シンクは《天上の導き手》という組織名を聞いて、思わず宗教的なものを連想してしまった。つまるところ思想の根幹を共有しているということは、神という具体的な信仰対象を有さなくても、それとは大差ない。そういった意味でシンクの認識は、存外に間違ったものともいえるものではない。
「たしかに彼らは俺たちを助けてくれたんだろうけど、本当に信じていい相手なのかな?」
核弾頭保管施設をあとにしてから、アーガマR隊はクロスボーン・バンガードから奇襲を受けた。その交戦でグラップ級を一隻失い、アーガマRは窮地に追いこまれた。それを助けたのが《天上の導き手》であった。
「たしかに、ゲリラにしては装備がよすぎるものね。アーガマRとグラップ級一隻をこうも隠せてしまうのも不自然だわ」
アーガマRとグラップ級は、山脈の谷の森に身を隠していた。しかもその場所はあらかじめ整地がしてあり、着艦までの行程はスムーズに行えた。また、ここまでの道路も舗装されており、補給路も確保されていた。
「反連邦組織なんて冗談だと思っていたけど、どうやら本気みたいだな」
「あら、活動が活発なときは死者だってでたのよ。武器はマフィアが横流ししたって話だってあるのに」
「そうなのか……」
シンクがジュピトリス7で教わった歴史とは、大まかな大系であり、地球の一地域の紛争までは触れられなかったし、シンク本人もべつのことに興味がいっていたため、必要以上に知ろうとも思っていなかった。だからシャルナの話にシンクは、素直に感心した。
「それに初対面の相手を信じる必要性はないんじゃない。初対面の相手を信じるなんて、ただのお人好しのすることよ」
「相手だって下心があって接触してきたんだろうしな」
アーガマRを降りると、シンクたちは《天上の導き手》が建てた野営テントに向かっていた。不足しかかっていた薬を支給してもらうためだ。というのは、先の戦闘で負傷者が続出したせいだ。なにせ、落とされたグラップ級の船員まで救助したのである。医療班もいまは艦内をところせましと動きまわっている。人手不足でユーナとエイミまで駆りだされているくらいであった。
「すいません。薬をもらうにはこっちで手続きをしてくれって、来たんですけど」
シンクがテントのなかにはいると、年齢のかわらない少年が机を挟んで待機していた。自分たちはともかくとして、同年代の子供が戦場に駆りだされているのに、シンクは衝撃を受けた。
「……なにか?」
少年は黙りこんでしまったシンクを怪訝そうに見かえしてくる。すると続けてシャルナもテントの中にはいってきた。
「シンク、どうしたの?」
そういったつぎの瞬間に声をあげたのは、シャルナであった。
「あなた、ひょっとしてエイプス・ヴォクシィー?」
その名を呼ばれ、少年はハッと顔をあげる。
「君は……?」
「シャルナ・レイド。覚えてない?」
「シャルナ・レイド……。ウィレッタの友達だった?」
「そうよ。そのシャルナ・レイドよ」
シャルナは懐かしそうな目で、少年――エイプスを見つめていた。