戦士咆哮シンフォギアK【加筆修正作業中】 作:名無しのごんべい
目指せ平均5千文字!
*2015/11/19大幅な加筆修正。3000文字も増えてしまった。
「なんでだ!! どうして『赤』になれない!!」
もう日も落ち、『ノイズ』出現の警報が鳴ったせいで人気が全くない夜の街、『立花 響』が『ノイズ』と遭遇した工場地帯から幾分か離れた場所にある商店街。その大通りから少しそれた所にある路地裏。
そこで少年……『五代 雅人』が叫びながら壁を殴りつけていた。
先の工場地帯での『ノイズ』との戦闘があった時、雅人は白い鎧の男……『クウガ』としてその戦闘に参入していた。『クウガ』としては『ノイズ』と戦うのは当然のことだが、今まで歴史の表舞台に出てこなかった『クウガ』のことは当然政府に知られているわけがなく、雅人を捕まえようと今まで幾度となく『ノイズ』との戦場で出会ってきた青い髪の少女……『風鳴 翼』のことだが、雅人は彼女の名前を知らない……が剣を向けて投降を呼びかけてきた。が、すぐそばにいた少女……『立花 響』の事である。無論、初対面なので雅人は知らないが……がその場に座り込んでしまい、そちらに翼が気を取られた際にできた一瞬の隙をついて雅人はその場を離脱。
戦闘の事後処理のためか、翼はその場を動けないようなので雅人は楽々逃走に成功した。
「覚悟が足りないのか!? そんなことはない。覚悟ならできてる!! 師匠の夢を引き継ぐんだ!! なのに、どうして認めてくれないんだ!! 『アークル』!!」
誰もいなくなった街中に、雅人の叫びだけが木霊する。
雅人は『戦士』……『クウガ』である。
先代の『戦士』『五代 雄介』に選ばれ、雄介の下で様々なことを学び、そしてとうとう二年前雄介がある事件で亡くなってしまったため雅人が未熟ながらも雄介の跡を継いだのだ。
戦闘技術は悪くない。
ヤクザ10人に囲まれても『クウガ』になるまでも無くなんなく撃退できるだろう。
だが、どれだけ覚悟を固めて『クウガ』になろうとも『赤のクウガ』になることができない。
『クウガ』にとって戦うための覚悟というものは重要なものだ。『クウガ』の力は強大なモノであり、邪な心を持つものが使えば災いを呼ぶ。それを防ぐための安全装置がいくつかあるが、戦う覚悟をすると言うのはその一つだ。
これまで『赤のクウガ』になれたのはたったの5回。
その時は今までにない力を発揮できたが、次に『クウガ』になるときは『白のクウガ』に戻ってしまう。
「ちくしょお……ちくしょおぉ…………!」
何度も壁を殴り、拳から血が流れるもお構いなしに殴り続ける。
雅人はただただ悔しかった。
二年前、死にゆく雄介に「代わりになる」と言っておきながら、未だに雄介の足元にも及ばない自分が雅人には許せなかった。助けられなかった人もいる。間に合わなかった人もいる。助けられたはずなのに、力が及ばず救えなかった人もいる。
(師匠なら……師匠ならこんな無様は晒さなかったはずなのに!)
悔しさのあまり壁を更に殴り続ける。雅人の拳からは血が噴き出しており、殴りつけた壁はひび割れてへこんでいる。
そんなことをしばらく続け、しかし意味のない事だと気付いて今まで殴っていた壁を背にして座り込む。
「だ、大丈夫ですか!?」
すると、座り込んでいる雅人を心配したのか不意に声を上げながら誰かが駆け寄ってきた。
髪を白いリボンで後ろに束ね、どこかの制服を着ている少女。その少女は、一度雅人が背を向ける壁を見てから座り込む雅人を心配そうにのぞき込み、ふいに視線を下に向けるとあちこちから血が流れている雅人の拳を見て青ざめた。
「! 手、血が出てるじゃないですか!」
「……こんなの、ほっとけばすぐ治る」
「何言ってるんですか!? いいから来てください!!」
「お、おい!」
そして雅人は少女に腕を引っ張られていった。
数分後。
少女が住むと言う寮の一室に連れてこられた雅人は、そこで少女に治療を受けていた。
「……ずいぶん、手慣れてるんだな」
