祓っていいとも!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(2)校庭にて

                  ♢

 

「えっと……」

 

 講堂で天馬さんと会った翌日の昼休み、わたしは校庭のど真ん中で途方にくれる。

 

「いやあ、待たせてしまったね、ミス静香」

 

 振り返ると、功人さんが悠然とやってきた。

 

「……なんでしょうか?」

 

「いやあ、先日はライオン顔の怪人にしてやられてしまったからね……」

 

「ああ……」

 

「その反省をしつつ……次への対策を練らなくてはならないと考えたんだ」

 

「はあ……」

 

「ここまではいいかな?」

 

 功人さんが小首を傾げる。

 

「……まあ、分かりましたが……」

 

「が?」

 

「何故に校庭?」

 

 わたしは周囲を見回しながら問う。

 

「広い方が都合がいいからね」

 

「都合?」

 

「そう……暴れ回るにはね!」

 

「⁉」

 

 功人さんがわたしに対してファイティングポーズを取る。

 

「行くぞ! アーユーレディ?」

 

「い、いや、ちょっと待ってください! どういうことですか⁉」

 

 わたしは片手を突き出して、功人さんを制止しようとする。

 

「どうもこうもない!」

 

「どうもこうもあります!」

 

「……実戦あるのみということだよ!」

 

「ど、どこで実戦をするつもりですか⁉」

 

「他に広い場所が無いだろう!」

 

「ひ、人目に付き過ぎます!」

 

 わたしは再び周囲を見回しながら叫ぶ。

 

「なに、かえって好都合というものさ!」

 

「わたしには大変不都合でございます!」

 

「……ホワイ?」

 

 功人さんは理解出来ないといった様子で両手を大げさに広げる。

 

「な、何故って……」

 

「スーパーヒーローとスーパーヒロインのトレーニングだぞ? 周囲にとってはまさしくドリームマッチじゃないか」

 

「い、いや、あまり見られるのは……恥ずかしくないんですか?」

 

「良いモチベーションになるね」

 

 ポ、ポジティブだな、わたしにはそういう考え方は出来ない。

 

「え、えっと……」

 

「ミス静香……ユーにとっては恥ずかしいことなのかい?」

 

「そ、そうですね……」

 

「なにも恥ずかしがることはないさ」

 

「ええ?」

 

 功人さんが自らの胸をトントンと叩いてからまた両手を広げる。

 

「誇るべきだ、自らの力を……!」

 

「!」

 

「違うかい?」

 

「……違いますね」

 

「む?」

 

「自らの力をいたずらに誇示するべきではないと思います……!」

 

「‼」

 

 功人さんが目を見開く。

 

「……」

 

「………」

 

「…………」

 

 わたしと功人さんが見つめ合う。功人さんが腕を組んで頷きながら口を開く。

 

「……なるほど、それが日本のヒロイズムというわけか……」

 

「え?」

 

 話がデカくなっているな。

 

「非常に興味深い……」

 

 興味を持たれても。

 

「え、ええっとですね……」

 

「しかしだ、力の有り様を示すというのも大事なのではないかい?」

 

「は、はあ……」

 

 わたしは困惑する。日米スーパーヒーロー比較論争をするつもりはさらさらない。

 

「……ふっ、まあいいさ、ここは君の考えを尊重しよう」

 

 功人さんが端末らしきものを取り出し、なにやら操作する。

 

「あっ⁉」

 

 わたしたちの周囲を黒いドームのような空間が包囲する。

 

「……周りからは私たちのしていることが見えない。これで良いだろう?」

 

 いや、それはそれで問題があるような。

 

「う~ん……」

 

「なに、時間は取らせないさ。軽い手合わせといこうじゃないか」

 

「手合わせって言われても……何をすれば……」

 

「君の『四ヵ国語戦法』に興味がある……」

 

「え……?」

 

 興味を持たれても。なんか適当に思いついたフレーズを叫んでいるだけなのだけれど。

 

「あらためて……行くぞ!」

 

「ええっ⁉」

 

「はあっ!」

 

 功人さんがこちらに飛びかかってくる。マジか。とんだスーパーヒーローだな……などと考えている暇はない、迎撃しないと。

 

「や、焼き鳥!」

 

「うおっ⁉ な、なるほど、日本語は斬撃か……」

 

「フライドチキン!」

 

「ぬおっ⁉ 英語は銃撃……だが、懐に入った!」

 

「ジャージー!」

 

「どおっ⁉ 中国語は打撃……危ない、危ない、一旦距離を取って……」

 

「シャシュルィーク!」

 

「ふおっ⁉ ロシア語は爆撃か……だが、これですべてのパターンは出尽くした! あらためて懐に入らせてもらうよ!」

 

「ヤンニョムチキン!」

 

「ぐおっ⁉ か、韓国語……? な、なんという衝撃……き、聞いていないよ……」

 

 功人さんがわたしの発した衝撃波を喰らって仰向けに倒れる。勝手に四ヶ国を限定しないでくれ。世界は広いんだからさ……っていうか、これは介抱しないとならないのかな……わたしの昼休みを返して欲しい。

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