戦士咆哮シンフォギアK【加筆修正作業中】 作:名無しのごんべい
スパン!
と、気持ちのいい音が廊下を響き渡る。
特異災害対策機動部二課仮設本部廊下。
そこで雅人は再会した瞬間に未来に思いっきりビンタされていた。
「なんでビンタしたか……わかる? 雅人君」
「……悪い、わからん」
一緒に再会を喜ぼうとしていた響とその響に引っ張られてきたクリス、そしてその二人の後ろからついて来ていた翼も目を丸くしながら状況を眺める。
雅人と共に帰ってきた慎次も驚いており、いつもの微笑みが若干引き攣っている。
「……雅人君、響が生きてたの知ってたでしょ?」
「あ、ああ」
「うん。私がどれだけ……どれだけ心配したかわかってる? 雅人君だってそうだよ。急に冒険に行くとか言って、そっちからは全く連絡よこさないんだから……心配する方の身にもなってよ……」
「……ごめん、悪かった」
それは、まぎれもない未来の本音だった。
彼女は装者ではない。
それ故にいつも響たちが戦いに出る時は見送るしかできない。
そのことを彼女はいつも悔やんでいるが、それを表に出したことはなかった。
だが、この3ヶ月間雅人は源十郎が連絡した以外自分からは全く連絡を入れなかった。
遠くへ行ってしまった雅人のことを未来はいつも心配していた。故の今回のビンタ。
心配をかけ続けた雅人へのお仕置きである。
「携帯、確か持ってないんだよね?」
「あ、ああ。おっさんとの連絡ならビートチェイサーに着いた通信機能で事足りるしな」
「なら決まりね。響」
「い、いえすさー!!」
未来の迫力に思わず敬礼をしながら答える響。
「今度雅人君の携帯を見に行くわよ」
「いえすさー!!」
「あと、sirは男性につけるもので女性はma’amよ。今日帰ったら勉強ね」
「い、いえすまむぅッ!!」
完全なとばっちりを受けた響は涙を流しながら返事をした。
そこで慎次が声を上げる。
「ではみなさん! 再会を喜ぶのもいいですが司令がお待ちです。司令室まで行きましょう」
その慎次の言葉に続いて呆れたように嘆息したクリスが続き、微笑を浮かべながら翼も続く。
「あ、待って雅人君!」
雅人も続こうと歩き出した瞬間、今まで隅でさめざめと泣いていた響に呼び止められる。
「どうした?」
「未来、行くよ!」
「う、うん! せーの!」
「「おかえり!」」
響と未来のいきなりの言葉に面を食らう雅人。
2人はニコニコと雅人の方を見ながら返事を待っている。
雅人はどう応えようか迷い、
「……おう」
とだけ答えて逃げるように慎次たちの後を追った。
「おう雅人! おかえり!」
司令室に入った雅人を迎えたのは、またしてもその言葉だった。
「ああ、久しぶり、おっさん」
それだけ答え、雅人は壁にもたれて腕を組み、目を瞑る。
その態度に怪訝な顔をする弦十郎だが、すぐに気を取り直す。
響たちが遅れて入ってくるのを確認し、弦十郎は改めて今回の任務に就いて話し出す。
「今回の任務は、『ソロモンの杖』の移送だ。誰の目にもつかないように夜中に開始する。時刻は深夜2時、メンバーは響君、クリス君、雅人、友里の4人だ。現地で『ソロモンの杖』は米国連邦聖遺物研究機関より出向された「ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス」博士に渡す手はずになっている。これからは彼とともに聖遺物の研究を進めていくことになるだろう」
弦十郎が説明を行うと、朔也とあおいがディスプレイにそれぞれわかりやすいように写真を表示する。
その中には『ソロモンの杖』やウェルの顔写真もあった。
「何か質問はあるか?」
「はい! 師匠!」
響が元気良く手を上げながら質問をする。
「お? 何だ響君?」
「翼さんのライブには間に合いますか!?」
「そのことか……今回の任務は予定通りに行けば朝の7時には終わるだろう。それからすぐに移動すれば十分に間に合う予定だ。いつもよりハードだが、頑張ってくれ!」
「押忍!」
「他にはないか? なければ解散だ!」
弦十郎からの説明を終え、雅人はあてがわれた部屋のベッドで横になる。
(お帰り……か。言われたのはずいぶん久しぶりだな)
考えているのは先程響たちから言われた言葉。
雅人はその言葉に返す言葉を言わなかった。
そもそも、この言葉を聞いたのは雅人にとって2年ぶりになる。
ふらわーで住み込みで働いているときは、帰宅するのがだいたい深夜の店長が寝静まった後であるため言われなかったし、言われたときも生返事で返していた。
(……師匠や家族以外に……言われる時が来るなんてな。あの3人には悪いことしたな……だけど、本当に俺はこの言葉を言っていいのか? ここを、俺の帰る場所にしていいのか? ……俺に、帰る場所があっていいんですか? 師匠)
