ジュピトリス7がアークジオンに襲われたのは、ジュピトリス7が宣戦布告前にアークジオンの存在をリークしてしまったからである。
ジュピトリス7を撃沈させたあとも、脱出艇のほとんどを拿捕することはできたが、輸送船を一艇逃がしてしまったのである。
本来なら、拿捕した脱出艇の乗組員を人質にした海賊の仕業になるはずだったのだが、この輸送船の存在が後々にその計画を狂わせていく。
ちょうど、その頃ヴラシオ攻略のために艦隊を展開していたアークジオンにとって、ジュピトリス7と合流する宙域に向かっていたアーガマRは、面白くない存在であった。
そこでアーガマRに対して、アークジオンはアトラス隊に巡洋艦《グリュ・プランセッス》とアークジオン主力モビルスーツであるバルバールを四機配備させた。
アトラス隊はアークジオンのエリート部隊であり、作戦には十分の自信を持っていた。
これがバスティア・エレキスの初陣であった。
数刻後――待ち伏せていたアーガマRをアトラス隊が奇襲する。
アーガマRに配備されていたのは既に旧式になりつつあったジェガンタイプであった。パイロットの練度の低さと相まって、アトラス隊の敵ではなかった。
しかし、ジェガンを二機撃墜したところで状況は一変する。
アークジオンの失策は、輸送船を完全に見落としていたことであった。
それが背後からの攻撃を許してしまったのである。その結果、二機のバルバールを失ってしまうという展開を招いてしまった。
その後も何度かアーガマRを襲撃するも、ことごとく失敗。ヴラシオ攻略戦で戦功をあげる部隊が多いなかで、アトラス隊は戦功をあげるどころか、モビルスーツを四機失ってしまうという醜態をさらしてしまう始末であった。
しかし、それと同時にエリート部隊であるアトラス隊を幾度となく出し抜いたとして、アーガマRの存在をアークジオンに知らしめることとなった。
そこでアトラス隊には汚名返上のためアーガマR追撃の命令が下され、新たに再編されたのであった。
バルバールとパイロットが補充され、六機のモビルスーツ部隊とともにグリュ・プランセッスがアーガマRに攻撃をしかけた。
「見つけたぞ、白い奴!」
バスティアがJを見つけて吠える。既に仲間を何人も奪われ、あまつさえ自分の顔に散々に泥を塗った相手であった。
執念をこめて、Jにまとわりつきビームライフルの一撃を放つ。それに対しJはビームシールドを張って、応戦する。
「二号機は白い奴の後ろに回りこめ。挟撃するぞ」
バスティアが後ろで援護をしていたバルバールに指令をだすと「了解」の返事がかえってきた。
「あの白い奴、戦いのコツを掴んできたようだな」
Jが照準にうまく定まらないのを見て、バスティアが苦々しく呟いた。
なにより新たに加わった、三機の青いヘビーガンの存在が厄介であった。ヴラシオで戦ったどの連邦の機体とも手応えがまるで違い、とても戦い慣れしていたのである。
そのせいで三号機から六号機までの四機は、三機のヘビーガンに足止めをくらわせる結果になっていた。
「あの青い奴らは、連邦のどのモビルスーツともちがう……」
バルバールの三号機に乗ったパイロットが呟く。なにより猪突猛進に攻撃を仕掛けてくるヘビーガンたちには、バルバールのパイロットたちを飲みこむほどの気迫があった。数で勝るジオン相手に、サイキ小隊が互角に渡り合えているのはそこにあった。
一方のJは二機のバルバールによる挟撃にあい、苦戦を強いられていた。
しかし、バルバールの二機から猛攻を受けてもなお、しのいでみせているJに対して、バスティアは焦燥感を募らせていた。
「白い奴の性能をはかり切れていなかったというのか、この私が!」
バスティアが叫ぶ。エースパイロットを自負していたプライドを何度でもへし折ってくるJがどうしても許せなかった。
バスティアはビームサーベルを取りだして、Jに格闘戦へもつれ込む。
「白い奴、動きを止めたぞ!」
ビームサーベル同士が肉迫して、粒子がほとばしる。勢いよく切り込まれたJは、押し込まれて、身動きがとれない。その間にもJの背後をとったもう一機のバルバールが迫ってくる。
「腕が四本あればよかったのに……!」
アイラが苦しまぎれに呟く。
「背後をとられたというのなら、手はある」
シンクは案外冷静にそう答える。
「使える武器があるの?」
「武器じゃないけど、ハッタリならかませるはずだ」
シンクはそう言って、スイッチを押した。
するとJの背中からビームが射出され、形を成していく。Jの背後にいたバルバールは、それに驚いて、攻撃を躊躇してしまった。
「なんなの、これは?」
「ビームフラッグって呼び名だけど、実際はアンテナとして機能するものなんだ」
アイラとシンクはその隙を逃さず、バスティアのバルバールに頭部のバルカンで牽制を
し、距離をとりながら、ビームライフルで反撃をする。
「あれはいったいどういう兵器なのだ?」
ビームフラッグの存在に気をとられた、バスティアはJのビームライフルの一撃をかわしきれず、右腕に直撃を受けてしまった。
「しまった!」
ビームライフルを握っていた腕がやられては、反撃のしようがない。その間にも、もう一機のバルバールがビームサーベルを構えて、Jに向かっていく。
それを見てとるや、Jはビームライフルを捨て、ビームサーベルを構える。
Jはバルバールをすんでのところまで引き付け、ビームサーベルの一撃をかわし、その勢いで懐にまで飛びこんで、ビームサーベルをバルバールのコクピットに突き刺す。
「二号機がやられただと……。これでは白い奴に勝てん」
どちらにしろ作戦終了時間は、とうにすぎている。もう撤退時期だ。
そう判断したバスティアは撤退信号をだした。
「これで連中を月に行くことを許してしまったか」
バスティアは執念を通しきれない自分のふがいなさを噛みしめたのであった。