祓っていいとも!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(4)わたしは仮のパイロット

「さあ、さっさと撃退してしまいましょう!」

 

「え、えっと……」

 

「さあさあ!」

 

「う、う~ん……」

 

「レッツ……」

 

「い、いや……」

 

「ヒアウィーゴ―!」

 

「お断りします!」

 

「ええっ⁉」

 

 わたしのはっきりとした拒否に九十九くんは当惑する。わたしは頭を下げる。

 

「い、いや、ごめんなさい、いきなり大声を出しちゃって……はしたない……」

 

「そ、それは別に……断る? 拒否するということですか?」

 

「え、ええ」

 

 他に何があるというのだ。

 

「何故です?」

 

 九十九くんは不思議そうに首を傾げる。

 

「何故って……」

 

「いいですか? 貴女には搭乗者ライセンスがあるんですよ?」

 

「いや、そう言われてもだね……」

 

「なにか問題が?」

 

「いや、問題だらけでしょう……」

 

 わたしは自らの鼻の頭をポリポリと掻く。

 

「え?」

 

「まず、ライセンスを取得した覚えがないのだけれど……」

 

「ああ、そんなことですか」

 

「そ、そんなことって……」

 

「それなら大丈夫です」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「ええ、資格にふさわしい方には自動的に交付されるシステムですから」

 

「え、ええ?」

 

 なんだその勝手なシステムは。

 

「よろしいですね?」

 

「……お金とかは? 後から請求されても困るわよ」

 

「いえいえ、無料で交付しております」

 

「そ、そう……」

 

 やだ、いまどき良心的……って、そうじゃなくて。

 

「ではあらためて……よろしいでしょうか?」

 

「いや、ちょっと待って!」

 

「はい?」

 

「持ってないんだけど」

 

「何を?」

 

「いや、何をって……ライセンスよ。不携帯はマズいでしょう」

 

 わたしはポケットのあたりをポンポンと叩く。

 

「ああ、それも大丈夫です」

 

「ええ?」

 

 九十九くんはそっと自らの左胸あたりに手を添える。

 

「ライセンスは……それぞれの心の中にありますから……」

 

「ふざけんな!」

 

「は、はい?」

 

「い、いや、ごめんなさい……でも、勝手に人の心の中にわけのわからないものを……その、差し込んだりしないでくれる?」

 

「刻み込んだだけです」

 

「もっと質が悪いな」

 

 九十九くんがふっと微笑む。

 

「まあまあ……」

 

「まあまあじゃないわよ」

 

「……そろそろ、よろしいでしょうか?」

 

「よろしくないって……」

 

「他に問題が?」

 

「最も重要な問題があるわよ」

 

「? 伺いましょう」

 

「わたしに搭乗する気がさらさらないってこと!」

 

「⁉」

 

 九十九くんが愕然とする。わたしは首を傾げる。

 

「あ、あれ?」

 

「……」

 

「だ、大丈夫?」

 

「………」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「あ、失礼しました。あまりのことに思考回路がショート仕掛けておりました」

 

「あ、ああそうなの……」

 

 サイボーグ結構脆いな。

 

「……………」

 

 ロボットがゆっくりとこちらに接近してくる。わたしはそれを見て慌てる。

 

「ロ、ロボットが近づいてきているわ!」

 

「……ご提案があります」

 

「え?」

 

 わたしは九十九くんに視線を戻す。

 

「今回はあくまでも試乗という形を取ってみてはどうでしょうか?」

 

「し、試乗?」

 

「そうです、試しにです」

 

「た、試しに……」

 

「そうです、無料です!」

 

「た、無料……」

 

 タダというのに心が揺らいでしまった。

 

「いかがでしょう?」

 

「そ、それなら良いかな~?」

 

 九十九くんがニコっと笑う。

 

「では、搭乗!」

 

「ああ、しまった⁉ ……⁉」

 

 九十九くんが合図をすると、どこからともなく人型の巨大なロボットが現れて、両手でわたしたちをすくい上げ、内部に無理やり押し込む。

 

「……搭乗完了」

 

「こ、これは……⁉」

 

 シートに座ったわたしはキョロキョロと周囲を見回す。どうやらコックピットのようだということは分かった。

 

「ロボットです」

 

「え、ええっ⁉」

 

「機体名は……『ジャングル』にしておきましょうか」

 

「ジャ、ジャングル?」

 

「この険しいコンクリートジャングルにちなみました」

 

 九十九くんが新宿の街並みを指し示す。そう、コックピットから全周囲が見渡せるようになっているのだ。

 

「……!」

 

「あ、相手のロボットが迫ってくるわ!」

 

「問題ありません!」

 

「‼」

 

 相手ロボットが両腕を振り回して襲いかかってきたが、九十九くんは慣れた様子で手元の操縦桿を操作し、ジャングルにパンチを放たせる。鋭いパンチを喰らって、相手ロボットは粉々に破壊された。

 

「! な、なんというパワー……!」

 

「お褒めに預かり光栄です……」

 

 九十九くんが少し得意気な顔をする。

 

「…………!」

 

 相手ロボットが頭部だけで飛びかかってきた。わたしは驚く。

 

「あ、頭だけで⁉」

 

 相手ロボットの強烈な頭突きを喰らう。

 

「どわあっ⁉」

 

「きゃあっ⁉」

 

「……………!」

 

「ま、また攻撃しようとしている! あ、あれっ⁉」

 

「ぐっ……」

 

 衝撃をモロに受けたのか、九十九くんが操縦桿から手を離してしまっている。

 

「ど、どうすんのよ⁉」

 

「お、お任せします……」

 

「任せられても!」

 

「貴女なら出来ます!」

 

「え、ええい! ああっ⁉」

 

 わたしは目の前のコントロールパネルを手当たり次第に押してみた。すると、ジャングルの口から炎が噴射された。炎を喰らった相手ロボットは一瞬で燃え尽きた。

 

「お、お見事です! これからもよろしくお願いします!」

 

 九十九くんがパチパチと拍手してくれる。いや、わたしは仮のパイロットだって……。

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