今日も皆の補給食を作りながら、午前中を過ごす。
パソコンで打ち込み作業をしていると、ミラクルとパーマーがトレーナー室に入ってくる。
パーマー
「ねぇ、トレーナー! この写真集、何!?」
鬼門
「うわぁ……。黒歴史本じゃん、トレーナーの日常を写した雑誌だよ……」
ケイミラ
「これ、売店で売ってたんです。誰が撮ったんですか?」
鬼門
「理事長がカメラマンを雇って、ちゃんとした資料を作成した感じかな。売店で売られてるのかぁ……嫌だな」
パーマー
「何で? カッコいいじゃん! 指示出してるトレーナーとか、ご飯食べてる写真とか」
鬼門
「無表情で写ってる物なんて、面白くないだろ」
ケイミラ
「そこが良いんです、黙々と作業してる姿にギャップを覚えるんですよ」
パーマー
「おっ、ミラクル分かってるね。この写真とか……あっ――」
鬼門
「おい、何で着替えてる写真が混じってんだよ!? 完全に隠し撮りじゃねぇか!!」
ケイミラ
「まぁ、こういうのもアリだよね……///」
パーマー
「きっとこれも必要だよ……うん///」
鬼門
「恥ずかしいから仕舞いなさい、これじゃあ何の撮影か分からんだろ……」
小休憩の為、二人は再び教室へと戻った。そして今日のお昼は、誰も訪れずに平和に過ごした。
お昼休憩に入り、私はさっき買ったトレーナーの雑誌を屋上に集まり、担当同士で共有する。
パーマー
「会長さん、これ買いました? トレーナーの雑誌」
ルドルフ
「パーマーも買ったのか。私も観賞用と使用用に買ったよ」
エース
「使う用って……。何に使うんだよ、あたしも買ったけどさ……」
シービー
「エースって、ムッツリだよね?」
エース
「ムッツリじゃねぇよ!? あたしは見て楽しむだけだし……///」
シリウス
「しかし、こんなギリギリな写真よく撮れたな。この絵も、他の需要を満たす用途にしか見えないだろ……」
ケイミラ
「そうですね、この腹筋とか心臓に悪いですよね」
ヒシアマ
「仕事風景を写したとは言ってるが、明らかにグラビア本だね……」
パーマー
「ヒシアマ姐さんの言う通り、これはちょっと刺激が強いような気も……」
ケイミラ
「ただ、これで終わらせるのは勿体ないと言うか、もっと増刊してトレーナーさんの記事を増やして欲しい面もあるかな」
ルドルフ
「ならば、我々で発行部数を増やそう。人気となれば、次も購買に並ぶのは間違いないはず」
シリウス
「決まりだな。私達だけで売り上げを伸ばす、これで仔犬のセクシーショットを合法的に見れる」
エース
「燃えてきたぜ!」
シービー
「取り敢えず、今売られてる雑誌を買い占めよう」
「「「「「「「オー!!」」」」」」」
次の日、突然理事長に呼び出され、困惑しながら部屋に入る。
怒られるのかと思いきや、彼女はいつもより朗らかに笑っていた。
鬼門
「理事長、今日はどういった呼び出しで……」
秋川
「報告ッ! 今回呼びだした経緯は、私が考案したトレーナーの日常雑誌が好評という報せだ。そこでッ! 前回の雑誌により、鬼門トレーナーの独占取材をして欲しいというウマ娘の要望が多数見受けられた」
鬼門
「アレ、そんなに売れたんですか?」
秋川
「重畳ッ! この結果を踏まえ、君にも臨時収入が増える。そして、要望に応える為に取材の了解を頂きたいのだが、色好い返事を貰えると有難い」
鬼門
「まぁ、悪い話ではないのでいいですけど……」
秋川
「感謝ッ! であれば早速、カメラマンの指示の下、作業に取り掛かってくれ。鬼門トレーナー、益々の活躍に期待する」
鬼門
「はい……頑張ります」
言われるがまま、カメラマンに連れ出されて様々なシチュエーションに沿って撮影がスタートする。
前の撮影は自然な感じを演出するものが多かったが、今回は全てカメラ目線に傾いている。
