ヤベぇ女、決定戦   作:泰然

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気まぐれ文章。


16話 勘違い

 

 

 今日はとある雑誌の撮影に呼ばれている。

 そして、俺の所属している事務所から、暫く前にマネージャーが就いた。

 大槻 神奈(おおつき かな)さん。メガネでショートカットの、如何にもデキる女性の代名詞。

 神奈さんはトレーナー室で、俺の隣で代わって取材を請ける。

 

 

 

大槻

「そうですね……。今、彼にその仕事を任せるのは少々コンセプトにそぐわないと思うのですが……。こんな丸坊主の男に、女性誌の……。ましてや、結婚雑誌の表紙に……。ほんっと、何してるんですか?」

 

鬼門

「面目ないです……」

 

大槻

「何で丸刈りに……。最近まで普通に伸ばしてたのに……。理由でもあるんですか?」

 

鬼門

「いや〜……。悔い改めようと……」

 

大槻

「はぁ……何ですかそれ。せめて相談してから刈り上げて下さい……」

 

 

 

 呆れたように神奈さんは首を横に振り、溜め息をついた。

 それを男性記者が宥める。

 

 

 

記者

「まぁ、まぁ……。それでも我々は、トレーナーさんの表紙を望んでいるので、私の熱意に免じて」

 

大槻

「……わかりました」

 

 

 

 神奈さんはヤレヤレと、天井を仰ぐ。

 そして、関係者からコンセプトの内容を説明され、少し戸惑う。

 男女のツーショットで、お互いの薬指に指輪を嵌めて笑顔の写真を撮る。

 一見、普通の一枚になるのだが正直ハードルが高い。

 

 

 

記者

「宣材写真で使うタキシードと指輪が、こちらになります」

 

 

 

 純白のタキシードに、控えめなダイヤモンドのリング。

 それをスッと机に置かれる。

 用意がいいのは分かるが、今必要か?

 

 

 

鬼門

「あの……。今見せる必要あります……?」

 

記者

「予め着用する物に、目を通しておいた方が分かりやすいと思いまして」

 

鬼門

「あぁ、なるほど。じゃあ、指のサイズも教えておいた方が――。意外とピッタリだな」

 

記者

「それは嬉しい誤算ですね。では、その指輪はお預けします。役になりきるのも大事ですので、暫くは嵌めていても問題は無いです」

 

 

 

 いやいや。こんな高い物、身に付けるとか精神が持たんのだが。ましてや借り物だし、落としたらどうすんだ。

 

 

 

鬼門

「これ……お値段の方は……」

 

記者

「百万円になります」

 

 

 

 尚更預けんなよ……。

 

 

 

大槻

「それで、相手の方はどうするのでしょうか?」

 

記者

「それなんですが……。専属モデルの方が、産休で出られないんですよ。デキ婚で撮影も考えたのですが、あまり良い印象は与えられないのではと思いまして……」

 

鬼門

「でしょうね」

 

大槻

「じゃあ、トレーナーさんの担当に頼むのは大丈夫ですか?」

 

記者

「名案ですね」

 

大槻

「それでは、その方針で――」

 

鬼門

「いやいや待って下さい!? ウチの担当に確認取らなくていいんですか?! そんな早く決めて……」

 

大槻

「寧ろ、喜んで請けるのが目に浮かびますけど。それに、彼女たちの方が撮影に慣れています。写真映えも見込めて、トレーナーさんのように一から説明する必要がありません」

 

鬼門

「それは……そうですけど……」

 

大槻

「人材確保にも時間が掛かります。これほど条件が揃うのは、早々ないです。仕事は円滑に……良いですか?」

 

鬼門

「はい……」

 

 

 

 釈然としないまま、打ち合わせが終わった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 昼時。担当が昼食をとっている頃、俺は薬指に嵌めた指輪を眺める。

 

 

 

鬼門

「結婚が趣旨の撮影はいいんだが……。担当と並んで撮るのがなぁ……。似つかわしくないというか、不揃いというか……」

 

 

 

 如何せん、あんな事があった後だし。

 シリウスはどういう意図で、キスをしたのか。誂うにしても、度が過ぎてるし。

 結婚願望が強い分、あの行動がウマ娘との結婚生活が脳裏に過る。

 あぁ……不純だよな。あの子らの気持ちも考えずに、勝手に想像するのは。

 俺は頭を抱えながら机を見る。

 

 

 

ルドルフ

「トレーナー君。昼食は済ませてしまっただろうか? お弁当を持参してね、一緒にどうだろう――。トレーナー君、その頭……」

 

鬼門

「あ、あぁ……。イメチェンだよ。それより、ルドルフの弁当食べたいなぁ……」

 

 

 

 俺は咄嗟に左手を隠し、バレないように作り笑いを浮かべる。

 

 

 

ルドルフ

「うん? 無理であれば、後日改めるが……。間が悪かったかな?」

 

鬼門

「い、いや〜。食べたいなぁ、ルドルフの弁当〜」

 

ルドルフ

「そうかっ。それでは、こっちの平机で食べよう」

 

 

 

 ルドルフは笑顔で小さく飛びながら、机に二つのお弁当を広げる。

 鼻歌を歌いながら尻尾を振り、豪華な箱弁を開けた。

 どんな豪盛な料理が出てくるのかと思ったが、家庭的な手料理ばかり。言っては悪いが、豪華な箱弁に似つかわしくないと思った。

 

 だが、どれも美味しそうだ。

 

 

 

ルドルフ

「今朝、作り過ぎてしまってね。一人で食べるには、味気ないと思ってトレーナー君にもお裾分けしようと――」

 

 

 

 ルドルフの声を遮って、騒がしくドアが開いた。

 

 

