選択肢を誤ると、トレーナーが死亡する可能性があります。
気分が乗らない時があるので、遅い更新になります。
今日も自主トレに励む我々。トレーナー君がモデルの仕事に専念している今、負担を掛けてはいけない。
ルドルフ
「ふぅ……。青天の下で行うトレーニングは、実に清々しい。よし! 各々、脚への負担を考慮して一先ず今日は――」
皆に呼び掛けて振り向くと、コース上の遠目にトレーナー君がゴールドシチーと会話をしている。
彼女も一人のウマ娘にして、モデルを掛け持ちをしている。見た限り、トレーナー君がメモを取りながら質問をしている。
仕事熱心な彼を見て、私は微笑みながら眺める。
二人の会話が終わり、私も戻ろうとした時、トレーナー君の周りに他のウマ娘が話しかけてきた。
遠目でしか分からないが、何やらトレーナー君と楽しく話をしている。
彼が頼られている事は嬉しいのだが、私はどこか
シリウス
「ルドルフ! 置いて行くぞ!」
ルドルフ
「あ、あぁ……。今行く」
遠くでシリウスに呼ばれた為、私は皆と着替えに戻る。
取り敢えず、先程の事は忘れて制服に着替える。すると、悟ったのかシリウスが私に話しかけてくる。
シリウス
「皇帝様とあろう者が、遠くを眺めて黄昏ているとは珍しい。トレーナーが居ないのがそんなに不安か?」
ルドルフ
「あぁ、そうかもしれない……」
シリウス
「ふん……自棄に素直だな。本当に大丈夫なのか?」
ルドルフ
「そこまで心配する必要はないさ。ただ、寒空の太陽に当てられただけ……かもしれない」
シリウス
「体調が悪ければすぐに言え、面倒でも起こされたら仔犬に連絡するのも億劫で仕方ない」
ルドルフ
「ふっ、済まないな」
午前中のトレーニングを終え、昼食をとろうとカフェテリアに向かった。いつものようにバランスの取れた食事を選択し、テーブルに座る。
食事に手を付けながら、あの時のトレーナー君を思い出していた。あの時の笑顔、誰にでも愛想がいい彼。それは一人のウマ娘として、とても誇らしく思う。
だが、なぜ今になってこれ程胸が
トレーナー君にも、他のウマ娘達とも良好な関係を保つのは至極当然。それでも、彼の笑顔が他のウマ娘に振り撒かれている事に、強く何かが反発している。
私は、ウマ娘の安寧を願う一人だと言うのに、何故だ。
私が下を向いている時、突然声を掛けられる。
鬼門
「疲れてるのか、ルドルフ?」
ルドルフ
「トレーナー君!? あぁ……いや、少し生徒会で考える事があってね。気にしないでくれ」
鬼門
「ただでさえ多忙なんだ、少しは息抜きでもしてみたらどうだ?」
ルドルフ
「私も好きでやっている事だ、心配は無用だよ。ところでトレーナー君、モデルの仕事に滞りは無いか?」
鬼門
「楽しくやれてるし、ゴールドシチーにもモデルのいろはを教わってたところだ」
ルドルフ
「それを遠目で確認していたよ、盗み見るつもりは無かったんだが。……その後、トレーナー君は他のウマ娘にも囲まれていたが、何を話していたんだ?」
鬼門
「あぁ、モデルの仕事について聞かれたんだ。どんな仕事内容か聞かれて、その場で話してた」
ルドルフ
「そ、そうか……。安心したよ」
鬼門
「安心? どういうこと?」
ルドルフ
「い、いや、こっちの話だ!? 聞き流してくれ……」
私は何に安心しているんだ、トレーナー君と他のウマ娘が話して危険な事なんて何もない。私は何を考えているんだ。
その後は楽しく会食をして、各々仕事場に戻った。
生徒会室で出し物の整理書類に許諾のサインを書いていると、ドアを叩く音が聞こえる。入ってきたのはトレーナー君だ。
ルドルフ
「トレーナー君、何か頼み事かな?」
鬼門
「いや、別件で仕事が入ってさ。次の自主トレーニングのメニュー表を持って来たんだ」
ルドルフ
「わざわざありがとう、トレーナー君。君の手を煩わせてしまって」