「同室の親友がよく怪我をして帰ってくるんです。その子の手当てしてるうちに慣れちゃって……」
少し照れた様子の少女が、俯きながら話す。
ようやく自室に同年代らしき異性を連れ込んだことに思い至ったようだが、自分から連れてきた手前追い出すわけにもいかない。
雅人は雅人で今だに先ほどのことを引きずっているためそこまで意識が回っておらず、また異性と接することも無かったのでここが少女の部屋だと知っても特に何も思うことはなかった。
「……自己紹介まだでしたね。私、『小日向 未来』って言います」
「……『五代 雅人』だ。手当てしてくれてありがとう」
「いえ……それで、どうしてあんなことを?」
そう言われて言葉に詰まる雅人。
話す義理はないのだが、手当てしてもらった恩があるため、そしてこの未来と名乗った少女の持つ雰囲気のせいか、どうも強く出られない。
「小日向さんは、どうして俺を助けてくれたんだ?」
なので、雅人は悪いとは思いながらも質問に質問で返した。
「……親友のが移っちゃったと思うんです。あの子ってすぐに何でも首を突っ込んじゃうし、人助けが趣味だーって言っちゃうような変わった子ですから、私も当てられちゃったのかもしれません」
そう言って親友のことを話す未来は、迷惑そうな口調とは裏腹にその表情は穏やかだった。その表情を見るだけで、実際未来は迷惑しているがそこまで嫌がっているわけではないことを雅人は気付いた。
そのことに少し興味がわいた雅人は、さらに質問を重ねた。
「こんな時間に外に出ていたのは、今出掛けてるその親友のため?」
「……はい。あの子、今日発売の新しいCDを買いに行くって学校の帰りに町のコンビニに行っちゃって……。響が行った方角にノイズが出たって聞いて……。そしたら、いてもたってもいられなくなって!」
――この子は、その親友のことが本当に大切なんだな。
目の前で涙を流す少女を見ながら、雅人は思う。
かつて、もう随分前のことだが、自分にもこんな風に自分のために泣いてくれる存在がいたはずだ。
もう、雅人自身には心配してくれる人間はいない。だが、目の前で泣いている未来やその親友の子、他にも大勢の人たちは誰かを心配しているし、心配されている。
だから、今のままの雅人ではだめだ。
『白』ではなく、『赤』にならなければ誰も護れない。『五代 雄介』の代わりが務まらない。
――それでも、今泣いているこの子の涙を止められるのなら……。
「大丈夫」
雅人は未来を安心させるために笑みを作り、サムズアップをする。
今だに本当の意味で使えたことがない技。
今はただ安心させるためだけの見せかけの技。サムズアップをする手は震えていて、笑顔だって引き攣っているかもしれない。だが、いつか本当の意味で使えるようになるために、目の前で泣いている少女を笑顔にするために、雅人は無理やり仮面をかぶる。少しでも、『五代 雄介』になるために。
「あんたがその親友を大切に思っているように、きっとその親友もあんたのことを大切に思ってるはずだ。 そんな子がキミを悲しませるようなことはしない……それはあんたが一番知ってるはずだろ?」
師匠である雄介に似せた笑みで、なるべく口調も雄介に似せて励ます。
雅人は他人とほとんど関わったことがないから励ますなんて無理だが、雄介は違う。
励ますとか安心させるとかは雄介の得意分野だった。だからこそ、『五代 雄介』は必要で、雅人は『五代 雄介』になろうとする。
―――――今はまだ遠い背中だけど、いつか追いついて貴方の代わりになって見せます。
雄介の真似をしたのが功を奏したのか、未来は初対面の男に泣き顔を見せたのが恥ずかしかったのかそのまま顔を伏せ、それでも目の前の少年がぎこちないながらも励まそうとしてくれていたのを悟った。
「ご、ごめんなさい。見苦しいところを見せちゃって……」
「いいって。誰にだって泣きたいときはあるさ。ま、全部師匠の受け売りなんだけどね」
「ふふっ! なんですかそれ!」
そのまましばらく二人で笑い合う。
――笑うのなんて何時ぶりだろう?