その日、雅人は返ってくるはずのない問いを虚空へと投げながら眠りについた。
そして迎えた移送任務当日。
各々があいさつを交わしている中、雅人に近付く男が一人。
「お久しぶりです、五代さん」
「……あんたか、ウェル。そう言えばあんたにソロモンを預けるんだったな」
「はい。僕たちの方で大事にさせてもらいますよ」
「え? 雅人君、知り合いなの?」
「冒険の最中に知り合ったんだ。まぁ……いいやつだよ」
「随分間がありますねぇ……では改めまして、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスです。気軽にウェルとでも呼んでください。立花 響さん」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
ウェルの自己紹介に慌てて頭を下げる響。その後ろでウェルを睨みつけるクリス。
「おい、クウガ」
「ん? どうした雪音さん」
するとクリスは雅人を引っ張り響とウェルから離れる。
「あいつ、信用していいんだな?」
「……するしかないだろ。物が物なんだ。おっさんの人選を信じるしかないさ」
「……」
2人が話している間にも紹介は終わり、雅人たちと『ソロモンの杖』を乗せた列車は進み始める。
列車の進行方向には、どんよりとした雲が広がっていた。
列車が進み始めて早2時間。
空は雲に覆われており、激しい雨が窓を叩いている。
今は交代で仮眠をとっている最中で、響が気持ちよさそうに丸くなっている。
「こいつは本当に……緊張感ってもんがねぇよな……」
溜息を吐きながら愚痴を漏らすクリス。
あおいがそれに苦笑しながらずれた毛布をかけなおす。
雅人も、その光景を眺めながら写真でもとってやろうかと響と未来に選んでもらった携帯を取り出そうとした直後、首筋に慣れしたんだピリピリとした感覚が走る。
「……ノイズだ!」
雅人が部屋を飛び出すのと同時に爆発音と警報が鳴り響く。
「うわひゃぁぁああ!? なになになになに!?!?」
「ノイズが襲撃してきたんだよ! 寝ぼけてないでさっさと起きろこのバカ!!」
漫才を繰り広げる2人を尻目に、雅人はノイズがいる列車後部へと駆け出す。
「雅人君!? 待ちなさい! 1人じゃ危険よ!」
「様子を見てくるだけです! みんなは『ソロモンの杖』を!」
それだけ言い残して、雅人は走る。
たどり着いた列車の最後尾は炎に包まれていた。
「間に合わなかったか……!」
気配を感じて横っ飛びをすると、飛行型のノイズが先ほどまで雅人がいた場所に一斉に突き刺さる。
「! 変身!!」
咄嗟にクウガに変身し、降り注ぐノイズたちを拳で撃ち落とす。
(室内じゃ不利だ!)
そう考えた雅人は跳躍。ノイズがあけた穴から屋上に出る。
そして雅人が見たのは空を覆い尽くすノイズの群れ。
そのすべてが飛行型で構成されており、空を飛べず遠距離攻撃の手段に乏しい雅人ではどうすることもできかった。
『……勘弁してくれよ!』
一斉に降り注ぐノイズ。
可能な限り撃ち落としていくが、そのすべてを2本しかない腕で撃ち落とすこともできず、何体かは雅人を素通りして列車に突き刺さる。
『クソッ!』
雅人が悪態をついたその時、先ほどノイズが突っ込んだ車両の中から歌声が響く。
それと同時に車両の天井を突き破って現れる2色の光。
「鳥雀どもがうじゃうじゃと!」
「どんな相手だって、今日まで練習してきたあのコンビネーションがあれば!」
「あれはまだ未完成だろ? 実戦でいきなりブッコモウなんて考えんじゃねぇぞ」
「うん! 取っておきたいとっておきだもんね!!」
「……ふんッ! わかってんなら言わせんな!」
雅人は久しぶりに見るシンフォギアを纏った2人に対して少し驚く。
纏っている空気が違うのだ。
以前の響からは感じられなかった威圧感、弦十郎などが纏う強者の雰囲気を、雅人は響とクリスから感じていた。
それにギアの意匠も変わっている。
以前の黒かった部分が少なくなり、白や橙などの明るい色が目立つようになったスーツ。
一回り大きくなったガントレットと風にはためく2尾のマフラー。
この3ヶ月間で逞しく成長した響の姿がそこにあった。
「背中は預けたからな」
「任せて!!」
それだけ言うと、クリスはノイズの大群に向かってその手に持った弓の引き金を引く。
嵐のような弾幕にノイズが巻き込まれていくが、それをかいくぐったノイズがクリスを仕留めようと接近する。
「スリー、ツー、ワンゼロ!!」
それと同時に、響が飛び出す。
空中でノイズを殴り、その反動でもう一度跳び上がってはブースターで姿勢を正しつつ次々とノイズを仕留めていく。
(……俺要らなかったんじゃないか?)
