核弾頭施設のあるラップランドの付近に、現在アーガマR隊は差しかかろうとしていた。
あれからクロスボーン・バンガードとの交戦はなく、あたりは不気味な平穏さに包まれていた。
「嵐の前の静けさってやつかしらね」
シャルナはどこか楽しげな表情を浮かべながら、シンクに視線を投げる。
「なにがそんなに嬉しいんだか。敵陣のど真ん中にいるのにあれから交戦が一度もないほうが不気味なんだよ」
「わかってるって。だからこうやって場を和ませようとしてるんじゃない」
「どうだか……」
シンクが呆れたようにつぶやく。
「愛するあなたを思えばよ」
シャルナは冗談ともつかぬ口調で、シンクの腕に抱きついた。シンクも逆らおうとはせずに、ただされるがままだった。これはシンクがシャルナとつき合ううえで、見つけだした一つの答えだった。
「ちょっとシャルナ・レイドさん。シンクも困ってるし離れたら?」
そういって二人の腕を強引に引き離したのは、エイミだった。
「あらエイスちゃんじゃない」
「エイミよ。いい加減に覚えたら?」
エイミの鋭い視線がシャルナに突き刺さる。だが、シャルナに効果はないようで、むしろ楽しんでいるようにも見える。
「そんな必要ないわ。わざと間違えてるんだもの」
「余計にタチが悪いじゃない!」
とうとうエイミは怒鳴りだす。それでもシャルナは笑っている。エイミをからかうのが楽しくてしょうがないのだろう。
「それよりいいのか?」
シャルナを遮って、シンクがエイミに真剣な視線を投げかける。
「なにが?」
「ファランゾートに乗ることだよ」
ファランゾートとはファムとマムの後方支援機である。一種の高速艇で、ファムとマムを戦場まで運んだり、機体の補給が主な目的である。
「みんな戦っているのに私たちだけ、見てるだけってわけにもいかないでしょ」
コクピットには複数人分のシートが用意されており、簡易ではあるが仮眠室もあった。
その搭乗員に名乗りでたのがユーナ、エイミ、マウロの三人である。
「マウロだってやる気をだしてるんだし、あとにはもう退けないわ」
マウロの場合は、エイミが強引に引きこんだというほうが正解なのだが、彼の名誉のためにもそのエピソードは伏せさせてもらう。
「わかったよ。エイミの覚悟、たしかに受けとったよ」
「いいの?」
「いいもなにも、いいだしたら聞かないじゃないか」
シンクは半分あきらめのこもった笑みを浮かべながら、そういった。
「そういうことだってレイスちゃん」
エイミはシャルナにそういわれて、顔を真っ赤にする。それは単純に怒りからくるものだ。
「いい加減にしてよ!」
シャルナが笑いながら駆けだしていくのを、エイミが追いかける。
その二人の様子をシンクは苦笑いを浮かべながら、見守っていた。