デュランはヘビーガンに乗りこみ、艦外のようすをうかがう。レーダーで確認したところアークジオンのらしい機体が三機の反応がある。動きからして、敵機がこちらに気づいているかはわからない。ただ、こちらに向かってきているのはたしかだった。
(先手必勝が上策か……)
こちらは一機しかいないが、この地の利を生かせば数の不利は十分に覆せると判断したデュランは、ヘビーガンに火を入れた。
まずは子供たちが隠れている廃艦から離れる必要がある。デュランは敵機に気づかれないように、ひそやかに動きだす。
十分に離れたと判断したところで、デュランは敵機に向かってビームライフルを放った。
突然の奇襲で、敵機は回避運動が間に合っていない。ビームはコクピットに向かって直撃――かのように思えた。
「なに?」
デュランは驚愕する。ビームの直撃を受けたはずの敵機が無傷だったからだ。
「こいつはすげーぜ」
ヘビーガンのビームの直撃を受けたバルバールのパイロットは感嘆の声をあげた。
よく見ればバルバールの外見は、いつもと少しちがったものになっていた。それは試験的に新開発されたリアクティブアーマーを装備しているためだ。分厚い装甲にビームコーティングを施したそれは並の攻撃では有効打にはならない。欠点はその重量で、バルバールの持ち味である機動力を大いに削いでしまっていたことだった。だが、その装甲の効果は機動力を殺してもあまりあるものであった。
その装甲が取りつけられているのは、被弾率の高い、胴体、肩、脚部の三カ所を覆っていた。裏をかえせばもっとも狙いやすい箇所を保護されているため、狙う側からすれば驚異以外のなにものでもない。
なにより直撃のビームをはじかれたという衝撃は、さすがのデュランも動揺を隠せなかった。
ビームライフルで攻撃を繰りかえすが、バルバールに決定打をあたえるには至らない。そうしている間にも離れていた他の二機も合流しに向かってくる。
デュランは圧倒的に不利な状況に追いこまれていた。
「このリアクティブアーマーの効果は、これで十分に立証されたな」
バルバールの編隊の隊長格の男が満足げにつぶやく。まさか、こんなところで連邦軍と
遭遇するとは、ある意味演習の相手としてはこれ以上の素材はないだろう。
「これが僥倖というものか」
そして、相手の青いヘビーガンがかなりの技量の持ち主だと気づくと、男の笑いは止まらなかった。
「連邦軍とは腑抜けの集まりだと聞いていたが、いるじゃないか。腕の立つ奴が」
隊長機のバルバールがビームライフルを放つ。
デュランはシールドでそれをなんとかしのぐと、今度は敵機に向かって特攻をかける。
「なめるな!」
グレネードを目くらましに発射しながら、ライフルをビームサーベルに持ちかえる。途中、シールドの上部が破損するも、それでも構うことなく突撃をかける。
「こいつ、命が惜しくないのか!?」
一人のパイロットが叫ぶ。デュランの行動はとても正気とは思えなかった。
「もらった!」
デュランの檄とともにビームサーベルが隊長格のバルバールの表面装甲に傷をつける。
「面白い! 私に傷をおわせるとはな!」
男はニヤリと笑う。デュランが自分と同等の実力があるとわかり、彼のくすぶっていた闘志を燃えあがらせた。
「他の者は手をだすな! この青いのは俺がいただく!」
そういうと、男は肩アーマーでヘビーガンにタックルをしかける。それを胴にもろに受けてしまい、ヘビーガンの表面装甲に歪みが起きる。
「ちょっと固いからっていい気になるんじゃねえ!」
デュランも負けじにタックルでかえす。それに対して、バルバールもタックルで受けて立った。
速度で上まわっていたヘビーガンであったが、強度はバルバールに及ばなかった。おかげでヘビーガンカスタム自慢のタックル攻撃は、ヘビーガンの肩アーマーの破損という結果になってしまった。
「惜しいな。機体が脆すぎる。だが、勝負は勝負だ! 手加減などせん!」
今度はビームサーベルの斬りあいだった。払って、薙いで、両者は一歩も臆すことなく猛攻をかける。
そして一瞬の隙をついたヘビーガンがバルバールの肩アーマーめがけて、突きをあびせる。装甲表面はしだいに蒸発していき、貫通させられるのも時間の問題だった。
「お見事といっておこうか。だが――!」
装甲を貫かれる前に、装甲をすみやかに除去し、突きを放ったヘビーガンの右手を左腕に仕込まれたガトリングガンで潰す。
「しまった!」
そういったが、すでに遅かった。バルバールの右手がヘビーガンの頭をつかみ、近くにあった廃艦に叩きつける。
「ひさびさに面白い闘いだったよ。パイロットを讃えて、その機体は残させてもらう」
バルバールのガトリングガンがヘビーガンのコクピットにめがけて火を吹いた。