その光景を前にして、雅人は空いた口がふさがらなかった。
当然、クウガである雅人にあんな芸当はできない。
精々『青のクウガ』で高く跳び上がるくらいである。
『……黙って見てるなんてできないけどな! 超変身!』
気合を入れ直すためにあえて大声を出し、『青のクウガ』へと変身する。
懐からビートチェイサーのハンドルであり起動キーでもある『トライアクセラー』を取り出し、『青のクウガ』専用武器である棒へと変形させる。
そのまま跳躍。
上空にいたノイズを足場にして空中を駆け上がる。
『飛べないなら飛べないなりのやり方がある!!』
足場になりそうなノイズだけを残し、他のノイズはすれ違いざまに棒を一閃。
空母型ノイズの上に降り立ち、その中心へと棒を突き立てる。
『堕ちろ!!』
突き刺さった棒を中心に刻印が浮かび上がる。
すぐさま跳躍して離脱。
爆炎を上げながら空母型ノイズは墜落して行った。
「下がれクウガ! でかいの喰らわせてやる!!」
クリスからの指示に従い、ノイズを足場に死ながら列車まで戻る。
着地すると同時にクリスの弓から放たれた2本の極太の矢がノイズを貫きながら舞い上がる。
矢は空中で分裂していく。
1本から4本へ、4本から8本へ、8本から16本へ。
倍々に増えていき、空が矢で覆われる。
一斉に降り注ぐ万を超える必殺の矢。
一つ一つは細かくとも、それが万を超えるとなれば話は別、避ける隙間さえない矢の雨の中、巻き込まれたノイズは例外なく炭へと還っていった。
それでもすぐさま到達するノイズの援軍。
『キリがないな』
「あいつだ。あいつが取り巻きを率いてやがる」
クリスが指差した先には、光の尾を引きながら高速で接近してくる巨大なノイズが1体。全長がこの列車の一車両ほどもある大型のノイズだった。
そのノイズに向けて、クリスは腰に収納されていたミサイルを一斉射撃。
直撃すると思った瞬間、ノイズは下半身とも呼べる部分を切り離した。
すると切り離された下半身が動き出し、上半身と共にミサイルの弾幕をかいくぐる。
『合体ノイズ……ロボットっぽいな』
「だったらァァアアアッ!!」
クリスは持っていた弓をガトリングに変え、撃ちだす。
狙いは上半身のノイズ。
流石によけきれないと思った直後ノイズが変形し始め、先端が鋼鉄に覆われた姿になる。
その先端で、弾丸を弾き返しながらクリスに迫る。
「クリスちゃん!!」
響がガントレットを引き延ばしながらクリスの前に出て、跳躍。
ノイズを殴りつけるが鋼鉄に尖った部分の側面で打撃を逸らされる。
その隙に、下半身のノイズが迫る。
上半身よりもはやい速度でクリスを貫かんと迫る。
『させる……かッ!!』
クリスに当たりそうになった直前で、跳び蹴りを放つ。
右足が見事に側面に命中し、機動がずれた為クリスのすぐ傍を通り過ぎるだけになる。
「わ、わりぃ。助かった」
『怪我がないならよかった。友里さん!! 聞こえますか!?』
『聞こえてるわよ雅人君!』
クリスを通じてあおいと会話する。
『銃をください! 『緑』で仕留めます!』
『少し待って! ……受け取りなさい!』
その声と同時に、響たちが出てきた穴から拳銃が飛び出てくる。
それをキャッチした雅人は、心を落ち着かせる。
『……超変身』
『緑のクウガ』に変身し、高速で動き続ける下半身のノイズに狙いを定める。
『……行くぞ』
その声とともに、『アークル』から雅人の体全体にかけてスパークが飛び出す。
バチバチと音を立てて雅人の鎧と持っていた拳銃が変化する。
鎧はところどころ黄金のラインが走り、持っていた弓も刃のように鋭くとがる。
緑色だった『アークル』は黄金の輝きを発している。
トリガーを引き絞ると、バチバチと音を立てながら力が弓の先端へと集中していく。
『そこだッ!!』
引き金を引くと稲妻を発しながら3発の銃弾が飛び出す。
1発目は外れ、2発目と3発目はノイズの体の真芯を捉える。
刻印を浮かび上がらしてノイズは何度も爆発を起こしながら雨の中消えていった。
『……ッ!!』
膝をつく雅人。
先ほどまで『緑』だった彼は膝をついた途端『白のクウガ』へと変わる。
「雅人君!?」
