アーガマRはグリプス戦役において活躍したアーガマの模造品である。外装は当時のままであるが、近年になって建造されたこともあり、その性能は現在運用されている戦艦とも引けを取らない。
そして、その艦長に任命されたのがブライト・ノアであった。一年戦争やシャアの反乱において前線で戦った英雄であり、グリプス戦役ではオリジナルのアーガマの艦長であった人物である。
そんな生きた伝説のような人物がアーガマRの艦長に任命されたと聞けば、世間は口火を切ったように騒ぎだした。
ある者は連邦軍のパフォーマンスに過ぎないと揶揄し、ある者はお祭り騒ぎのように騒ぎ立てた。
というのもシャアの反乱以降、これといって地球圏では大きな動乱はなく、地球圏は平穏な空気に包まれており、人間は現状の生活に安心しきって蒙昧になっていった。
それでも政治に対しての不平不満というのは募っていくもので、適度に大衆からガス抜きを行うことが政治の側から求められた。
アーガマRをまじえた大規模演習もその一環として行われたものである。
そして演習を終えたアーガマRには、単独でジュピトリス7を月まで護送するという任務が与えられていた。
しかし、合流地点にはジュピトリス7の機影は確認できず、待っていたのは所属不明のモビルースーツによる襲撃であった。
四機のジェガンがそれを迎え撃つも、苦戦しているようだ。
ジェガンのパイロットはいずれも、新人のパイロットであった。いずれも優秀な成績を修めて、アーガマRの乗組員になった前途有望な若者である。
しかし、はじめての実戦は彼らを及び腰にして、敵に付けいる隙をあたえていた。なにより所属不明機はジェガンに比べてあきらかに高い性能を示し、それを操縦しているパイロットの練度の高さも窺えた。
四機のジェガンはあっという間に陣形を崩されると、所属不明機は高い機動性で翻弄する。そうしている間に一機のジェガンにビームが直撃して爆散する。
こうなるとジェガンのパイロットたちも必死になって応戦する。
しかし所属不明機の性能は、ジェガンのパイロットたちの必死さを鼻で笑うように追いつめていく。
所属不明機はロングビームアックスをジェガンの頭上から振り落とし、縦一文字に引き裂く。ジェガンのパイロットは断末魔の叫びをあげる間もなくビームの熱で蒸発してしまった。
ジェガンのパイロットたちは、死というものがずっと近くにあることに気づかされ、その事実に畏怖した。
――◇◇◇――
木星船団ジュピトリス7の開発陣が起ち上げた《J計画》。
計画の目標に掲げられたのは、次世代のモビルスーツ開発――即ち小型モビルスーツの開発である。その到達点がJと名づけられたモビルスーツであった。
Jで着眼が置かれたのは、小型ジェネレーターの高出力化である。そのおかげでジェネレーター出力にも余裕が生じ、ビームシールドを展開することが可能になった。
そしてモビルスーツの小型化に伴い高性能なスラスターの開発も行われ、それによりJは高機動な機体へと昇華するに至っている。
そしてJに試験的に取りつけられたのがBWCS――Brain Waves Connect Systemである。BWCSはパイロット二人の脳波を共振させることで、パイロットの持つ知覚を倍増させようというものであった。
平たく言ってしまえば、ミノフスキー粒子の干渉を受けないレーダーのことである。
アイラとシンクがアーガマRの部隊を襲っている所属不明機の先手をとれたのは、このBWCSの働きによるものであった。
対する所属不明機は小型モビルスーツによる四機の編隊によって成り立っているようだった。その性能は四機のジェガン隊を蹂躙してる姿から、完全に凌駕しているのが窺えたし、なによりパイロットの練度の面でもまったく話になっていなかった。
四機だったジェガンはすでに二機にまで数を減らされ、残った機体もじりじりと追いつめられている。全滅はもはや時間の問題であった。
所属不明機はそのときジェガンとアーガマRに気をとられていただけに、Jに対しては後手にまわるしかなかった。
所属不明機の一機はJの放ったビームライフルの一撃に腹部を貫かれ、爆散する。
Jはその爆発を煙幕にして、別の機体に襲いかかる。
完全に虚をつかれた一機の所属不明機は、距離を詰められる。所属不明機はどれもビームシールドを装備していたが、シールドをかいくぐるほど接近されれば、シールドは役目を成さないのは道理である。当然、アイラもそれを狙っていた。
所属不明機は抵抗する間もなく、ビームサーベルを受け、胴体を切り離される。
所属不明機の残存した機体が立ち去ったのは、それから間もなくである。