三人のうち、リーダー格の男をデュラン・サイキといった。階級は大尉、齢四十近い男の体格は精悍で、鋭い眼光が瞳には宿っていた。
その右に肩を並べるのは細身のジョン・アバータと口ひげを生やしたホセ・リベアである。
この三人の小隊は通称サイキ小隊と呼ばれて、地球圏内で横行するジオン残党や海賊などの火消し屋として、連邦でもその名は高く、実戦経験も豊富であった。
その彼らの出撃はアーガマRに配属されて、間もなくやってきた
ヴラシオを所属不明機が襲ってきたのである。
そして現在、襲撃に呼応するように基地内で反乱が起きている。そのせいで指揮系統は完全に麻痺してしまい、施策がすべて後手にまわってしまっていた。
「ジョンとホセは、俺の両翼につけ。アーガマの通り道をつくるぞ」
だからといって連邦もとていつまでも手をこまねているわけではなく、遅れながらも反撃をはじめていた。
サイキ小隊の三機のヘビーガンが宇宙を疾駆する。他のヘビーガンとは違い、サイキ小隊のヘビーガンは青いボディーで統一されている。バックパックが他のヘビーガンに比べて大きいのは、出力の大きいジェネレーターを積んでいるからである。そのおかげで機動力は向上したが、重量を少しでも軽くするために装甲は削られ、重心が重くなったために機体の安定性も損ねてしまっていた。そのせいで、通称ヘビーガンカスタムと呼ばれる機体は実質サイキ小隊しか扱えないでいた。
他方で展開しているモビルスーツ部隊もそれに続くが、敵の足の速さに翻弄されて思うように前に出られないでいた。
それに対してサイキ小隊が敵陣へ深く食い込めたのは、サイキ小隊の各々の腕とヘビーガンカスタムがあったからである。
「新型はたしかに手強いが……」
デュランはニヤリと笑みを浮かべると、近くにいた敵機に向かっていく。
「こいつの右肩が出っ張ってるのは、理由があるんだよ!」
ヘビーガンが敵機にショルダータックルを喰らわせる。敵機はそれでバランスを崩し、体制を整える前にジョンのヘビーガンのビームライフルに貫かれた。その間にこちらに向かってくる敵機をホセが牽制し、デュランが仕掛ける。それがサイキ小隊の戦い方であった。
「なんて連中なの……。敵の戦線を強引にこじ開けてるわ」
アイラは感心したのか、呆れたのかも区別のつかない呟きを漏らす。
サイキ小隊の動きには猛々しい気骨を感じさせるものがあった。その動きに対して敵機が鈍重になっているということは、サイキ小隊への対応が追いついていない証拠でもある。
「でも、囮としては効果的だわ」
「だからって、あんな戦い方は……」
敵機がサイキ小隊に対して手をこまねいているのは、命をさらけだして戦うサイキ小隊の姿に恐怖を感じているからではないかと、シンクは感じた。
「とにかく、あたしたちは彼らの後方支援よ」
「……わかってる!」
アイラとシンクの主な役目はサイキ小隊の散らかした戦線の後始末だった。つまり撃ち漏らした敵の相手である。それでもそれを確実にこなしていきながら、サイキ小隊の後を遅れることなくついて行けていた。
「あの白いのに乗ってる奴は、まだ子供だというが……」
それに乗りはじめて、まだ日が浅いという。それなのに戦果だけで見れば、エースパイロット級である。
「ったく、どうなってるんだか」
サイキ小隊とガンダムJは、なにも闇雲に特攻をかけてるわけではなかった。彼らの行動目的は、すべてアーガマRの脱出に集約されているのである。彼らの目的とはあくまでガンダムJをサナリィの月工場まで運ぶことなのだ。
つまりアーガマRとの合流ポインがあらかじめ決まっており、そのまま戦線を離脱する予定になっていた。
「だからって敵陣のド真ん中を突っ切っていくことはなかったんじゃないか?」
「そうね。でも、あたしたちはこうやって生きてるんだから、よしとするべきじゃないかしら」
シンクとアイラが掛け合ってる間に、弾幕が急に薄くなった。敵の戦線を突き抜けたのである。こうなればあとはスラスターを全開にふかせて、アーガマRとの合流ポイントに急ぐだけだった。
「アーガマは無事に離脱できたんだろうか?」
「それも大事だけど、追撃してくるモビルスーツには目を光らせておいてね」
「……わかってる」
サイキ小隊とガンダムJがアーガマRと合流したのは、十分後。
ヴラシオが陥落したのは、それから一時間後であった。