『大丈夫だ! 俺よりそのノイズを何とか……!!?? 危ない!!』
叫ぶと同時に雅人は思いっきり足場にしている車両の天井を踏み抜く。
『白のクウガ』と言えどその力は常人の数倍はある。鉄でできた床を踏み抜くなど造作もない。
そのまま雅人があけた穴に巻き込まれるように響とクリスは列車の中に落ちる。
列車がトンネルに突入する直前のタイミングだった。
「わりぃ、助かった!」
「あ、ありがとう雅人君」
受け身を取って二人が雅人の方を見れば、雅人はクウガの変身を解いていた。
「お、おい! 元に戻ってどうすんだよ! まだノイズは山ほどいるんだぞ!?」
「いや、悪い。あとは任せた」
「ハァ!?」
驚愕するクリスをよそに、雅人は説明を始める。
「『金』の力はまだ使いこなせてないからな……使った後は強制的に変身が解けるんだよ。あと2時間は待ってもらわないと変身できないな」
「そんなもんを実戦で使ったのかよ!?」
「だから悪かったって。俺も一緒に打開策考えるから」
「当たり前だ!」
「そうだッ!」
雅人とクリスが言い争っている最中、響が閃いたと言わんばかりに手を打つ。
「? 何か思いついたのか?」
「師匠の戦術マニュアルで見たことある! こういう時は、列車の車両をぶつければいいんだ!」
響の打開策に、クリスが溜息を吐く。
「おっさんのマニュアルってば面白映画だろ? 第一、列車をぶつけてもノイズはすり抜けるだけだ」
「ふっふふ~ん! ぶつけるのはそれだけじゃないよぉ?」
その響の応えに、雅人とクリスはそろって首を傾げた。
結果的に、響の作戦はうまくいった。
トンネルを抜ける前に車両を切り離し、ノイズの機動力を削いだうえで遮蔽物の向こう側からの重い一撃。
逃げ場のない閉鎖空間でおこった爆発は他のノイズも巻き込み、残っていたノイズの全てを殲滅した。
呆然とするクリスの横で、雅人もまたその光景を眺めていた。
(響は……どんどん強くなってる。それに比べて……俺は『金』の力の制御すらおぼつかない……もっと強くなるんだ。もっと力を)
彼は貪欲に力を求める。
それがどんな結末を生むかも知らずに。
Gの一話に当たる今話、未来さんのヒロイン力が留まるところを知りません。
当初ビッキーヒロインにするつもりだったのに気付けば未来さんの株が作者の中ですごいことに……そのせいか井口病を発症しかけている作者です。宇宙からの電波が来ないの……。
電撃FCをやったりして「雪花狼つえー! 古城先輩使えねー!」と叫んでいる作者です。古城先輩は良アシスト(震え声)。
ただいまを言わない雅人君。今だに帰る場所を決めきれていない彼です。第二部では彼はどんどんネガティブ思考になっていきます。
再び登場ウェル博士。だけどセリフはこれだけ。次回は名前だけで登場すらしない。基本雅人君よりの視点なので仕方ないです。
そしてGに入って「お前ホントに人間か!?」と言いたくなるくらい戦闘力が上がった響。あれ絶対空中で二段ジャンプしてるよね。二段ジャンプって格ゲーの世界かるろ剣の雪白さんちの縁君くらいしかできないと思ってたよ……。雅人君はちゃんと足場使ってます。踏んだ瞬間に崩れていくからタイミングシビアですけどね。
そしてついに発現したライジングペガサスアニキ! やっぱりペガサスアニキは有能でした。今回あの高速飛行ノイズさんを少し強化したのは雅人君の見せ場を作るためです。一発外したのはご愛嬌。
そして不完全です。そうです、そう易々とライジングは使わせません。どのライジングであれ、「使った後は2時間変身できない」デス。「使用時間10秒」です! つまり五代さんのように暫くライジングのまま戦うと言うことはできません。一撃必殺ようです。外せば負けます。
この制限が解除されるとき、それは作者が考えたオリジナルフォームが解禁されるときです……先は長いかなぁ。
次回予告。
奪われてしまった杖。滅亡へと時を紡ぐ世界。
壇上の共演は競演となり、饗宴はやがて狂宴へと移ろう。
善を目指した少女は、黒き少女にそれを偽と吐き捨てられる。
次回、第十八話 『極光』
Gの咆哮――猛る虹色の輝槍は、覆う闇を突き穿つ。
あの日、手を繋ぐ少女が起こした奇跡の再現は、夜明けの光となりうるか。