戦士咆哮シンフォギアK【加筆修正作業中】   作:名無しのごんべい

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 みんな大好き面白杉田博士。



戦士たちの激闘編
第十六話 「帰還」


 

 米国、某所。

 何もない、ただ舗装された道路だけがある道を、延々とバイクで走る1人の少年がいた。

 彼の他には、誰もいない。

 遠い前を見ても誰もおらず、遥か後ろを振り返っても人一人いない。

 完璧な、彼一人の空間だった。

 

「まるで世界で人間が俺一人になったような感覚だな」

 

 彼の呟きに応えるものも、誰もいない。

 再びバイクを走らせながら、彼は溜息を吐いた。

 

「……一人旅っていうのは、寂しいもんだな」

 

 彼……五代 雅人は、今日も一人で走り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雅人がバイク、『ビートチェイサー』を手に入れてから早1ヶ月。当てのないたびに既に心が折れそうになっていた雅人。

 

「よ~くわかった。俺に一人旅は無理だな。1年前とかならどうにでもなったんだろうけど、ここ何か月かはずっと誰かと一緒にいたからな……」

 

 寂しさを紛らわせるための独り言も、全くの効果なし。

 逆に一人と認識してしまうためさらに悪化してしまう。

 

「……戦士は寂しいと死んじまうんだよ~」

 

 シ~…………ン。

 

「…………このストレスは全部お前らにぶつけてやるよ」

 

 バイクを止め、雅人が睨む先にいるのは無数のノイズ。

 道路を埋めるように進むノイズを睨みながら、雅人はあの戦いですっかり馴染んでしまったフレーズを口にする。

 

「変身!!」

 

 それと同時に雅人の姿が変わっていき、現れたのは紅蓮の鎧を纏う戦士。

 

『ちょうどいい……ようやくコツが掴めてきたところなんだ。実験台になってもらう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、ノイズが観測されたその場所から半径3キロに及ぶ大爆発が観測された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「米国某所で謎の爆発! 何かの実験か!? ……ねぇ。こんなの見て意味あるの~? み~く~?」

 

「響は全然新聞読まないんだから、ちょっとは読んどいたほうがいいよ?」

 

 リディアン音楽院仮生徒寮。

 そこで立花 響は唸りながら親友の小日向 未来を睨んでいた。

 

「こんなの見ても面白くないよ~~!!」

 

「文句言わない。音楽誌とかファッション誌とかはずっと読んでるんだから新聞くらい読めるでしょ?」

 

「む~り~だ~よ~! 第一、その2つと新聞を一緒にするのは失礼だよ!」

 

「そうね。新聞に失礼だったわね」

 

「ち~が~う~! そっちじゃな~い!」

 

 あの事件から1ヶ月。

 今だに壊れた町は復旧作業中だが、それでもいろんなものが元通りになりつつある。

 立花 響と小日向 未来もそうだ。

 

 雅人が旅に出てから1週間後、未来がノイズに襲われる事件があった。

 その直前で響たちの外出禁止が解除されていたので、翼とクリスを含む3人は急いで出動。

 フィーネとの戦いの際に行った限定解除……エクスドライブモードの影響から強化されたギアの一撃をもって、未来に迫っていたノイズを殲滅。

 未来は涙を流しながら響との再会の喜びを分かち合った。(余談だが、泣きながら駆けよってきた未来を抱きしめた響は、そのまま未来に胸部で駄々っ子パンチを連打され別の意味で涙目になった)(さらに余談だが雅人が実は響たちの生存を知っていたことがここで判明。帰ってきたら説教だ。とは未来の談)

 

 それからはたまにノイズの襲撃で響たちが出動するが、特に怪我もなく帰ってくるのでいつも未来は胸を撫で下ろしている。

 

「それよりさ! 今度のライブ、楽しみだよね~!」

 

「翼さんと……たしか、マリア・カデンツァヴナ・イブの一夜限りのスペシャルコンビでしょ? 響だけじゃなくてみんな楽しみにしてるよ」

 

「未来も?」

 

「私も。この前みたいに寝坊しないでね?」

 

「が、頑張ります!」

 

 そこでいったん話が途切れる。

 2人が考えているのは、同じ人物の事。

 

「雅人君……呼んだら来るかな?」

 

「響は連絡先知ってるの?」

 

「あ……」

 

「ダメじゃない……」

 

