ヤベぇ女、決定戦   作:泰然

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12話 砂上を統べる王、来日

 

 

 俺は師匠に頼んで、アメリカの練習風景を見たいと申し出た。早速飛行機に乗り、師匠と共にフロリダに旅立つ。

 アメリカに到着し、師匠の知り合いのトレーナーさんが居る家を訪問する。その場で自己紹介を済ませ、アメリカのトレセン学園へと足を踏み入れる。

 訪れると日本のトレセン学園も負けてはいないが、やはりアメリカの国土と比例して建物がまずデカい。

 早速ウマ娘達の練習を眺めようとコースに移ろうとした時、ある少女が取り囲まれているのが目に入る。

 その囲まれているのが、『アメリ』だ。

 

 

 

アメリ

「トレーニングしたいので、そこをどいてください!」

 

目付きの悪いウマ娘

「気に入らないんだよね〜……トレーナーに媚売りしてる真面目ちゃんが」

 

大柄なウマ娘

「トレーナーに愛想振りまいて尻尾振って……何がそんなに嬉しいわけ? そうだ! 動けせないように尻尾取ってあげるわ」

 

アメリ

「ちょ、ちょっと!? 何する気ですか?!」

 

 

 

 その二人のウマ娘が、アメリの尻尾を握りしめて引き千切ろうと引っ張り始めた。

 俺は思わず、その場を飛び出して二人の間に入ろうとした。

 

 

 

鬼門

「君達! やめろ!!」

 

目付きの悪いウマ娘

「離せこの野郎っ! 邪魔すんじゃねえ!!」

 

大柄なウマ娘

「何だコイツ……何言ってるか分かんねぇぞ! って、うわっ!?」

 

 

 

 引き離す力と引っ張る力によって、俺達はその場に尻餅をつく。お尻を擦っている最中、突然ガラの悪いウマ娘が走り出していく。

 

 

 

目付きの悪いウマ娘

「お、おい!? 逃げるぞ!」

 

大柄なウマ娘

「あ、あぁ……」

 

 

 

 何かを恐れて立ち去り、運良く自分が怪我をする事はなかった。そして彼女に向き直り、怪我が無いか確認する。

 

 

 

鬼門

「君、大丈夫? あっ!?」

 

アメリ

「アタシの……千切れちゃった……」

 

鬼門

「痛くない……?」

 

アメリ

「この人、英語喋れないのかな?」

 

鬼門

「やっぱり通じてない……。取り敢えず、保健室か何処かに……」

 

アメリ

「あっ……保健室、探してるのかな? それで手を繋いで――」

 

 

 

 俺が困っていると、師匠たちが駆け付けてくれたお陰で彼女に説明する事が出来た。

 俺は拙い英語で彼女を安心させ、無意識に保健室まで手を繋いでいた事を忘れていた。

 今思い出せば恥ずかしい話だが、必死だったから仕方がない。その度にアメリが俯向きながら歩いていた為、申し訳ないと思った。

 その後は練習風景を見学し、メモを取りながら取り組む。

 次の日、同じようにアメリカのトレセン学園の門を師匠と共に潜り、トレーニングコースを見学しながら要点をまとめていると、アメリが近づいてくる。指を絡めながら、モジモジしている。

 

 

 

鬼門

「昨日の……」

 

アメリ

「ありがとう……ございました」

 

鬼門

「日本語……?」

 

アメリ

「気持ちで……クッキー……焼きました」

 

 

 

 ポケットから取り出したのは、可愛らしい袋に閉じられたお菓子。それから昨日のお礼を言う為に、日本語を練習したのか言葉を紡ぎながら頭を下げてきた。

 なんとも健気で可愛らしい。

 そんな彼女の真っ直ぐな心に感動し、俺は手渡された袋と一緒にアメリの手を握る。

 

 

 

鬼門

「どういたしまして」

 

アメリ

「――ッ///」

 

 

 

 気持ちを伝えた瞬間、彼女はそそくさと逃げて行った。俺はやりすぎたと思い、嫌われたとその時は思った。その後、クッキーは美味しかったが舌に残るほど甘かった。

 また次の日、同じように指導の勉学に励んでいるとアメリが疾走しながら近付いてくる。

 

 

 

アメリ

「おはようございます! トレーナーさん!」

 

鬼門

「あれ……? 昨日より流暢……?」

 

アメリ

「頑張って勉強しました! どうですか? 凄いでしょ?」

 

鬼門

「凄いけど……この三日で覚えてるのは、大変だったろ?」

 

アメリ

「好きな人と会話できるなら、簡単でしょ?」

 

鬼門

「うん? そうか……?」

 

アメリ

「それより、名前聞いてない」

 

鬼門

「あぁ、鬼門 春暁。君は?」

 

アメリ

「アメリカンファラオ。その名をアメリカ全土に知らしめるウマ娘! 春暁はいつまでアメリカに居るの?」

 

鬼門

「もう下の名前……。一週間だから、あと四日だな」

 

アメリ

「そう……。……それじゃあ、アタシのトレーナーになってくれない?」

 

