機動戦士ガンダムJ   作:あかつきp dash

39 / 78
第五十話『スラッガー』~ 第五十一話『閃光は過ぎて』

第五十話『スラッガー』

 

 

 

 戦線から離れたところで、コロニーレーザーの組み立ては着々と進められていた。

 

『ラウニ少尉、そちらの接続はまだか?』

 

「待ってください。Iフィールドの出力が不安定なんです」

 

 二十代の若い女性の声が作業用モビルスーツ《ガニメデ》のコクピット内に響く。シミュレーションのときより数値の調整がデリケートなせいで、作業終了予定時間をいっぱいまで使うはめになっていた。上司が急かしてくるのはそれが原因であった。

 

「調整終了しました。ミノフスキーコネクトを作動します」

 

 ガニメデがゆっくり砲身の一部から離れていく。それと同時にゆっくりとべつの部品の一部に近づいていって、やがてドッキングをはじめる。

 

 コロニーレーザーとしては小ぶりであるが、それでもコンペイ島に侵攻してきているアークジオンの部隊の半分を潰せるはずであった。

 

 しかし、一方で問題があった。ミノフスキーコネクトの技術自体がまだ未完成であり、そのせいで一発発射すると高確率で熱暴走を起こし、自爆するという計算がでていた。

 

 そのためこの巨砲には《スラッガー》というあだ名をつけられることになった。

 

『ソーラーパネルの展開が完了しました』

 

『後部冷却器のドッキングをはじめます』

 

 ドッキングがじょじょに完了していくにあたり、その巨大な砲身も姿をあらわしていく。

 

『ドッキングが完了しました。Iフィールドの出力も安定しています』

 

『チャージを開始します。発射十分前』

 

「発射予定時刻は――ギリギリか。なんとか間に合ったってことかしら」

 

 ラウニはそういって、ひとまず胸を撫で下ろした。これが連邦軍の命運を担っていると聞かされれば、嫌が応にもプレッシャーはかかってくる。この安堵はその重荷が少し降りたことからくるものだ。

 

『カウントに入る。十秒前――』

 

 九、八、七――ゼロ。

 

 そのカウントが終了するとともに、スラッガーから巨大な光の束が戦域に発射された。

 

 作戦の成功の報が入ったのはそれから間もなくである。

 

 

 

   第五十一話『閃光は過ぎて』

 

 シャルナが目を覚ましたとき、目の前にいたのは連邦の兵士だった。それがシンクであることに気づくのに、それほど時間は要さなかった。

 

「目が覚めたか?」

 

「それって銃を突きつけていう言葉?」

 

 シャルナは力なく笑ってみせる。

 

「それはお互いさまだ」

 

「そうだったかしら……」

 

 そういってシャルナは嘆息を一つついた。

 

「あなたがオズベルトを?」

 

「わからない」

 

「……アークジオンの艦隊は?」

 

「後発の部隊がスラッガーの攻撃で壊滅。そのおかげで連邦軍がいまは優勢だ」

 

「そう……」

 

 それを聞いたシャルナは、力のない返事を返した。

 

「ところでスラッガーってなに?」

 

「小型のコロニーレーザーみたいなものだって聞いてるけど、それ以外は俺にもわからない」

 

「そうなの……」

 

「これからどうするつもりだ?」

 

 シンクは銃を構えなおして訊ねる。

 

「なにも――なにも思い浮かばないわ。だって、私はまた大事な人たちを失ったんだもの……」

 

 そういってシャルナはすすり泣きはじめてしまう。

 

「悪いけど、俺はシャルナに同情なんてできないからな」

 

「そうね。それで私はこれからどうなるのかしら?」

 

「とにかく俺と一緒にアーガマRにきてもらう。それから先のことはわからない……」

 

「ええ。負けたのは私だから――シンクに従うわ」

 

 そういい終えてシャルナは、シートに深々と背中をあずける。その表情には不思議と安堵が浮かぶのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。