材料も得られる。一石二鳥であった。
(昇進して地球の居住権を手に入れるんだ! そうすればちんけな妻と子供を捨てられる。もっといい女を手に入れてやるってもんだ!)
グレイグはそう思うと笑いが止まらなかった。
こちらに気づいた二機のバルバールがこちらに向かってくる。敵の手傷を負わせる必要はない。要は自分がこの戦場で勇敢に抵抗したという結果だけがあればいい。仮に撃墜できれば棚ぼたであった。
二機のバルバールが砲撃をしかけてくる。ロクな装備もないこっちはモビルスーツに有効打など与えられるわけもなく、かえって注意をこちらに向けさせただけであった。
バルバールの砲撃は仮設住宅を吹き飛ばし、果ては集会所にグレネードランチャーが炸裂する。逃げ遅れていた避難民はその爆風に巻き込まれたり、瓦礫の下敷きになったりしていた。
「グレイグ少佐! いまは避難民の救助を優先すべきではないでしょうか。このままでは
被害が増える一方です」
「愚問だな。被害が増えているのは、君たちの奮闘が足りないのだ。それにもっとも被害
を最小限に抑えるならば、敵機の撃墜が最優先ではないかね?」
グレイグの返答に訓練兵は、納得のいかない表情になるが、なにもいわずに戦場へ向かった。
その訓練兵は戦闘車の銃座を構えるが、バルバールのビームがそれよりもはやく着弾してしまった。爆発が収まると、そこには消し炭になったなにかが残るだけであった。
「勇敢な戦死だったよ」
グレイグが盛大に笑いだす。絶望的な戦況であっても彼は、攻撃の手をゆるめさせなかった。