機動戦士ガンダムJ   作:あかつきp dash

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第五十七話『理由なんてない』

 

 暗がりの独房のなかで、シャルナはシンクの危機を感じとっていた。

 

(さて、どうしたものかしら)

 

 だからといってシンクの危機を感じただけで、それの真偽はわからない。なによりシンクを助けに行く理由がなかった。

 

「お疲れじゃありません?」

 

 シャルナは見張りの青年に声をかける。青年が思わず生真面目そうな返答を返してくるのがおかしかった。

 

「あのですね――」

 

 だからといって放っておく気もなかった。シンクという少年と自分は関わってしまったのだ。

 

(責任はとってもらわないとね。私もけじめをつけないといけないけど)

 

―◇◇◇―

 

「ごめんなさい。昔から手癖が悪くて」

 

 独房で昏倒している青年にそういって、シャルナはノーマルスーツのある部屋に向かった。

 

 シャルナは勘を頼りに目の前に映った扉を開ける。すると、そこには多くのノーマルスーツがロッカーから吊り下がっていた。

 

「どの戦艦もなかはだいたい一緒なのね」

 

 シャルナは肩をすくめるとパイロット用のノーマルスーツを手にとって着替えはじめる。少しでも疑われないように艦内を動くには、ノーマルスーツで動きまわるほうが都合がいいと考えたからである。

 

 着替え終わったシャルナは部屋からでて、自分の記憶を頼りに格納庫へ足を向ける。

 

 その進路が阻まれたのは、それから間もなくのことであった。

 

 少女が前方に銃を構えて立っていたのである。その少女はエイミであったが、シャルナが彼女のことを知っているわけもない。

 

「ヘルメットを脱いで」

 

 エイミは声を震わせながら、銃を構えなおす。シャルナは潔くその指示に従った。

 

「やっぱり、さっき脱獄したアークジオンの兵隊ね。これからどうするつもり?」

 

「それを聞いてどうするつもり?」

 

「それは……」

 

 エイミはそう問い返されて、返答をつまらせる。シャルナは自分を撃つ気なのかと暗に問いかけたのだ。

 

「あなた、たしかシンクと一緒にいた娘ね? ひょっとして、私が脱獄したのはシンクに復讐するためだと思ってる?」

 

 そういわれてエイミはハッとした表情になる。どうやら図星のようだ。

 

「わかりやすい反応ありがとう」

 

「そ、そうよ。もしあなたがシンクに危害を加えるんなら……」

 

「殺すの? その震えた手で?」

 

 シャルナは冷たくいい放って、一歩前へでた。

 

「動かないで!」

 

「健気なお嬢ちゃんね」

 

 バカにしたのではなく、これはシャルナなりの賛辞であった。

 

 シャルナは銃口に臆することなく、エイミに向かっていく。

 

「エイミ、ダメ!」

 

 その声とともにエイミに人影がとびかかる。ユーナであった。

 

 ユーナはエイミから無理矢理に銃を取りあげる。

 

「ユーナさん!」

 

 エイミは非難がましく、その名を呼ぶ。

 

「そろそろ失礼していいかしら?」

 

 シャルナはそれでもお構いなしに呼びかけた。

 

「あなた、自分が話題の中心だって自覚ある?」

 

「中心にしてるのはあなたたちでしょ。自分のことをどう思われようが、関係のない話だわ」

 

「でもエイミのいうとおり、あなたがシンクに復讐しに行くというんなら、話は変わってくるけど?」

 

 ユーナはそういって、シャルナを観察するような視線を送ってくる。

 

「復讐に興味はないなんて、口では軽くいえるものね」

 

 エイミが鋭く睨んでくる。

 

「じゃあ、なんで脱獄なんかしたの?」

 

「シンクを助けに行くつもりだっていったら信じてもらえる?」

 

「信じられない」

 

 エイミはきっぱりといい放った。

 

「でしょ。だからこっそりとでて行くことにしたの」

 

「あなた、なにを考えてるの?」

 

 ユーナが問いかけてくる。

 

「なにも。あるがままに自分の決めたことだけを成していくだけ」

 

「シンクが危険だというのは?」

 

「私がそう感じただけよ。とくに信憑性はないわ。それこそここを逃げだしたい方言

かもしれない」

 

「あなた、ホントに私たちに信じてもらおうとしてるわけ?」

 

 エイミが呆れたような口調でつぶやく。

 

「興味ないっていったでしょ。それよりどうする? 私を行かせてくれればシンクは

助かるかもしれない」

 

 ユーナはエイミから奪いとった銃を見つめる。

 

 そして、しばらくすると口を開いた。

 

「わかったわ。私たちはここでなにも見なかった。そうしましょう」

 

「ユーナさん?」

 

 ユーナの決断に、エイミは思わず声をあげてしまった。

 

「さあ、行って。でないと、誰かきてしまうわ」

 

「ありがとう。恩にきるわ」

 

 シャルナはそういってヘルメットを被ると、その場をあとにする。

 

「どうして、あの人を行かせたの?」

 

「……彼女、死ぬ気よ」

 

「そんな――」

 

「少し冷たいかもしれないけど、あの娘と私たちは他人だもの。私たちに止める権利

はないわ」

 

 ユーナは俯きながらそういった。

 

 シャルナが脱獄したことに他の人間が気づいたのは、それから間もなくであるが、すでにシャルナはアルエットでアーガマRを飛びだしていた。

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