ヴァルコの町の異変にアーガマRのモビルスーツ部隊が飛んだ。
町を上空から見おろすと、敵モビルスーツの気配もないのに町のあちらこちらから爆煙があがる。
「いったい、なにが起こってるんだ?」
ソールは喉を鳴らす。町で広がるその光景に恐怖したのだ。
「南から敵機を確認しました」
まだミノフスキー粒子濃度は薄く、レーダーに敵機が引っかかった。索敵能力の優れたファランゾートが、真っ先に探知したわけだ。
「こんなときに……! 各員、迎撃するぞ」
ジョンが忌々しそうに吐き捨てた。
敵機の編隊が目視で確認できるところまで迫ってくる。エスパドンが五機、もう一機は見たこともない機体であった。その一機はビームフラッグを振りながら迫ってくる。そのビームフラッグからだされる暗号は、共通規格のものであった。相手は自分で名乗りをあげているのである。
「ド、レ、ル、ロ、ナ? 相手はドレル・ロナと名乗ってるぞ」
ドレル・ロナといえば鉄仮面の息子にして、軍の頭角を担う人物であったはずだ。ジョンは驚きを隠せなかった。
「あの機体、奪われたF91に似ている……?」
シンクは近づいてくる新型を見て、そう感じた。
クロスボーン・バンガードの部隊は二手にわかれて、新型が数機を引き連れこちらに向かってくる。そしてもう一方は町に向かっていった。
「私が町に向かった機体を相手にするわ」
シャルナはラウニの制止も聞かず、ファムの進路を町に向けた。
向かってくる新型は、シンクを狙いにつけている。相手の速度から考えても振り切れそうにない。シンクはシャルナのあとを追うのをあきらめ、新型を相手に専念することにした。
新型に向けて放ったブラストライフルの弾は、その弾速が遅いというのもありかわされてしまう。もともとエスパドンの重装甲への備えにつけられた兵器であり、そういった意味では機敏に動く新型に当てるのは難しいかもしれない。シンクはブラストライフルを捨て、頭部のバルカンで牽制をする。その間に槍ではなく、剣をとりだして接近戦に備える。
「相当にひきつけないと……」
新型が背部にセットしてあった大型ビームライフルの銃口を向けてくる。おそらくあれはヴェスバーではないか――シンクの背筋に冷たいものが伝う。重装甲に設計されたマリであろうとヴェスバーのような高威力のビームを受ければ終わりである。
新型から発射されたヴェスバーを、シンクは弾道を読んでかわす。そして、マリの高機動を生かし、新型に詰め寄り、ABソードを一閃させる。一瞬直撃したように感じたが、すぐ手応えがないことに気づかされる。
「質量を持った残像だってのか……?」
それに驚いている間もなく、新型は頭上から攻撃を仕掛けてくる。シンクは直感的にそれを悟って、かわす。
「こんな直感に頼った戦い方が、いつまでも通じるものかよ」
シンクは舌打ちする。弾速をコントロールできるヴェスバーと、残像効果でこちらを視覚的に困惑させてくる新型は、非常にやっかいであった。
相手はその機体速度とヴェスバーを利用して、接近戦を仕掛けさせてくれない。そして、あの機体速度と射程に拮抗できる兵器は、シルフしかなかった。問題はいままで調整が難航していたせいで、実質これが初の実戦投入であるということだ。
マリの四肢に取りつけられたパーツがミノフスキーコネクトでドッキングし、たちまちに十五メートルを越える長大なライフルがその姿を見せる。
新型に向けて狙いを定めて、初撃を放つ。弾道が青白い螺旋光を描きながら新型に向かっていく。一見、ビーム兵器に見えるシルフは、実は実弾兵器である。発射されるときに弾丸が光を纏うために、ビーム兵器のように思えるのだ。
その弾速はきわめて速く、レールガンなどのそれをうわまわるのではないかと思うほどであった。ただ、照準の調整が甘かったようで、新型からは大きく逸れてしまった。
「これだから試供品ってやつは……」
向かってくる新型を見据えて、シンクは忌々しげにつぶやいた。