雄介が死んでから、雅人は今まで全く笑うことなく生きてきた。いや、笑うと言う行為を忘れて生きてきた。『ノイズ』が現れた場所に行き、ただ戦う。『五代 雄介』の代わりになると言った雅人が『笑顔』を忘れてしまうと言うのは何という矛盾だろうか。
そうして誰かと談笑すると言う行為を約2年ぶりに楽しんでいた雅人の首筋のあたりに、ピリピリとした感覚が走る。
『クウガ』になってから2年、最初の頃はなれることはなかったが今ではすっかりお馴染みになってしまった、『ノイズ』が現れる予兆を腰の『アークル』が察知して雅人に知らせているのだ。
「手当てありがとう。その親友が帰ってきた時に面倒なことになるだろうから、俺はそろそろ行かせてもらうよ」
そう言いながら立ち上がった雅人を見て、未来も同じように立ち上がる。
「あ、送ります」
未来の通っている学校は女子高であり、学生寮ももちろん女子寮だ。今回は雅人が怪我をしていたのと緊急用の医務室が既に使われている状態だったため特例として雅人を部屋まで上げたが、本来男性が中に入るには少し面倒な手続きが必要であり、また一人で寮内を歩かせるわけにもいかない。そんな事情もあって雅人と未来は寮の玄関まで二人で歩いた。
「じゃあ、今日はサンキューな。小日向さんと話せてよかったよ」
「私も、五代さんと話せてよかったです。じゃあ気を付けて」
「うん。じゃあな」
雅人は走る。
走り始めて20秒ほどたってからあたりのスピーカーから警報が鳴る。『ノイズ』が発生したことを市民に知らせ、避難を促すための警報だ。
雅人はそれを無視しながら走り、自分なりに覚悟を固めて『クウガ』になる。
それでも色は、『白』。
そのことに舌打ちしながら、雅人は先程までとは比べ物にならない速度で走る。
これ以上、誰かの涙を流させないために。『五代 雄介』に少しでも近づくために。
『ノイズ』の気配をたどって雅人が辿り着いたのは、左右を田んぼに挟まれた一本道の町はずれの道路。田んぼの奥には民家がちらほらと見え、片方はそのまま町までつながっているが、もう片方は田んぼの奥に山があり、木々が生い茂っている。避難警報のおかげで周囲に人影はない。まぁ、『ノイズ』が現れたのだから当然と言えば当然なのだが。
町側から来た雅人は、民家の影に体を隠してそっと道路を覗き見る。既にノイズの気配はなく、代わりに『クウガ』になって強化された雅人の眼に見えたのは3つの人影と荒れ果てた道路。
何かが爆発したのかと思うぐらいえぐれ、10メートル台のクレーターができているアスファルトの道路。よほどの衝撃があったのか地面は抉れるだけに止まらず、めくれ上がったアスファルトなども確認できた。
その中心で拳をプラプラさせて、倒れている青髪の少女に近付いていく赤髪の大男。
その後ろで尻餅をついている、工場で助けた少女。
雅人は知る由もないが、青髪の少女……『風鳴 翼』が味方の筈の工場で助けた少女……『立花 響』に剣を向け、それを見た赤髪の大男……『風鳴 弦十郎』が翼の大技を拳で受け止めた際にできたのがこの惨状である。
雅人がそっと観察する中、風に乗って3人の会話が聞こえてくる。
『お前泣いて……』
『泣いてなんかいません! 涙など……流していません! 風鳴 翼は、この身を剣と鍛えた戦士です! だから……』
『あのっ……私、自分が全然ダメダメなのはわかっています。だから、これから一生懸命頑張って……頑張って、奏さんの代わりになってみせます!』
そう響が言った瞬間、響は翼に頬を打たれた。
その一幕を見て、雅人は自分の中で急激に響に対して興味がわいてくるのを自覚した。
――あの子は『奏』という人の代わりに戦おうとしている?
――俺と同じで、大切な人の代わりになろうとしているのか?
――一度、話してみたいな。
周囲に『ノイズ』の気配はない。
雅人は『クウガ』から人の姿に戻り、夜の街を歩き始めた。
「とは言ったものの……どこの誰かも知らないんだから無理だよなぁ」
未来と出会い、修羅場を見た翌日。
コンビニで買ったおにぎりを頬張りながらこれからの予定を立てる。
最優先にすべきはやはり『ノイズ』退治。
これは何千年も続いてきた『クウガ』の絶対のルールだ。
1つ、『クウガ』は一子相伝なり 無用な秘術の拡散は避けるべし。
2つ、『クウガ』は人々の盾なり 『クウガ』は人々の剣なり。
3つ、『クウガ』は歴史の影なり 光射すところに『クウガ』の居場所はない。
主な掟はこの3つだが、掟は『クウガ』である以上絶対だ。
すでに3つめは雅人が翼に見つかってしまったため意味のないものになってきているが、昔と今では事情が違う。
雄介も隠し通すのが無理だったから警察官の1人と秘密裏に協力していたと言う。
するとまたしても首筋のあたりにピリピリとした感覚。
またどこかで『ノイズ』が現れたのだろう。
感覚が強くなる方へおにぎりの袋を捨てながら走る。ポイ捨てに少し罪悪感を覚えるが、ごみ箱を悠長に探している暇はないため心の中で掃除をする人に謝りながら駆ける。
少しして警報が鳴り、逃げ惑う人の波に逆らい人と人の間を走り抜ける。
やがて人が誰もいない街中、目の前に『ノイズ』の軍団を見つけた。その足元にはいくつかの炭の塊が見られることから、既に何人かの少なくない犠牲者が出ていることがわかる。
――護れなかった……だけど!
