「ロ、ロボットとは⁉」
「見えているでしょう、目の前のあれのことです」
九十九くんが指を差した先には、全体的にグレーのカラーリングで、校舎の三階ほどの大きさで、二本足で立っていて、頭頂部に一本の長いアンテナのようなものが付いており、両手がトゲトゲな存在がいた。
「デ、デカ!」
わたしは普通に驚いてしまう。
「……」
「な、なにか?」
「……いや、極めてシンプルな感想ですね」
「そ、それはそうなるでしょう……」
このシチュエーションで他に一体どういう感想を述べるというんだ。
「ふむ……」
「な、なに?」
なにを感心しているんだ、少年。やめてくれ、感心されてロクなことはないぞ。
「いや、納得したのです」
「納得?」
あちゃ~納得しちゃったか。
「ええ」
「……もしかしなくても……わたしに対して?」
「そうです」
九十九くんが首を縦に振る。
「……どこに納得したの?」
「普通でしたら……ロボットと遭遇した瞬間にはまず、『なにあれ⁉』って言うものなんですよ。あなたはロボットの存在にさして疑問を抱かず、大きさに言及した」
「あ、ああ……」
変に耐性がついてしまっていたからだ。
「やはり、あなたは……」
「そんなことはありません!」
わたしは食い気味に否定する。九十九くんが困惑する。
「ま、まだ何も言っていませんが……」
「言わなくても良いから!」
九十九くんが話を続ける。
「あなたにとっては名誉なことかもしれませんよ?」
「わたしにとっては迷惑なことです!」
「そ、そうですか?」
「そうなんです!」
聞かなくても分かる。わたしは詳しいんだ。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………」
お互いに見つめ合って沈黙が続く。この時間が永遠に続いたって構わない。
「あなたは……」
「言わせないわよ!」
「いや、言わせてください……」
「やめてって!」
「むう……」
わたしの語気に九十九くんが面食らう。
「分かった⁉」
「しかし……」
「しかしもかかしもないわ!」
「あ、ああ……」
九十九くんが頷く。
「……分かってくれたようで嬉しいわ」
わたしはうんうんと頷く。
(……聴こえますか?)
「は、はあっ⁉」
わたしは頭を抑える。
(聴こえているようですね……)
「な、なに⁉ 頭の中に声が……⁉」
(あなたの脳内に直接語りかけています……)
「テ、テレパシー⁉」
(まあ、それに近いようなものです。厳密に言うと違いますが)
「厳密には違うの⁉」
(ええ、あなたの脳内回路に直接アクセスしました)
「の、脳内回路ってなによ⁉」
(分かりやすく言えば、コンピュータのようなものです)
「そ、そんなものを搭載した覚えはないわよ!」
(人間の脳には、わずかですが使われていない部分があります……)
「え、ええ……?」
(あなたはそれを解放することの出来る数少ない……)
「ああ! やめて! 普通に話して!」
わたしは九十九くんに向かって両手をブンブンと振る。
「よろしいのですか?」
「よろしいのですわよ……」
「おほん。ではあらためて……」
九十九くんは咳払いをひとつ入れる。
「はあ……」
もうどうにでもなれ。
「あなたはレアな存在だということです」
「レアって……」
肉の焼き方か。
「ウルトラレアと言って良いでしょう」
「あ、そうですか……」
誰かがわたしのことをガチャで引いたりするのか、上位存在か、上位存在なのに課金とかしているのか、知らんけど。
「言い換えれば……」
「え?」
別に言い換えなくてもいいけれど。
「搭乗者のライセンス保有者です」
「ラ、ライセンス保有者? わたしはノーマルレアな女子高生よ?」
突発的に人一倍強い霊感が備わっていて、選ばれし存在で、運命的な勇者で、スペースポリスマンの適性が高く、エクソシストの素質があるということを除けばだが。
「……それじゃあ、ロボット迎撃と参りましょう。ブラザー」
「りょ、僚友にされてしまった⁉」
わたしは両手で頭を抱える。