シンクたちはアステロイド帯に入ると、巨大な岩塊のくぼみに身を潜めていた。
操作を誤ったアルエットが背中を岩塊にぶつけると、コクピットハッチが誤作動を起こしてシャルナを外に投げだしてしまった。
シンクはJのコクピットからでて、シャルナに向かって手を伸ばした。
「あなたはどうして私を助けようとするの? 私はもう帰る場所を失ったのよ」
「だからって、死に急ぐことはないじゃないか。そんな死人に縛られたような生き方
は、自分の魂だって救えないぞ」
「もう、アークジオンには居場所がないのよ……」
「いまのシャルナは道に迷ってるだけだ。自分の生き方だって見つめ直せば、いくらでもやり直せる」
「だからって……」
「だったら俺たちと探せばいい。それともそんな時間もないのか?」
シンクの差しだされる手をシャルナは懸命に掴もうとした。
「私は……」
シンクとシャルナの手が絡みあい、シンクはシャルナをたぐり寄せた。
「無事か?」
「なんとかね。どうせなら、もう少し優しくしてほしかったけど?」
そういって二人はいつの間にか笑いあっていた。
―◇◇◇―
シンクがJの再調整を行っていると、アルエットのなかにいたシャルナがやってくる。
「その手に持っているのは?」
「アルエットの戦闘データと、オキスタンフレームの解析図の入ったデータディスク
よ」
「それを持ち帰るのか?」
「ええ。私は裏切り者だしね。それ相応の貢ぎものは必要でしょ?」
「それもそうか……」
「それにやると決めたら半端はしない主義なの、私」
シャルナの満面の笑みを見て、シンクの背筋に悪寒が走った。
「そっちはどう? あの紫色の機体と互角に戦えそう?」
「いや、機体の整備で精一杯だったから」
「そうだと思ったわ」
「なにかわかったのか?」
「これはあくまで推測なんだけど、あの機体はオキスタンフレームが組みこまれてるわ」
「そのオキスタンフレームってのは結局なんなんだ?」
「Iフィールドの伸縮によって動く新機軸のフレームよ。従来のフレームに比べて、軽量かつ頑強なのが特徴ね。そのおかげでモビルスーツの出力はいままでのもの比較にならないほどの力がだせるわ」
「Iフィールドで、動く……」
「ただ、常に機体内部にIフィールドを張った状態なわけだから、従来のムーバブル・フレームよりもエネルギー消費量が大きいわ。考えても見て。あの紫の機体が追撃してこなかった理由を……」
「エネルギー切れを起こしかけていた、か。でも、その割には撤退というよりは後退ってイメージだったな。ひょっとして、近くになんらかの補給装置を用意してるってことか……」
「そういうことでしょうね。あと、実体剣と実体の盾を装備していたのはエネルギーを温存するためでしょうね」
「そうだ。あの剣と盾をなんとかしないと」
「まずはその補給装置を潰しましょう。そうすれば深追いされずにすむわ」
「他に敵機が潜んでいそうな気配もなかったしな」
「一対一だなんて、騎士道精神とかのつもりかしら?」
「アイラにそんな殊勝な心がけは、ないと思うけどな。それよりいいのか? シャルナの機体を囮なんかに使って」
「私にとってはただの機械でしかないもの。シンクのような愛機への思い入れはないわ」
「Jは俺たちにとって絆なんだよ。だから人と人を結ぶことができる。そうでないと子供の俺たちがここまで生き残ってきた説明がつかない」
「それは家族ということ?」
「俺もどう表現したらいいのかわからないけど、たぶんそうなんじゃないかな」
「私もそれに混ぜてもらえるってことかしら?」
「それはシャルナの心がけしだいだな。それじゃあ段取りを確認するぞ」