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「やあ、鬼門君」
鬼門
「あっ、七海、さん……?」
そこにはグリーンのカーディガンを着たルドルフが立っていた。
ルドルフ
「さて、何処に行こうか?」
鬼門
「さて、じゃねえよ!? 何でルドルフがいんの?!」
ルドルフ
「ネタばらしをすると、七海とは私の事だよ。ナナ、ルナ……ルドルフッ!」
鬼門
「無理あるだろ……。お前、マッチングアプリなんてするのか?」
ルドルフ
「そうではないよ、たまたま君達の会話が聞こえてきたのさ。それで君が見切り発車で選ぶアプリと言えば、サイト上にあるものを選択すると思ってね。予測をしてインストールし、いいねを送った、という訳だよ」
鬼門
「でも、ルドルフ未成年じゃないの? 生徒会長として、規範はどうすんのよ?」
ルドルフ
「はぁ……。トレーナー君、私はもう実質的に成人済みだよ? 尚且つ君が選択したアプリは、高校生からでも行える。言わば、合法的に君と繋がれるのだよ!!」
鬼門
「なん、だと……」
ルドルフ
「故に、高校生は除くという項目には当てはまらないのだよ、トレーナー君」
鬼門
「今からレストランキャンセルしようかなぁ……」
ルドルフ
「そうか、私の為に……。行こうか、トレーナー君」
鬼門
「ルドルフの為じゃなくて、七海さんの為に用意したんだが……。てか、あの写真は?」
ルドルフ
「私が加工した写真。実質私だな」
鬼門
「ビールの売り子も嘘だし……。ルドルフって、あんな打ち込み方すんのか? メールベンケイみたいに」
ルドルフ
「時にはするものさ。相手に対して、失礼は避けたい。早速行くぞ、トレーナー君」
鬼門
「腕引っ張らんでくれる?!」
予約の時間まである為、一先ず映画館で時間を潰す事にした。
映画館に着き、どれを見るか選ぶ。今最新のものを見るか、お互い知っているものを見るか悩む。
考えてみれば、俺は騙されている訳で真剣に選ぶ必要があるのか。そう思って適当に映画を選択する。
鬼門
「キッズアニメでもいいか……」
ルドルフ
「トレーナー君、恋愛映画にしよう。幼くして別れ離れになった男女の恋愛、再会まで恋焦がれる二人の心情が描かれている。これが見たい!」
鬼門
「ルドルフ……。ただでさえ誰かに見られたら不味いんだぞ? お前が成人してても、淫行には変わんないからな?」
ルドルフ
「その時は、許嫁同士と答えれば解決だ。私は、それで一向に構わない///」
鬼門
「顔を染めながら答えるな!? 全く、こんな事が学園でバレでもしたら、理事長に懲戒処分だぞ」
ルドルフ
「そもそも論だがね、トレーナー君。君がマッチングアプリを使うから問題になっているんだぞ? 社会的に死にたくなければ、協力するのが手だと思うが?」
鬼門
「すんません……。何で俺、謝ってんだろ……」
そのまま押し切られる形で恋愛映画を鑑賞する事になり、チケットを買う。
一番上段の席を取り、始まる間に食べ物を購入する。
鬼門
「ルドルフはよく、映画館に来るのか?」
ルドルフ
「一人で映画鑑賞する場合は、歴史映画を好んで見る事が多い。人間同士の感情が読み取れて楽しいものだよ。今はトレーナー君と恋愛映画を見たい気分ではあるがね」
鬼門
「そうか。俺は何でも見るけど、好きな映画の続編は見に行く程度かな」
ルドルフ
「娯楽はその程度で十分。本来の楽しみ方は、そうできている」
鬼門
「一緒に並んでもらって悪いんだけど、手を繋ぐ必要は無いだろ?」
ルドルフ
「何を言う、お互いマッチした身なんだ。元来その様なものだろう。君とはこうして楽しむ事など、出来ないだろ?」
鬼門
「そうですか……。ルドルフは何か食べたいものはあるのか、ポップコーンとホットドッグとか」
ルドルフ
「私は好んで食べたりはしないが、せっかく来たのだからキャロットサンドを食してもいいかな?」
鬼門
「サンドイッチ系か……。俺も頼もうかな」
ルドルフ
