L1宙域――ヴラシオ周辺。
そこにアイラ・ハイヤームことヴェイナス・ベイの駆るアルバトロスの姿があった。
アルバトロスの姿に差異が見られるのは、追加武装である《ベック》とドッキングしているからである。
アルバトロスのノウハウというのは、アナハイム・エレクトロニクスのものである。その《ベック》には過去のあらゆる技術の集約が見られた。一見、ドダイなどに支援兵器に見間違うが、その先端に伸びる巨大なビーム砲、Iフィールド発生装置、搭載された三基のジェネレーターは、決してドダイのそれとは似ても似つかないものだった。
「わかる……。このアルバトロスが戦局を覆すだけの力を持っているって」
ヴェイナスは打ち震えた。ネオ・サイコミュを通して流れこんでくる外界の空気が心地よかった。
彼女はニヤリと笑うとともにヴラシオへ、単身で突貫をかける。その後ろをつくエスパドンさえその機動力について行くことはできなかった。
連邦軍の艦隊からの一斉砲撃にさらされながらも、ヴェイナスは恐れなかった。なにせアルバトロスのIフィールドは、戦艦の主砲を防いでしまっているのだ。そして、一瞬の隙を見てとり、巨大な砲門から高出力のビームを発射させる。
それは狙い通りに旗艦のラー・カイラム級を貫通させ、さらにその遠く後ろに控えていたグラップ級までも打ち抜き、またさらに奥にあるヴラシオの岩盤の一部を削ぎとってしまった。
後に生き残った連邦軍の将校がいうには、アルバトロスから撃たれたビームは、コロニーレーザーに思えたという。それほどの威力であったということである。
ギガ・ランチャーと名づけられたそのビーム砲は、威力の調節や拡散ビーム砲としても使用が可能である。ただ最大出力で撃った場合はその威力のため、砲身が溶けるという現象を招くとされ、冷却のために連射ができないという問題があった。そのため最大出力で発射するのは厳禁とされている。しかし、先ほどの一撃でさえ最大出力ではないことからも、最大出力で発射する必要はないように思われた。
連邦軍の戦列はラー・カイラム級が落とされたことにより、そこに穴を作ってしまった。アークジオンのモビルスーツ群は、そこから一気に攻めこみ、ヴラシオへ突撃をかける。
苦しまぎれに特攻をかけようとする連邦の戦艦を見つければ、アルバトロスのギガ・ランチャーが火を吹く。
そこにアークジオンの本隊が全軍を推してヴラシオに進軍。連邦軍の劣勢はよりあきらかになった。
ヴラシオが再び陥落するのにそう時間はかからなかった。