 2人にとって五代 雅人という存在は大きなものになっていた。

 いつか響が称した様に、響にとって未来は「あったかい陽だまり」であり、雅人は「響と未来を包み込んで護ってくれる家」のように思っていた。

 その根底には、響が雅人をヒーローのように思っていると言う信頼があった。

 

 響と雅人の初対面はまさにそれだ。

 

 ピンチの子供を助けに来たヒーロー。

 響が雅人のことを仮面ライダーみたいだといったのも、これが理由である。

 

 未来にとっての雅人は、気の合う友人であり、放っておけない人であり、少し気になる異性である。

 響と違い、雅人が戦う姿を未来は見たことがない。フィーネと雅人の戦闘の時は、直前のノイズの大量発生のせいでモニターが乱れていて見ることが叶わなかったからだ。

 リディアンが襲撃された際も、戦っていることは知っていたが避難誘導に必死で見ている余裕がなかった。

 

 2人の雅人へのイメージは違うが、それでも2人の共通の大事な友人であることには変わりない。

 

「早く会いたいね」

 

「うん」

 

 寂しさを感じているのは、2人も同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8月のある日。

 いつも通りの一人旅を続ける雅人。

 

 そんな雅人のもとに、一つの連絡が来た。

 

『久しぶりだな! 雅人!』

 

「おっさん? どうしたんだよ急に」

 

 弦十郎からの唐突な連絡に驚く雅人。日本を旅立ってから1ヶ月、誰かから連絡が来たのは初めてのことである。

 

『実は今度翼のライブがあるんだが……』

 

「それなら知ってるよ。世界中で話題になってるのはおっさんも知ってるだろ?」

 

 弦十郎が言うのは2ヶ月後に開催されるスペシャルライブ。

 日本を代表するアーティスト、風鳴 翼とデビューから1ヶ月の間という異例の速さで米国チャートの上位にランクインし、近いうちにチャート1位に上り詰めるだろうと言われているマリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 この2人が一夜限りのユニットを組むスペシャルライブが2ヶ月後に開催されると告知があったのだ。

 

『そうか。それならその日』

 

『おお~雅人君だ! 久しぶり~!』

 

『ほんとだ! 今どこにいるの!?』

 

 弦十郎が何か言おうとした瞬間、割り込むように響が入り、それに続いて未来も来る。

 

『てめ、クウガ! てめぇが勝手にいなくなるからこっちは大変だったんだぞ!』

 

『せめて行くときに何か一言言ってほしかったものだ。急に居なくなってはさすがの私も心配する』

 

 それに続いてクリス、そして今話題に出していた翼も入る。

 4人が好きかっていうので通信越しの雅人にはなんて言っているのか全く分からなくなっている。

 

『お前らぁ!! 静かにしろぉ!!』

 

 弦十郎の一喝が響き、うるさかった通信も静かになる。

 

「……もういいか?」

 

『ああ。さっきの話の続きだ。

 2ヶ月後に開催されるスペシャルライブ、その日の前日に『ソロモンの杖』の移送日が決定してしまってな。できればお前にも護衛を頼みたい』

 

「杖を? 二課で持っておくんじゃないのか?」

 

『ああ。米国と共同で研究することが決まってな。

 護衛には響君とクリス君の二人に頼むつもりだったんだが、お前もいた方が安心だと思ってな』

 

「その2人だけで十分じゃないか? ……まぁ了解した。間に合うように戻るよ」

 

『うむ。助かる』

 

 そう言って弦十郎との会話が終わり、雅人は通信を切ろうとする。

 

『ちょ~~っとまった~~!!』

 

 そこを響が止めに入る

 

『なんで切ろうとするの!? 久しぶりだしもっとお話ししようよ!』

 

「お話って……何話すんだ?」

 

『え~~っと……お話?』

 

 通信越しにその場にいた全員がずっこける音が聞こえた。

 

「……切っていいか?」

 

『あ~~待って待って! ごめんなさい! 急だったから何も思いつかなかったんだよぉ~~!』

 

 響のなさけない声が通信越しに雅人に届く。

 響にとって、今回雅人と連絡が取れたのは本当に急なことだったで何も話題を用意していなかった。

 そんな響に翼が助け船を出す。

 

『お互いの近況報告でもしてみればどうだ? 一月も離れていたのだ、積もる話もある』

 

「……どうでもいいけど風鳴さん口調変わった?」

 

『そんなことはない』

 

 それから雅人と響たちはお互いのことを話していく。

 

『南米国をまわって今は米国? 地球一周でもする気なの?』

 

