機動戦士ガンダムJ   作:あかつきp dash

74 / 78
第百三話『狂い散る黄金』~ 第百四話『エピローグ』

   第百三話『狂い散る黄金』

 

 

 

 ヴラシオが地球へ落ちていく光景をディリジャンは間近に見ていた。

 

(できすぎで恐ろしいくらいだな)

 

 ディリジャンは笑いだしそうなのを必死でこらえなければならなかった。

 

「これであなたは晴れてシャア・アズナブルの息子になれたわけですね。おめでとうございます」

 

 恭しくそういったのはレオパールである。

 

「あなたも地球にヴラシオが落ちるのを間近で見たいなどと……物好きなことだ」

 

「花は満開になるときがいちばん美しいのよ」

 

 そういうものかとディリジャンは、小さく笑った。

 

「それにもともとヴラシオは地球へ落ちるはずだったんですよ。ならばこの光景こそ本来のあるべき姿ではなくって?」

 

「自然の摂理、というものですね」

 

 もともとヴラシオが発見されたのは宇宙世紀の黎明である。ヴラシオを見つけた科学者がその星が地球に落ちると発表したとき、世界は混乱した。そこでヴラシオの地球落下を止めるために大規模な計画がなされた。

 

 それはゆっくり向かってくるヴラシオに核パルスエンジンをとりつけ、軌道をコントロールしようというものであった。

 

 火星や木星の開発などはその計画の副次的なもので、地球圏からの中継場所を設けることが主な目的であった。

 

 そして計画は成功し、ヴラシオは資源惑星として人類に大きな富をもたらした。

 

「地球という惑星は、いまや人類にとって巨大な資産なのですよ。そして、ヴラシオ落下によって人類は多くの資産を失うのです」

 

「その後はそのすべてを掌握し、管理しようというのですね」

 

「そして私は地球圏の支配者として君臨するのです」

 

 ディリジャンは死なせてしまったアレンの顔を思いだし、かつてコロニーの裏路地でくすぶっていた自分を思いだす。これでダイス・グローニャである自分を本当に捨てられるのだと感じていた。

 

 思えば占い師に自分がシャア・アズナブルの生まれ変わりといわれたのがすべてのはじまりだった。その後はシャア・アズナブルに関する本を読みあさった。

 

 当時、ほとんど神さまのように崇められていたシャア・アズナブルである。これを利用してのしあがってやる。それがダイス・グローニャの野心であり、ディリジャン・アズナブルのはじまりであった。

 

「どうした?」

 

 これからのことに思いを馳せ、浸っていると、ブリッジがやけに騒がしいことに気がつく。ディリジャンは管制の者を呼びだし、なにごとかと報告させる。

 

「それがこちらに味方のモビルアーマーが向かってきているという打診がありまして」

 

「そのモビルアーマーと連絡はできんのか?」

 

「どうも芳しくないようで……」

 

 どうしたものかとディリジャンが顎に手をあてたときである。

 

「総帥!」

 

 隣にいたレオパールが叫ぶ。

 

 ブリッジを白い二つの機影が通りすぎたと同時である。

 

『これで私は二階級特進だぁ!』

 

 バスティアの声がブリッジに響く。

 

「オール・ブトン!?」

 

 レオパールが驚愕する。アナハイムで開発し、強化人間であるバスティアに与えた機体だった。それがなぜこんなところにいるのか。

 

「回避しろ!」

 

「ダメです! 間に合いません!」

 

 アルヴィルダをオール・ブトンが抱擁する。

 

 それとともにあたりは光に包まれた。

 

 

 

   第百四話『エピローグ』

 

 

 

 装甲があちこちはがれたアーガマR――ソールやケネス、そしてサイキ小隊の面々のモビルスーツもほとんど中破し、命からがらに帰還した。

 

 地球へヴラシオが落ちる姿をブライトはただじっと見ていなければならなかった。

 

 地球でのできごとがすべて灰になっていくようで、ただうなだれるしかなかった。

 

 地球上ではヴラシオが落下してくる驚異と、依然と続くバグ・スパイダーの混乱に歯止めが利かない状況であった。本来なら地下シェルターに逃げなければならないのだが、その地下シェルターはバグ・スパイダーで満載なのだという。

 

 助けをもとめる悲痛な叫びもヴラシオがすべて塵にかえしてしまう。

 

 宇宙はアークジオンの総帥ディリジャン・アズナブルの死が伝わり、アークジオンは戦意を喪失した。それは地球にヴラシオを落とされた連邦軍とて同じことだ。

 

 これにより両軍の戦いは鎮静化し、休戦状態になっていた。

 

「他のパイロットは無事ですけど、シンクとシャルナがまだなんですよ。ええ、艦の損傷も激しいのも理解しています。だからって放っておけるんですか?」

 

 ラウニが格納庫からブリッジに向かって怒鳴っている。シンクとシャルナの捜索を懇願しているのである。

 

 ソールとケネスは憔悴しきった表情でうつむいている。マウロはメロディとティーロの面倒を見ている。そしてユーナはすやすやと眠るオルマを抱いていた。

 

「シンク、早く帰ってきてよ。会いたいよ」

 

 それを遠巻きに見ていたエイミがふとつぶやく。幼なじみの無事な姿をいまは少し

でも早く確認したかった。

 

 だが、シンクとシャルナが帰還する気配はそれからも一向になかった。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。

作品としてはこれで終わりとなります。今後は設定集なんかも公開していく予定なので、興味があればどうぞということで。

もし作品がよかったということであれば、評価や感想などいただければと思います。それではまたどこかで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。