鬼門
「気負う必要はないさ。大人の俺を、もっと頼ったっていいんだぞ?」
ルドルフ
「そうだな……」
鬼門
「あと、少し手伝ってもらいたい事があるんだが……いいか?」
ルドルフ
「他でもないトレーナー君の願いだ、何でも引き受けよう」
鬼門
「ありがと。早速、申し訳ないけど買い物に付き合ってくれないか?」
私から誘う事はあるが、誘われるのは久しぶりだ。買い物の理由は、我々の補給食の買い出し。いつも見えない場所で、私達の為に試行錯誤し作られている。
これを断る理由はない、トレーナー君が私達の為を想っていると心が温かくなる。
ショッピングモールにやって来た我々は食材コーナーに足を運び、次々と買い物かごに入れる。食材から見ても、いつも私達の事を考えているのがよく分かる。
甘い物にはハチミツ、揃えられているのは農家さんの有機野菜。これだけ見れば、ウマ娘に対する愛情が感じ取れる。改めて、トレーナー君への恩返しの気持ちが沸々と湧いてくる。
ルドルフ
「トレーナー君、どれほど品物が必要かな?」
鬼門
「みんなよく食べてくれるから、もう少し欲しいかな。後は調味料とかも切らしてたし……」
ルドルフ
「なら、私が食材を探そう。トレーナー君は調味料を担当すれば、時間も短縮できるだろう」
鬼門
「そうだな。それじゃあ、二手に分かれよう」
私はカートに籠をもう一つ載せ、注文された食材を次々に入れていく。隙間を生まないように、食品を丁寧に詰める。
言われた物を買い揃え、トレーナー君の下へとカート走らせる。
ルドルフ
「トレーナー君、戻っ――」
「ねぇ、いいでしょ。写真撮らせてくれるだけでいいから~」
「上の階に、プリクラもあるんで一緒に撮りましょうよう~」
鬼門
「いや、買い物中だし……相手も待たせてるんで」
その女性はトレーナー君の衣服を掴みながら、催促している光景が目に入る。断ろうとしても、一向に引く気配がない。ここは穏便に片付けようと、彼女達に近寄る。
ルドルフ
「すまない、彼は私のトレーナーだ。私用で今回は、このような行動は遠慮して頂きたい」
「えっ、ルドルフだ!? マジで生で見れた」
「写真撮っていい?」
こいつらは他の有名人であれば誰でもいいのか、不躾にも見知らぬ人物を呼び捨てとは。不快だな。
ルドルフ
「即刻去れ、二度と私に顔を見せるな……」
「えぇ……怖……。帰ろ帰ろ」
「う、うん……」
鬼門
「助かったよ、ルドルフ。絡まれて困ってたんだ」
ルドルフ
「すまない、こんな事態を予測できないとは。上に立つ者として、失格だな」
鬼門
「お陰で助かったし、大丈夫だよ。買うものは揃ったから、早く帰ろ」
ルドルフ
「あぁ」
学園へと帰路を辿り、陽が傾き始めていた。そんな中、あの時の失態を思い返し、トレーナー君の身の安全を確保できるか考えていた。
我が家柄であれば、匿う事は容易い。だが、そのような行為にトレーナー君は納得してはくれないだろう。
思考する中、ある事が頭を過ぎる。
ルドルフ
「トレーナー君。モデルの傍ら、不審人物との遭遇に対する有効手段を思いついたよ」
鬼門
「おっ、何だ?」
ルドルフ
「君の待ち受け画面に、私の写真を載せるのはどうだろう? 烏滸がましいが、私はそれなりに名の通ったウマ娘だ。写真とシンボリの名を出せば、引いてくれる可能性もある」
鬼門
「ルドルフはそれで大丈夫? そんな事されたら、悪い気分にならない?」
ルドルフ
「君を守れるなら本望だよ。それに、君に頭の悪い動物が寄るのも防げる」
鬼門
「ん? 何か言った?」
ルドルフ
「何でもないさ。それじゃあ、君に写真を送るよ」
これはあくまで防御手段、何も疚しい気持ちなどない。彼を守れるのであれば、何も心配はいらない。
そう、ただトレーナーを私が導くだけ。これが私の、使命だ。