鬼門

「無理だろ……現実的に。それに俺じゃなくても、優秀なトレーナーは沢山いるだろ?」

 

アメリ

「春暁がいい。……ダメ?」

 

鬼門

「う〜ん……。そこまでアメリカのレースに興味ないしな。日本でここのレースが受けられない訳じゃないし、そもそも英語苦手だし」

 

アメリ

「わかった。二年後、日本に行く。それで文句ない?」

 

鬼門

「そう言われても、決めるのはアメリカンファラオだし」

 

アメリ

「アメリって呼んで。じゃあ、もう決めたから。二年後、楽しみにしてて」

 

鬼門

「お、おい!? ……本気、じゃないよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼門

「てな、具合ですね」

 

先輩

「お前……天然なのか?」

 

鬼門

「何がですか?」

 

先輩

「はぁ……。それよりもアメリカ三冠を達成した挙げ句、ブリーダーズカップまで勝った史上初のウマ娘を担当にするのか?」

 

鬼門

「う〜ん……」

 

ルドルフ

「まさかトレーナー君……。真面目に彼女を取り入れようなんて考えてないだろうね……」

 

鬼門

「ルドルフ!? いや……せっかく有言実行した訳だし、昔の好で教えるくらいなら……」

 

ルドルフ

「その結果、彼女を担当として迎い入れたらどうなる? これ以上は君の負担が増え、私たちの活動に支障が出るのでは?」

 

シリウス

「そうだぞ、仔犬。仮にもアメリカ育ちのウマ娘だ。手綱を握るにも、今のお前には荷が重すぎる」

 

鬼門

「シリウスが言うな……。それに、アメリが決める事だろ。あたかも俺の担当になる流れになってるけど、彼女の気持ちも考えてやれ」

 

ルドルフ

(トレーナー君がな……)

シリウス

(トレーナーがな……)

 

先輩

「入学式も終わったし、俺達は仕事に戻ろうぜ」

 

鬼門

「そうですね。二人共、また後でな」

 

ルドルフ

「……」

 

シリウス

「……」

 

 

 

 何故か二人はムスッとした表情で、俺を睨み付けている。早々に俺はトレーナー室に戻り、小言を言われる前に退却した。

 午前中の後半はトレーナー室に戻り、担当の体調に合わせてトレーニングメニューを組む。今頃新入生は、校内の案内と美浦寮と栗東寮の部屋決めで忙しいだろう。

 昼食の時間になり、新入生は帰る時間。昼食は購買で惣菜パンを食べる事が多いが、今日は久しぶりにカフェテリアでとる事にした。

 椅子から立ち上がると、廊下からデカい声が聞こえる。

 

 

アメリ

「春暁~? 春暁、どこ~?」

 

鬼門

「アイツ、ところ構わず呼んだりしてないよな……」

 

アメリ

「春暁~? あっ、春暁ー! 一緒にご飯食べよー?」

 

鬼門

「お前……もしかして、ずっと校内を俺の名前叫びながら来てないよな……?」

 

アメリ

「だって、春暁が何処にいるか分かんないじゃん。それより、お腹空いたからご飯食べよ~」

 

鬼門

「おいっ!? 引っ張るな!!」

 

 

 

 短い尻尾をゆらゆら揺らしながら、腕を組まれた状態で引き摺られる。

 

 

 

アメリ

「広くて綺麗……。いつもこんなカフェテリアで食べてるの?」

 

鬼門

「たまにな」

 

アメリ

「春暁は何食べるの?」

 

鬼門

「カレーかな」

 

アメリ

「じゃあ、アタシもカレーにする」

 

鬼門

「じゃあ、野菜定食」

 

アメリ

「何で!?」

 

 

 

 俺は野菜炒めを頼み、アメリも同じものを頼んだ。わざわざ同じ物を頼まんでも、いいだろう。

 空いている四人組の席に座り、早速ご飯を食べる。

 

 

 

アメリ

「いただきまーす! ……んっ、美味しい!」

 

鬼門

「ここのは何食べても美味しいんだ。その内、色々試してみたらどうだ?」

 

アメリ

「そうする!」

 

ルドルフ

「おやおや、トレーナー君。転入生徒と交流を深めるとは、感心だな……」

 

シリウス

「席が埋まっちまってよ……相席しても文句ねぇだろ?」

 

鬼門

「いや……席なら他にも――」

 

ルドルフ

相席……いいかな?」

 

鬼門

「あっ、はい……」

 

 

 

 何も悪い事はしていないはずなのに、二人の圧に押されながら相席を承諾する。

 

 

 

アメリ

「春暁、このギャングみたいなウマ娘は誰?」

 

鬼門

「お、おい!? お前……」

 

ルドルフ

「初対面への礼節は、アメリカでは不問とされているのかな?」

 

シリウス

「ここは日本だ。日本のルールには、しっかり従ってもらうぞ……カウガール?」

 

アメリ

「アタシ、そんな田舎者じゃない」

 

 

 

 何で二人は喧嘩腰なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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