親睦会が終了してから、夜になって寮で担当のライブを見て寛いでいるとシリウスが制服で押しかけて来た。その流れで、担当のライブ映像を一緒にチェックする。
シリウス
「映像確認も仔犬の仕事なのか? 恥ずかしくて、今後の振り付けも考えものだな」
鬼門
「仕事のうちだから仕方ないんだが……。シリウス……俺の膝に座る必要あるか?」
シリウス
「アンタの部屋が寒いんだ。もう少しくっつけ」
鬼門
「暖房効いてると思うんだが……」
シリウス
「アンタは私の湯たんぽ代わりだ。担当が風邪をひいて、困るのは仔犬だぞ」
鬼門
「そうなんだが……」
シリウス
「何だ、気恥ずかしいのか? 私の言動には、もう慣れたんじゃないのか?」
突発的な行動に慣れないだけだ。
正直、これだけ近くに顔があると緊張するんだよ。ましてやシリウスの顔立ちが、良すぎるのが悪い。なるべく体には触れないようにしているが、シリウスが背もたれをしてくる度に柔らかい感触と匂いに脳がヤラレル。
シリウス
「口数が少ないなぁ、仔犬。何に興奮するんだ?」
鬼門
「……」
揶揄われているという行為が透けて見えていれば平気だが、不意に女性らしさを感じると無理だ。
俺はシリウスの問いを無視し、悟られないように目線を逸らす。
シリウス
「覗かれるのが怖いのか? なら、これならどうだっ……」
鬼門
「お、おいっ――」
シリウスが後ろを振り向き、俺を押し倒してくる。
目をパチパチさせると、シリウスは歯を見せながら口を吊り上げている。お互い目を合わせ、風が窓を叩く音だけが響く。
シリウス
「やっぱりアンタは、揶揄い甲斐があるな。いつもの澄まし顔が嘘みたいだ。……これは親睦会での仕返しだ、目……閉じろ」
彼女の紅潮した頬に近付いてくる吐息が顔にかかり、脈が徐々に早くなる。
目を細め始めたシリウスの表情が、何とも艶めかしい。
シリウス
「んっ……///」
優しい感触が唇に伝わり、シリウスは息を漏らしながら長いキスを続ける。
十分といった表情で、シリウスは俺の胸に手を当てて名残惜しそうに離れた。シリウスは自分の唇をなぞり、ニヒルに笑う。
シリウス
「フフッ……。仔犬はもう少し、口臭に気を遣った方がいいぞ。まぁ、私はそんなの気にしないが」
鬼門
「シリウスっ……お前」
シリウス
「生徒とトレーナーの間柄……何てお説教は聞きたくない。これは、私なりの躾だ。飼い主が飼い犬に愛情を注ぐのは当然だろ?」
そう言いながら再度、顔を近付けてシリウスは口づけをしようとする。
その時、部屋をノックする音が響く。
ナカヤマ
「おーい、シリウス。いつまでトレーナー寮に居るんだ。姐さんに怒られるぜ――」
ナカヤマフェスタはノックしながらドアを開け、ウマ乗りになったシリウスと俺を交互に視線を泳がせる。
ナカヤマ
「何でウマ乗りになってんだ……」
シリウス
「気にすんな、今戻る。またな、仔犬」
シリウスは何事も無かったように振る舞い、部屋を出ていく。
俺は頭を抱えながら起き上がる。
鬼門
「悪ふざけにも程があるだろ……」
シリウス
「……」
ナカヤマ
「シリウス。アンタ、トレーナーと何してたんだい?」
シリウス
「……」
ナカヤマ
「おいっ」
シリウス
「――っ。……急にデカい声出すな、驚くだろ」
ナカヤマ
「アンタが上の空だからだろ。ウマ乗りにまでなって、何をしていたのかは想像に難くは無いが。シリウス、トレーナーと何かあったな?」
シリウス
「さぁな……。まぁ、今は気分がいい。この瞬間だけでも、余韻に浸りたい」
ナカヤマ
「はぁ……。そうかよ……」
あんな
愛らしくて堪らない。今にでも戻って、抱き締めてやりたい。あぁ、あの後だと感情が抑えきれない。
他の担当を出し抜いた事に、優越感を感じながら美浦寮に戻る。
好きだぞ、仔犬。お前の全ては、私の物だ。
ヘリオス
「ねぇ、パマちん。今、トレーナーと担当の間で鬼バズリしてる遊びがあるんだけど、聞きたい?」
パーマー
「へぇ……。どんな感じの?」
私の机を興奮気味に叩くヘリオス。
トレーナーと担当でバズってる遊び、何かあったかな。
ヘリオスは眼鏡を直す仕草をしながら、鼻を鳴らして答える。
ヘリオス
「トレーナーをおんぶすると、何かテンションぶち上げでっ、チルちゃうって話! 聞いた事ない?」
パーマー
「えぇと……。上がるのか落ち着くのか、どっち?」
ヘリオス
「兎に角、鬼アガリなんだって! 他の子に聞いても、「何か落ち着く……」ってそればっか。ねね、興味湧かん?」
パーマー
「ま、まぁ、確かに興味は出るけど……。ヘリオスはやってみたの?」
ヘリオス
「全然、ノータッチ」
パーマー
「やって無いのにそのテンション……。それじゃあ、私もトレーナーに頼んでみようかな……」
