シャルナは再会を果たしたエイプスと昔話に浸っていた。シンクが聞いたのは、二人が小さい頃はよく遊んだことと、ウィレッタという友人がいたということだ。シャルナはそれ以外を語ることはなかったが、それでもエイプスに対して秘めた感情を持っていることは読みとれた。
そしてシンクとシャルナはエイプスに連れられ、アーガマRが待機している場所から五十キロほど離れた町にいた。そこはかつてシャルナの生家がある町で、補給にもまだ時間がかかるということで、シンクが付き添いで行くという条件で、自由時間を認められた。
当然、シンクには二人の思い出話にはいれるわけもなく、手持ちぶさたのままエイプスの運転するエレカの後部座席に座っていた。シンクは知らぬ間に、眠ってしまっていた。
―◇◇◇―
シンクが目を覚ましたのは、エレカが停車すると同時だった。
「いつまで寝てるつもり?」
そういって体を揺すってきたのはシャルナであった。憮然とした表情を浮かべながらこちらを見おろしてきている。
「……いま、起きただろ」
シンクは寝ぼけまなこをこすりながら答えた。
「ここがシャルナの生まれた町なのか?」
「そうよ。これからエイプスが昔の友人に連れて行ってくれるのよ」
シャルナはシンクを促して、エレカから降ろすと、エイプスの背中を追いかける。シン
クもはぐれるわけにはいかず、ふたりのあとを慌てて追いかけた。
その道程の途中でシャルナが一件の屋敷の前に立ち止まると、そこがかつての自分の家であったことを教えてくれた。その大理石の荘厳な構えの門からも、相当に立派な屋敷な
のだという想像は易い。しかし、その門は固く閉ざされており、なかにはいることはできなかった。シャルナの家がとり潰されたのちも買い手が見つからず、数年経ったいまもそのままになっているらしいのだ。
そしてシャルナの友人の住居は、そのすぐ近くであった。その家もどちらかというと屋敷というほうが適切な大きさと造りをしていた。ここいら一帯は上流階級が住む通りのようで、他にも屋敷と呼んでいいような立派な住宅が立ち並んでいた。
聞けば、そのウィレッタという友人の家は、物流を取りしきってる会社を経営しているらしく、それで成功を果たした人物らしい。
その屋敷の門をくぐると使用人らしき人物がでてきて、エイプスが二三言付ける。すると使用人は恭しく一礼して、シンクたちを屋敷のなかに招きいれた。
するとなかでは一人のシンクと同年代くらいの少女がでむかえてくれた。おそらく彼女がウィレッタなのだろう。ウィレッタはエイプスと少し話をしてから、シャルナに向きなおる。
「ウィレッタ……」
シャルナは呟くようにして数年来の友人の名前を呼ぶ。
「お久しぶりね。シャルナ」
そういってウィレッタは微笑を浮かべた。