「お揃いであれば、ますますカップルだな」
茶化されながら自分達の番に回り、サンドイッチを二人分注文した。そして丁度良く上映時間となり、番号に振られた館内に入る。
ルドルフ
「トレーナー君、上映前というのは妙に興奮したりしないか? 照明効果もあるかもしれないが」
鬼門
「確かにな、何でなんだろう?」
待っている間、映画の予告を見ながらルドルフと楽しむ。その合間にサンドイッチを頬張り、一口で半分無くなる。
ルドルフ
「トレーナー君、口にソースが付いてるぞ?」
鬼門
「どこだ?」
ルドルフ
「ジッとしていてくれ」
ポケットからハンカチを取り出し、俺の口元を拭いてくれた。ここでも彼女の気品の良さが出ている。
普通であれば教えるものだが、事前にハンカチを持つのは育ちの良さが垣間見える。
彼女と
自分でも気づかず、ルドルフを凝視する。
ルドルフ
「トレーナー君?」
鬼門
「あぁ、何でもない……」
ルドルフ
「そうか? あっ、そろそろ始まるな」
上映が開始し、画面を注視する。
流れとしてはルドルフが説明した通り、幼くして別れ離れになった男女の恋愛、再会まで恋焦がれる二人の心情。
逢っていない間の二人の気持ちが揺れ動く様を、主に描写として描かれている。主人公同士が共に違う異性を好きになるが、どこか相違があり、疑問になりながら一度付き合う話。
好き嫌いせずに見るものだと思った。
意外に面白いと思いながら、感傷に浸っていると俺の手を握ってくる。
鬼門
「どうした?」
ルドルフ
「トレーナー君は、お試しという形で付き合うような男か?」
鬼門
「好きな人がいれば、しないかなぁ」
ルドルフ
「そうか」
言い終えると、彼女は少し強く俺の手を握る。
その後はハッピーエンドを迎え、何事も無く上映は終了。お互いに感想を言い合い、恋愛談議に花を咲かせる。
ルドルフ
「いきなりだがね、トレーナー君。君は何故、結婚したいのか聞かせてくれないか?」
鬼門
「急だな……。まぁ、年齢的にもヤバいし、親にも催促されるから自然に意欲が湧いてきた感じかな」
ルドルフ
「そうか……。ネタバレをするとだね、君の担当達はトレーナー君の事を好意に思ってる」
鬼門
「えっ……。いやいやいや、そんな訳……」
ルドルフ
「信じないのは自由だが、私がアプリを駆使して何故、君に逢ったか、これをよく考えて欲しい」
鬼門
「……」
その後は会話も無く、映画館を出て行く。
学園に着き、ルドルフとは別れて寮へと入る。その最中、アプリにメッセージが来ている。
あのルドルフの言葉を聞いてから、アプリの人間と会うのは忍びない。
取り敢えず返信はせず、担当バ達の事をよく考える。好きであれば、真剣に向き合う必要がある。
教師と学生が恋愛をするのは、世間一般的にはある。日の目が当たらないだけで、多くの人は秘密裏に行っている。
それが俺にも来るとは思いもしないが。
兎に角、寝よう。
朝を迎え、今日は日曜日。
もう一つの休みを謳歌しようと、早めにご飯を食べる。そしてそのまま、エースの畑の手伝いをしようと準備する。
すると、何処からか声が微かにする。
エース
「トレーナーさーん! おーい!」
鬼門
「あれ? いつもは先に畑に行ってるはずなんだが……」
寮のドアを開けると、そこには作業着を着たエースが立っていた。
エース
「トレーナーさん、言いたい事があるんだけどよ……」
鬼門
「そんなに遅かったか? すまん、今行く――」
エース
「そうじゃねえ! 何で返事返さねえんだよ!!」
鬼門
「返事? 何の話……」
エース
「アプリだよアプリ! 今日の予定聞いてねえのかよ?!」
エースは俺が最近使っているマッチングアプリを見せてきた。
そこには見覚えのあるエミリという名前で登録された、画面が表示されていた。
内容は、日曜日にお出掛けしないか、という文章が書かれている。
鬼門
「待って、エミリってエース?」
エース
「そ、そうだよ。恥ずかしいアプリダウンロードして、いいねまで送ったんだよ!」
鬼門
「どうやって……?」