第九十七話『シンクとアイラと』
アイラはシンクを真っ先に狙う。それはマリとファムを引き離すという狙いもあった。
その狙いどおりにシャルナにはバスティアが向かう。そしてマリとファムはしだいにその距離をあけさせられていく。
シンクとアイラは互いの名前を叫びあい、交錯する。
ベックの強力なギガ・ランチャーの威力は確かだが、格闘戦となれば事情はちがってくる。両舷の八連装ミサイルランチャーで牽制するが、シンクのマリはその攻撃をかいくぐって近づいてくる。
「そうじゃないとつまらないわ!」
アイラは心がはしゃぐのを感じていた。
シンクはアイラはベックを切り離す瞬間を狙って、ベックをシルフで撃ち落とす。それと同時にアルバトロスのビームライフルがシルフの砲身を貫いた。
アイラは激昂しながら、マリに格闘戦をしかける。アルバトロスの長剣をマリは槍でいなす。
「パワーはこっちが上ね!」
「いい加減にしろ、アイラ」
「あんたが説教なんて生意気なのよ!」
シンクは押されながらも、それでも巧みにさばいて、アルバトロスの攻撃をかわしていた。
「そのモビルスーツは乗る人間の死を要求するモビルスーツだ。そんなのに乗ってたら、命がいくつあっても足りないぞ」
「私の命はもう火星に捨ててきてある。いまさら失うモノなんてあるわけがない」
「そんな死人に縛られた生き方はやめろ。もっと自分に素直になればべつの生き方
だって!」
「知ったような口を!」
アルバトロスの一撃はマリにダメージを与えるどころか、逆に槍ではじきとばされてしまう。それと同時にマリもその槍を手放してしまう。
「帰ろうよ。アーガマRへ」
マリは槍を手放した手で、アイラに手を差し伸べた。
第九十八話『折れた光の矢』
ヴラシオ侵攻部隊の旗艦であるラー・カイラム級の一隻の内部は、ざわつきつつあった。というのは、コロニーレーザーの照射時間が近づきつつあったのに、展開している連邦艦隊に撤退命令がなかなかくる気配がなかったのだ。
「妙だな。そろそろ前線部隊を退避させないと、コロニーレーザーに巻きこまれてしまう」
艦長が焦りを隠せずにつぶやいた。時間になるとコロニーレーザーを守備している部隊から信号が送られてくる手はずになっていた。
「コロニーレーザーになにか問題がおこったのか……」
あれこれ推測をしてみるもやはりどれも推測の域をでなかった。そうしていると管制が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「艦長、コロニーレーザーがアークジオンのモビルスーツの襲撃を受けたようです。コロニーレーザーは核兵器の攻撃を受けて大破。使用不可能になったとのことです」
管制は努めて冷静に報告しようとしたのだろうが、その口は震えていた。
「なるほどな。我々は完全にやられたということか」
「どういうことでしょう?」
「ヴラシオから核が撃たれたせいで、必要以上に警戒しすぎたのだよ。実際はヴラシオには核兵器はほとんどなかったのさ。連中は核兵器のほとんどをコロニーレーザーの破壊に使ったのさ」
艦長は力なく笑う。
「アークジオンがコロニーレーザーに対して、なにも仕掛けてこないのが妙だったが、まさかそんなことだったとはな」
「……地球はどうなるのでしょう?」
「この戦力では仮にヴラシオの内部を占拠しても、そのころには地球の引力に引っぱられてるさ」
「そんな……」
「ヴラシオは地球に落ちる」