当時を知る者にとってF91とアルエットの戦いは、まさにアムロ・レイとシャア・アズナブルの戦いを彷彿させたであろう。
白いモビルスーツと赤いモビルスーツが戦う姿は、歴史は繰りかえされるという皮肉を感じさせた。
F91は「現時点でのモビルスーツ限界性能の達成」を掲げられた機体だけあって、その性能をアイラは身をもって体感していた。
アルエットのビームライフルの一撃をかわしながら、F91もビームライフルで反撃をする。
(足まわりがこうも軽いなんて。Jとはくらべものにならないわ!)
アイラは新しい玩具を与えられた子供のようにはしゃいでいた。F91に搭載されたバイオコンピューターは、ただでさえ高い機動性に拍車をかけ、その限界反応までを底上げしていたのである。
ただアイラが無自覚であったのは、自分が新型の高性能さに振りまわされているのだということだ。またコロニー内でヴェスバーの使用にためらいがあるせいで、その火力もいまひとつ生かしきれていなかった。
「このパイロット、まだ機体の扱いになれていないようね」
結果として、その事実はシャルナに看破されることとなってしまった。
なによりF91の機動性にアルエットも負けていなかったのである。たしかにヴェスバーの威力は驚異であったが、それこそ接近戦に持ちこめば迂闊には撃てなくなる。
アルエットはその場で一時静止をすると腰のラックにビームライフルをしまい、その片手をビームサーベルに持ちかえた。
あきらかな挑発行為だ。
そのアルエットの姿にアイラは、腹の底から這いあがってくる苛立ちを感じた。
そうなると自分を止める必要などなかった。動情に流されるままF91は、アルエットに向かっていった。
「挑発にのってくれた……!」
信じられない気持ちでシャルナも、F91へ向かっていく。
「その赤いメッキを剥がしてやる!」
F91とアルエットのビームサーベルが交錯する。
かち合うF91とアルエット――しかし、徐々に押されているのはあきらかにF91であった。
「喧嘩にならないわね……」
シャルナがそうつぶやくと、アルエットの機体の出力をいっきに上昇させる。すると、F91はあっさり力負けして、後方に吹き飛ばされてしまう。
さらにF91は腹部に蹴りの一撃を見舞われ、機体を地面にぶつけてしまう。アイラはその衝撃でキャノピーに頭をぶつけてしまう。
「白い新型は壊さずにいただけという話しだったわね」
身動きをしないところを見るとパイロットは気を失ったか――だからといって、連れて帰る途中に抵抗されるのも困る。
そこでアイラはアルエットの両の手でF91の頭を掴み、その頭をねじっていく。途中で首筋のあたりから褐色の液体が噴きでて、アルエットはまるで返り血をあびたような姿になるが、それでも構わずF91の頭を強引にもぎ取ってしまった。これをバルバールでやろうとした場合、マニュピレーターは確実に破損してしまうが、アルエットという機体はそれが可能であった。
これで一段落がついてとシャルナがひと息つくと同時に、背後からともに浸入したバルバールがやってくる。
「さすが赤い彗星の再来。見事なお手並みです」
「おだてないでくださる?」
シャルナはその呼び名に苦笑いを浮かべざるをえなかった。
「ところで二機しか見かけませんが、他の四機は?」
「……応答がないことを考えると、おそらくは」
そのやりとりだけで、だいたいの状況というものは把握できるものだ。シャルナの口から思わずため息が漏れた。
「そう……。とにかく新型を連れて帰りましょう。しんがりは私が務めます」
「しかし……」
「私なら大丈夫です。それよりそろそろプロペラントを取りかえてもらえますか。いまのままだと自艦に帰るのも心許ないので」
そのやりとりのあとアルエットのプロペラントは交換され、バルバールはF91をワイヤーで雁字搦めにして、フロンティア1から持ち去ったのであった。