鬼門
「はぁ……」
パーマー
「トレーナー、どうしたの? 何か辛い事でもあった?」
鬼門
「いやぁ……シリウスと色々あってな」
パーマー
「それ、聞いてもいいやつ?」
鬼門
「う~ん……。いや、やめておく。今日のトレーニングで疲れただろうし、早めに上がって――」
俺が練習を切り上げようとした時、パーマーは腕を後ろに組んで足をクネらせている。
脚でも痒いのか。
鬼門
「どこか痒いのか?」
パーマー
「あのさ……。最近、トレーナーと担当で流行ってる遊びがあるんだけど、知らない?」
鬼門
「遊び? 聞いた事ないな」
パーマー
「なんか、私達がトレーナーをおんぶすると気持ちが落ち着く、みたいな話なんだけど……」
巷で流行ってるらしいが、全く聞いた事が無い。
どこからの情報なんだ、それ。
パーマーはおねだりするように、両手の指先をチョンチョンつつきながら上目遣いをする。
パーマー
「それを検証したくて、試してみたいなぁ……なんて」
鬼門
「パーマーに支障が無ければ、問題ないけど……」
パーマー
「ホントっ!? さっすが私のトレーナー! それじゃあ、はいっ」
パーマーは早速、しゃがみ込んでおんぶの体勢にはいる。
頻りに尻尾が揺れ動き、何故か喜んでいるように感じる。恥ずかしさを堪えながらパーマーに体を委ね、そっと触れる。
重さを感じないかのように、パーマーは俺を軽々持ち上げる。
鬼門
「ど、どうだ?」
パーマー
「あぁ、何か分かる気がする。でも、何だろう。これが当たり前に思えてきた……」
鬼門
「おぶってまだ数秒だぞ? そんなに良いものなのか?」
パーマー
「うん……。落ち着く……」
鬼門
「そ、そうか……。じゃあ、そろそろ降ろして――」
パーマー
「ねえ、トレーナー。このまま少し、散歩しようよ」
鬼門
「恥ずかしいから、降ろして欲しいんだけど……」
パーマー
「折角なんだから、色々試してみようよ。これで学園を練り歩くのも、新鮮だよ?」
この状態で学園を闊歩するのか。トレーナーとして、それはどうなのだろう。
半ば強引にパーマーに押し切られ、トレーニングコースを飛び出して学園の方に歩いて行く。
ヤバい、どうしよう……。やめ時が分かんない。
トレーナーをおんぶしてるだけなのに、何でこんなに興奮してるんだろ。トレーナーと密着して、呼吸がダイレクトに聞こえる。
やっぱり私、トンデモナイことしてる。汗とか大丈夫かな、トレーニングの後だし、臭いとか思われないかな。人の視線も多くなってきたし、恥ずかしくなってきた。でも、やめられない。
パーマー
「ハァ……ハァ……♡」
鬼門
「パ、パーマー……? 息切らしてるけど、大丈夫か?」
パーマー
「あぁ……全然。気にしなくていいよ、トレーナー……♡」
鬼門
「そ、そう……」
あぁ、どうしよう。何か走りたくなってきた……。
この時間も楽しみたいけど、トレーナーを乗せてどこかに走り出したい。
興奮を抑えながら葛藤していると、前の方から声を掛けられる。
ヘリオス
「ああっ! パマちん、早速やってんねえ!」
ケイミラ
「これが流行ってるトレノリ?」
パーマー
「あぁ……ヘリオスとミラクル……♡」
鬼門
「よ、よぉ……」
ケイミラ
「パーマー。おれにもトレーナーさんをおんぶさせてくれないかな? どんな感じか、おれも気になって」
パーマー
「えっ……」
何か心臓がズキズキする。ずっとこのままで居たい。
でも、ミラクルにもこの感じを味わって共有もしたい
けど……。
パーマー
「うぅ~……。ちょっとだけなら……」
鬼門
「そんなに降ろしたくないのか……?」
ケイミラ
「あはは、名残惜しいのも分かるけどね。それじゃあ……どうぞ、トレーナーさん」
鬼門
「ミラクルだと、妙に緊張するな……」
ケイミラ
「……」
鬼門
「ミラクル? おーい、ミラクルー?」
おれはトレーナーさんを乗せた瞬間、何かが呼び起こされた感覚を覚え、その場を走り出していた。
鬼門
「ミラクルっ!? どうしたんだ、ミラクルー?!」
ケイミラ
「おれ、ずっとこうしたかったような気がしますっ。トレーナーさんと、どこまでもっ」
気持ちが、抑えられない。
ずっと昔にこうしていたような、そんな情景さえ浮かんでくる。二人で、一つになった感覚。どこまでも走りだせそうな、トレーナーさんとどこまでも一緒に。
ケイミラ
「おれ、今が一番幸せですっ。レースで勝った時より、トレーナーさんと一緒に走っている、この興奮にっ。一瞬の奇跡にっ」
鬼門
「分かったからっ、分かったから止まってくれぇぇぇ」
おんぶして欲しいウマ娘(担当のみ)
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