作戦前ということもあってアーガマRの格納庫は、騒然とした空気に包まれていた。
そんななかJの調整も大詰めを迎えようとしていた。
その装備には脚部とバックパックのハードポイントにプロペラントが取りつけるというものである。それによってヴェスバーを撃てる回数を増やすことが主な目的であった。ただし、機体重量の増加に対しては措置がとられておらず、鈍重化が懸念された。そのために腰の部分にはビームシールド発生機を二基とりつけられ、防御力の底上げが行われた。
「……なんで、エイミが副座に乗っているんだ?」
シンクがJのコクピットを覗くと、そこにはノーマルスーツを着たエイミがいた。
「私も連れて行って欲しいの」
「ダメだ。さっさと降りろ」
哀願するエイミにシンクは厳しい口調で突きかえす。
「……心配なの。シンクがデュランさんみたいにならないかって」
「俺が死に急いでるっていいたいのか?」
「なんか最近のシンクって無茶ばかりしてる気がするの。どうして?」
「がむしゃらにやってたら、そうなってただけだ。俺だって好きでこんなことをしてるん
じゃない」
「それはみんなだって一緒よ」
「わかってるよ。でも、俺たちは子供なんだ。できることには限りがある。それでもやれることがあればやるしかないだろ。大人の都合で殺されるなんて、そっちのほうが馬鹿げてる」
「だから、私には残れってこと?」
「エイミが戦場にでることなんてないだろ」
「それでも私が乗っていれば、死に物狂いで生きて帰ってこようって気になってくれるでしょ?」
エイミは身を乗りだして、シンクを圧倒するものいいで迫る。
「だからって……」
「私、絶対ここを動かないから」
エイミは頑なになって、副座にしがみついている。その姿にシンクはため息をつくしかなった。
「連れて行ってあげたら?」
振りかえると苦笑いを浮かべたユーナがそこにいた。
「でも……」
「頭ごなしに否定しても、頑なになるだけよ。エイミを子供扱いするだけじゃなくて、ときには尊重してあげなきゃ」
「それがいまだっていうんですか?」
「そのうち自分のやるべきことだって、自然に見つけてくるわ。でも、いまは誰かが見ていてあげないと」
シンクはエイミの顔を見る。その表情はかつて自分の後ろを追いかけてきた少女とは少しちがっていた。自分のことは自分でしようという意志が、その瞳にうっすらと宿っている。
それを見たシンクは、頼もしさと同時に一抹の寂しさが胸をよぎるのを感じていた。
「わかった。一緒に行こう」「ホントに?」
エイミの表情が変わる。
「ああ。なんか目が覚めた。ユーナさん、そろそろ出撃前なんで、離れててくださいね」
「シンク、忘れないで。あなたは一人じゃないのよ」
シンクはJのコクピットに乗りこみ、ユーナがその場から離れると同時に電源を入れ、ハッチを閉める。
「ねえ、目が覚めたってどういうこと?」
「さあな。いってやらない」
シンクは意地悪い口調でかえすと、エイミは抗議の声をあげる。
(今度はみんなで帰ってこよう。このアーガマRへ)
そのためにはアルエット――シャルナを倒さなければならない。シンクの胸中に暗い情念が渦巻いていた。