撮られるだけでも、かなりの体力を使う事が分かった。目元や口の開き具合など、かなり細かいダメ出しが多かった。
それはいいのだが、服一枚でスケスケの状態で誰が喜ぶのか分からない。
それに、至近距離でカメラに向かって行う撮影が多すぎる。慣れていない為、自分がナルシストになった気分で勝手に自己嫌悪に陥る。
そして当然、学園内での撮影の為、他の生徒に見られながらはキツイ。図書室でお腹を見せながらカメラに近付く時は、一番ヤバいと思った。
太陽が傾き、何だかんだ撮影は終わり、俺はトレーナー室で休憩しているとミラクルが入ってくる。
ミラクル
「お疲れ様、トレーナーさん。色んな所で撮影しているの、遠くで見てました」
鬼門
「いい大人がこんなことするなんて……。誰が俺なんかの写真集を見たいんだか、理解に苦しむ」
ミラクル
「おれは、少なくとも知らないトレーナーさんが見てみたいです。それを追体験として楽しむのが、本来の写真集ですから」
鬼門
「そうか……。それだったら、ミラクルの写真集も見てみたい気もするな」
ミラクル
「二人きりなら、いつでも見せますよ? トレーナーさんから言ってもらえれば」
そう言いながら近づいて、夕陽に照らされながら応えるミラクル。俺は思わず心臓が跳ね、誤魔化すように外を眺める。
鬼門
「じ、冗談はそれくらいにしておけ、ミラクルはもう少し自分を大切にした方がいいぞ?」
ミラクル
「大切にしたいから、おれはトレーナーさんに言ってるんです。昨日も、おれ達の分の補食を作ってくれました。そんなおれ達を大事に想ってくれる人と、一緒に居たいのは当然じゃないですか?」
鬼門
「あ、ありがとう……」
ミラクル
「ふふっ、どういたしまして」
そんなやり取りで気まずくなりつつ、夜一人で作業をしているとパーマーがトレーナー室を尋ねてくる。
パーマー
「やっほー、トレーナー。撮影お疲れ様、めっちゃカッコよかったよー!」
鬼門
「忘れようとしてたのに、思い出させないでくれ……」
パーマー
「あぁ、ごめんね。普通は恥ずかしいもんね、慣れた仕事でもないし」
鬼門
「モデルの仕事に対して、尊敬の念を抱く事になるとは思ってもみなかったよ……」
パーマー
「でも、あれ良かったよ。笑顔でジャンプしながら撮ってたやつ、すごいキラキラしてたよ!」
鬼門
「忘れてくれ……」
パーマー
「あれ~? 励ましてるんだけど……」
鬼門
「パーマーも一緒に撮ればわかるさ、あれがどれだけの地獄か。あっ、パーマーも一緒に撮らないか? そうすれば、少しでも俺の羞恥心も和らぐかも」
パーマー
「えっ!? いいよ、私は!? それに、並んであんな写真撮るなんて……///」
鬼門
「今二人で並んで撮ってみるか?」
パーマー
「えっ、いいの!?」
鬼門
「それくらい大丈夫だろ、減るものでもないし」
パーマー
「じ、じゃあ、失礼して……///」
二人で立ち姿のまま撮影をする。
パーマーはいつもとぎこちない笑顔でカメラに向かい、シャッターを下ろす。
パーマー
「……はずい」
鬼門
「よく撮れてるな、パーマー。ん? パーマー?」
パーマー
「あぁ、ごめん。ボウっとしてた……私は部屋に戻るよ」
鬼門
「おう、おやすみ」
私はトレーナ室を出て、暫く歩いてから先程撮った写真を眺める。
顔が近い、熱い、死んじゃいそう。
パーマー
「こんな写真、一生撮れないかも……。壁紙に貼って、毎日朝とかに見ればすぐ起きれるかも」
それに今日の撮影見てたけど、あんなの写真として出すのはあまりにハレンチ。
しかも、これも他の人が見るんだよね。見せたくないな、私だけに向けて欲しいな、あの笑顔。
兎に角、写真集が出るのが今からでも楽しみ。アレがあれば、いつでも解消できる。いつでもトレーナーを補給できる、簡単に。
ふふっ、楽しみだな。