一方でバルト海では鉄仮面が前線で指揮を執っていた。
彼は戦況が芳しくないと判断するや、自身がモビルスーツを駆ってでた。
その全長は三十メートルにも届きそうで、赤いボディが煌めいた。名をラフレシア・G
(グレート)と呼んだ。背部と両肩に垂れ下がった花びらのようなアーマーと、全身をマントのように覆われたフィン・ファンネルが特徴であった。
オキスタンフレームが採用されており、その巨体からは信じられないほどの機敏さを見せた。技術者からいわせれば、オキスタンフレームを使えば百メートル級のモビルスーツを造ることも目ではないらしい。それはフレームの強度への絶対的な自信からくるものである。そのおかげで重力下であってもこれだけの機動力がだせた。
ラフレシア・Gはフィン・ファンネルを展開させ、連邦の艦隊を襲わせる。一種のビット兵器であるフィン・ファンネルは高出力のメガ粒子砲を発射できる。この一撃を受ければ戦艦といえど無事にはすまない。また敵のビーム攻撃に対しては、フィン・ファンネルからIフィールドバリアを展開できる。まさに攻防一体の兵器であった。
機敏とはいえラフレシア・Gの巨体である。フィン・ファンネルのような支援兵器が必要不可欠である。
さらにラフレシア・Gは背部に二門のヴェスバーを備えていた。その一撃は旗艦のラー・カイラム級を墜としてしまう。
ラフレシア・Gは一機で一個艦隊を壊滅させてしまったのである。それによりクロスボーン・バンガードは巻きかえし、バルト海での戦いは泥沼化した。
その戦況は南下部隊にもすぐに響いてきた。総指揮官であるドレルが倒され浮き足だったクロスボーン・バンガードが息を吹きかえしたのである。それにより南下部隊もその侵攻の速度を弱めなければならなかった。
ファランゾートでマリとファムを連れて、バルト海へ直行するようにいわれたのは、ちょうどそんなときであった。
「本気なんですか?」
「私も指示されただけだから」
釈然としないシンクにユーナは苦笑いをかえした。
「連邦軍は赤い巨大モビルスーツを私たちになんとかしてほしいみたいなのよ」
「南下部隊はどうするんですか?」
「現状の戦力なら私たちが抜けても問題はないらしいわ。それより赤いモビルスーツを倒すほうが優先みたい」
「いくらファランゾートの足が速いっていっても、すぐには着かないってのに。それでも連邦軍は俺たちを待つつもりなのか?」
「連邦軍にとって私たちは保険なんじゃない。私たちがくるまえに倒せればそれでよし。ダメなら私たちに投げるつもりよ。それなら負けても私たちのせいにできるしね」
黙っていたシャルナが口をはさんだ。
「だからって、無視はできないか……」
「だったら行きましょう。バルト海へ」
ファランゾートは戦列から離脱し、バルト海へ向かうのであった。