「行先を決めずに進んでいたらいつの間にかな。ノイズが現れない限りは平和だよ。

 そっちは何か変わったことがったか?」

 

『クリスちゃんがリディアンに通うことになりました~!!』

 

『あ! バカおま!!』

 

「あの雪音さんがか? ……」

 

『おい! その沈黙は何だ!! 今度会った時覚えとけよ!!』

 

「他は何かあったのか?」

 

『聞けよ!!』

 

『あとは、リディアンが新校舎に移ったのと翼さんが海外進出を考えてるってくらいかな』

 

『お、おい小日向……』

 

「風鳴さんが?」

 

『考えているだけだ。すべてはノイズを倒した後だ』

 

『雅人君はどこを回ったの?』

 

「この前大渓谷を見てきたよ。まあ2回目なんだけどな」

 

『えぇ~いいなぁ~!』

 

『ナイアの滝は!? 行ったのなら感想聞かせて!』

 

「やけに食いつくな未来。行ったけどすごかったぞ」

 

『……私も今度ついていこうかな』

 

『未来が行くなら私もー!』

 

『あたしはパスだ。このバカとあいつも一緒だなんて御免だね』

 

『え~行こうよクリスちゃ~ん!!』

 

『だぁ~~もう! 抱き付いてくんな!!』

 

『お前ら何時まで話してるんだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二課との通信を終え、雅人は再び冒険を続ける。

 そんな雅人が、一人の科学者と出会う。

 

「五代 雅人さん……いえ、戦士「クウガ」……ですね?」

 

「……あんたは?」

 

 銀髪にメガネ、そして白衣を着たいかにも科学者といった風な男がメガネの位置を直しながら雅人に話しかけてきた。

 

「失礼。僕はジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。ある人物とともに聖遺物の研究をしている者です。気軽にウェルとでも呼んでください」

 

 この出会いが、後に目覚めさせてはならない究極を目覚めさせることとなる。

 

 そのことを、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 9月下旬。

 ビートチェイサーを押しながら空港から出てくる雅人の姿が、そこにあった。

 弦十郎に言われたとおり、『ソロモンの杖』の移送の護衛をするための一時帰国である。

 その雅人の隣には、彼が旅の途中で出会った科学者……ウェルの姿があった。

 

「日本はいいところですね。米国のような美意識もなく雑多に詰め込んだかのような都市とは違って趣がある。ここなら僕の研究も捗りそうです」

 

「……あんまり褒めるとワザとらしく聞こえるぞ」

 

「おやおや、嫌われていますねぇ」

 

「どうも、あんたは信用しちゃいけないと感じてしまうんだよ……悪いな」

 

「いえいえ、偶にあることです。

 よく知り合いからも「胡散臭い」だのなんだのと言われていますからね」

 

 自嘲気味に笑うウェル。

 雅人としても、ここまで1ヶ月間ウェルと行動を共にしてきたが、何故ウェルのことを信用できないのか判断できずにいた。

 人柄もよく、爽やかな笑顔は多くの人を惹きつけるものだろう。

 少し度が過ぎた言動をとることもあるが、それは科学者ということもあって仕方ないところもある。

 気の利くところもあるし、その職業のことも相まって博識でもある。

 人として好感がもてるところも多々あり、事実、雅人もウェルという人物のことが気に入っている。

 

 だが、それでも雅人の奥の奥、本能とでもいうべき部分がウェルへの警戒を解くなと訴えてきていた。

 

 雅人の直感はよく当たる。

 虫の知らせとでもいうべきか、悪い予感というものは雅人自身のことに限っては旅暮らしで鍛えられたことも相まって外れることがあまりない。

 そのせいで、雅人は「ウェルに好意的な態度をとっているが信用や信頼は欠片もしていない」というよくわからない対応をとっていた。

 

「では、僕は現地の研究所の方に行かなければならないのでこの辺で。

 貴方との旅はなかなか楽しかったですよ。また機会があれば……」

 

「ああ。またな」

 

 お互いに別れを告げて逆の方向へ進む。

 

「……2ヶ月……いや、3ヶ月ぶりか。みんな元気にしてるかな?」

 

「元気ですよ。元気すぎて僕も司令も振り回されてます」

 

「……いきなり後ろから来るのはやめてください緒川さん」

 

 声が聞こえた方に雅人が振り向くと、そこにはいつもの黒いスーツを着込んだ慎次がいた。

 

「見違えましたね。見るだけでわかります。

 随分強くなったんですね」

 