 

テイオー

「イター! カイチョー!」

 

 

 

 そのままの勢いでルドルフに抱き着き、顔に頬擦りをするテイオー。

 彼女はトウカイテイオー。ルドルフに憧れを抱いている天真爛漫な、中等部の少女。

 

 

 

テイオー

「何でこんな所にいるのさー……。ボクと一緒にカフェテリアで食べようよぉ……」

 

ルドルフ

「すまないな、テイオー。今日はトレーナー君と食事をする事になったんだ。また今度、予定を開けておくよ」

 

テイオー

「えぇ〜……今がいい! トレーナーばっかりズルーい!」

 

ルドルフ

「仕方ないな。トレーナー君、テイオーを交えて食事しても構わないだろうか?」

 

鬼門

「言っても聞かないだろうしな」

 

テイオー

「やったー!」

 

 

 

 ルドルフが用意した箸を二人に分け、俺は取り溜めしていた割り箸を準備して料理を堪能する。

 

 

 

テイオー

「う〜ん! このポテトサラダ、おいしい〜♪」

 

ルドルフ

「和辛子が入って美味しいだろう? 我ながら自信作だ」

 

鬼門

「この豚の角煮も美味いなぁ……」

 

ルドルフ

「――っ。それはトレーナー君の好みに合わせた物だ。甘過ぎていないだろうか……」

 

鬼門

「寧ろ完璧だ。教わりたいくらい」

 

ルドルフ

「ではっ、今度私が指南しよう」

 

 

 

 どの料理も完璧で、飽きることなく食べ切る事ができた。

 箸を置いて、両手を合わせる。

 

 

 

鬼門

「ふぅ……美味かった。ご馳走様――」

 

テイオー

「あー! トレーナー、薬指に指輪してる!」

 

 

 

 しまった。指輪のこと、すっかり忘れていた。

 

 見開いたルドルフの瞳は、徐々に鋭くなる。だが、ルドルフは何も言わずにトレーナー室を飛び出して行った。

 

 

 

ルドルフ

「――ッ」

 

鬼門

「えっ――。ルドルフ!?」

 

シリウス

「おーい、仔犬。暇潰しにゲームでも――。うおっ!?」

 

 

 

 入れ替わるようにシリウスがトレーナー室に入り、二人は危うくぶつかりそうになる。

 

 

 

シリウス

「なんだぁ……。おい、説明しろテイオー」

 

テイオー

「ワ、ワカンナイヨー……。トレーナーの指輪見て、走り出したから……」

 

シリウス

「指輪……?」

 

 

 

 怪訝な顔をしながら、シリウスは俺の方に歩き出す。

 そのまま俺の左腕を掴み、激昂した。

 

 

 

シリウス

「おいっ、コイツは何だっ!」

 

鬼門

「これは――」

 

 

 

 シリウスに指輪を嵌めている経緯を説明し、熱りは何とか冷めた。

 

 

 

シリウス

「チッ……紛らわしいんだよっ。くそっ……。焦るだろうがっ……

 

鬼門

「すまん……」

 

シリウス

「謝るくらいなら、アイツの所まで走って行ってこい」

 

鬼門

「追い付けんのだが……」

 

シリウス

「グダグダ言う前に行ってこいっ! ……何でアイツ、坊主なんだ?」

 

 

 

 尻に蹴りを入れられながらトレーナー室を飛び出し、ルドルフを探した。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフ

「自惚れとは、私は滑稽だな……」

 

 

 

 学園を飛び出して、私は何をしてるのか。予鈴が鳴るというのに……。

 空模様も私を映し出しているように、曇天だ。それに、分かり切っていた事だろう。あれだけの男性に、伴侶が付き添わないのは可笑しな話。

 私は、トレーナー君に()()()()()()()()()()

 ただ、それだけだ……。

 なのに、なぜ私はこんなに……割り切れないんだ。愛した人の隣が、私の認知しない女性が横を歩いてると想像しただけで……締め付けられる。

 

 胸が痛いよ、トレーナー君。

 

 

 

鬼門

「ルドルフッ!」

 

 

 

 追いかけて来てくれたのか、トレーナー君。

 だが、君の隣は私ではない。君は私ではなく、違う女性を選んだのだから。

 

 

 

ルドルフ

「来ないでくれっ……」

 

鬼門

「さっきのは誤解なんだっ……」

 

ルドルフ

「何が誤解なんだ……。そんな大層なダイヤの指輪をして、謝罪でもするつもりか? 煩わしかっただろう……。私が自作の料理を振る舞おうとした時、君は少し困惑していたな……」

 

鬼門

「それは……これを隠そうと――」

 

ルドルフ

「そうだね……。担当に悟られれば、言葉攻めに遭うのは必至だ。君を想うウマ娘は多い、隠したくなるのは当然だろう」

 

鬼門

「だからこれはっ――」

 

ルドルフ

「言い訳はよしてくれっ! ……トレーナー君が担当を気遣うのは、君の美徳だ。だが、それすら私を傷付けると何故気付かないっ……」

 

鬼門

「だから違う――」

 

ルドルフ

「担当を余所に婚約者を創り、我々を欺き、さぞ滑稽だっただろう。どれだけ私がっ、君を愛してるかっ、知る由も無く……。平静を装いながら、君に悟られまいと感情を抑えて、指導者と教え子の関係を維持してきた……」

 

鬼門

「……」

 

ルドルフ

「トレーナー君……。これ以上、私に構わないでくれ……。この関係のまま、君に優しくされたら……私は――」

 

鬼門

「  」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




トレーナーの次の行動でアンケート取ります。

トレーナーがルドルフにとった行動

  • 後ろから抱き締める
  • その場でダジャレを言う
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