「……以前のように、俺だけ何も出来ないのは嫌だったんで。

 響たちに負けないように、いつか彼女たちを追い越していけるように頑張りましたよ」

 

「響さんたちは、自分たちよりも雅人君の方が強いと思っているみたいですけどね。必死に貴方に追いつくために鍛えていましたよ」

 

「……どうして俺の方が強いと思ったんだ? 買被りもいいところだ」

 

「……櫻井女史が最後に爆弾を残していきまして……」

 

「……あの人は……」

 

 軽い近況報告も交えながら歩く雅人と慎次。

 粗方情報の交換も終わったところで、本題に入る。

 

「杖の移送……いつになりました?」

 

「以前伝えた時と変わっていませんよ。メンバーも変わらず貴方を含めた4人です。

 響さんの成長ぶりを見ればあなたも驚くでしょうね」

 

「響の成長スピードは異常でしたからね。3ヶ月もあれば強くなるのも当たり前でしょう。……でもなぁ」

 

「やっぱり、割り切れませんよね。僕も響さんの成長スピードには軽い嫉妬にも似た感情を覚えましたしね」

 

「俺が5年かけて師匠に叩き込まれた技術を、あいつはほぼ1ヶ月で越えていきましたしね。嫉妬するなって方が無理ですよ」

 

 『ソロモンの杖』の話題だったのが、いつの間にか響の話題に変わっていた。

 というのも、雅人や慎次が言った通り響の成長スピードは異例を通り越して異常の域である。

 7歳のころからクウガとしての修業を始めた雅人の努力をあざ笑うかのように、わずか1ヶ月の戦闘経験と1週間ほどの訓練で雅人に並び、そしてその後の数回の戦闘でついに雅人を超えてしまったのだ。

 もちろんそれはシンフォギアを纏った状態での話であり、生身での戦闘なら雅人の方に分があるだろう。

 

 それがわかっていたとしても、雅人は響に嫉妬を抱くことを抑えられない。

 

(なんだかなぁ……友達に嫉妬するってのも、器が小さいっていうか……。師匠だったらこんな風に思わないんだろうなぁ)

 

 一人旅を始めてから、雅人は雄介を思い浮かべることが多くなっていた。

 雄介だったこうする、雄介ならこうした。そう思考することが増え、自身と雄介を比べることが日増しに多くなっていた。

 

(……こんなことじゃ、いつまでたっても師匠の代わりになんか……)

 

「? どうしました? 雅人君」

 

「え? ああ、何でもないです」

 

 いつの間にか思考に耽っていた雅人は、慎次の声で我に返る。

 

「では行きましょう。響さんたちも首を長くして待っていますよ」

 

「……そうですね。行きますか」

 

 そう言って慎次がどこから取り出したのかフルフェイスのヘルメットをかぶり雅人の方を向く。

 それに苦笑しながら雅人もヘルメットをかぶり、ビートチェイサーに乗り、その後ろに慎次が乗る。

 

 2人を乗せたビートチェイサーは軽快な音を鳴らしながら青空の下を走り出した。

 

 

 

 

 

 





 冒険中のお話でした。
 と言ってもたった一話で終わる修行編、あんまり長くしてもネタがないのです。

 杉田……もとい、ウェル博士はネコをかぶるのが得意。爽やかイケメンスマイルだけど裏にある狂気を感じさせない演技。作者も最初は騙されました。

 そしてここでは雅人君と普通にお話ししている未来さんですが……。

 この3ヶ月間、雅人君は必死に修行しました。新しい力もちゃんと手に入れましたが……それでもXDモードの響たちと比べてしまって修行すればするほど響たちへの嫉妬が大きくなっていく状況です。因みに了子さんが残していった爆弾のせいで響たちは雅人君の方が強いと思ってます。爆弾の内容はそのうち本編で。

 ……ビートチェイサーの初の二人乗りが緒川さんってどうなの? 響か未来を後ろにのっけてラブコメさせたかったのに……。




 次回予告!


 狂気を伴って戦士は帰還した。

 欠けた月が睥睨する中、走る鉄の箱は雑音によって妨害される。

 新たな力を発揮する戦士は、より強くなった戦姫を前に決意を固める。

 次回、第十七話 『雨中』

 降り注ぐ雨は更なる雑音を呼び、戦いをより困難なモノへと変えていく。

 曇天に覆われた空の下、黄金の輝きが稲妻となって雑音をかき消す。

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