腰に『アークル』を出現させ、クウガになる。
またしても『白』。
それを気にする余裕は今は雅人にはない。目の前の『ノイズ』に向けて駆け出し、すれ違いざまにラリアット気味に殴りつけた。
空中で縦に一回転した人型『ノイズ』が地面に倒れるのを確認すると、追撃とばかりにその頭を踏みつける。だが、『白』の『クウガ』の攻撃力ではそれでトドメとはいかず、踏みつけられた『ノイズ』はいまだ健在。あまり一体の『ノイズ』にばかり時間をかけていては他の『ノイズ』から手痛い反撃をもらうことになる。
そう判断した雅人は、人型『ノイズ』の額についた角のような触覚を掴み、そのまま振り回した後、投げつける。
振り回された『ノイズ』に数体が巻き込まれるも、健在な『ノイズ』はすぐさま雅人に狙いを定めて襲い掛かる。
人型の大柄な『ノイズ』が爪を振るう。それを察知した雅人は屈みながら爪を躱し、爪を振るってきた『ノイズ』の懐に入りこみ、その腹にパンチを連打する。
6発目で目の前の『ノイズ』は炭に変わり、それが崩れ落ちる前に雅人の前にいた『ノイズ』のうち3体の『ノイズ』が体を棒状にして体当たりを仕掛けてきた。
時間差で突っ込んでくる『ノイズ』の1体目を雅人は横っ飛びのステップで躱し、2体目はタイミングを合わせて拳を添えてカウンターを叩き込む。3体目は2体目を殴った反動を利用してぐるりと一回転し、回し蹴りで撃ち落とす。
『ノイズ』の猛攻は終わらない。
ナメクジ型の『ノイズ』が自身の体の前面にある8本の触手を伸ばして雅人を攻撃してくるが、雅人は伸ばされた触手を見切ってまとめて掴み、力任せに引っ張る。
触手を引っ張られたナメクジ型『ノイズ』はしばらく踏ん張っていたが、やがて力負けしたのか体が浮く。
そのままナメクジ型の巨体が雅人に迫る。人の身長を優に超える巨体が迫ってくる中雅人は動じず、右腕を弓のように引き絞り、目の前まで来た『ノイズ』に向けて叩き付けた。
人の腕力を超える力で殴られたナメクジ型は、殴られた反動で雅人に握りこまれた触手を根こそぎ引きちぎられながら錐もみに回転して吹き飛ぶ。その巨体故に目の前の『ノイズ』が巻き込まれていき、その場に立っているのが雅人だけになる。
ナメクジ型はごろりと反動をつけて起き上がり体を元の姿勢に戻したが、その体の前面に『刻印』が浮かび上がるとバタバタと痛みからの逃れようとするかのように体をばたつかせる。が、急にぴたりとその動きを止め、その一瞬後に起き上がろうとしていた周りのノイズを巻き込んで爆発した。
その何度目かもわからいない光景に、雅人は内心首をかしげる。
(師匠が殴って刻印が出て『ノイズ』が崩れ落ちることはあっても、爆発することはなかったよな……。いつも思うけど、この爆発は何なんだ?)
「危ない!!」
思考にふけっていた雅人は、その声で正気に戻る。
見れば生き残っていた『ノイズ』……最初に投げ飛ばした『ノイズ』だ。とどめをさせていなかったらしい。……が雅人に向かってアイロンのような手を振り下ろそうとしていた。
『う、ぉぉおお!!』
「たぁぁあああ!!」
二つの雄叫びが重なり、雅人の拳が『ノイズ』の腹を、警告してくれた少女の拳が『ノイズ』の後頭部に当たる位置を貫く。
ボロボロと炭素となって消えていく『ノイズ』。
後に残ったのは拳を振った体勢でお互いを見つめ合う雅人と少女。
どちらからともなく拳を下ろし、構えを解く。
見れば、そこにいるのは昨日の夜に工場で助け、その後雅人が見た修羅場の渦中にいた少女。
雅人としてはできれば少し話がしたいが、昨日の様子を見ればこの少女……響が、あの青髪の少女……翼の所属している組織に属している、または関係があると言うのは確実だろう。
ということは、今この瞬間もその組織の人間に見られている可能性がある。
『クウガ』はあまり人に見られていいものではない。それにもし『クウガ』の技術が拡散してしまえば、それが火種となって争いを生むかもしれない。
ならば、この少女と話をすることはできない。
そこまで考えた雅人は踵を返し、響に背を向けて走り出そうとする。
「ま、待って!」
しかし呼び止められ、つい立ち止まってしまう。
そして響の方もつい呼び止めてしまった何を離せばいいのか考えておらず、結果思ったことをそのまま口にすることにした。
「昨日は、助けてくれてありがとうございました! 私、『立花 響』って言います! よければ、名前だけでも……」
響はまず自己紹介をし、昨日のお礼を言う。その後、名前を聞いてみたが言葉の最後の方が尻すぼみになってしまった。
話をしている最中も響の方を向かない雅人を不安に思っったのだ。つい昨日も話の最中に翼を怒らせてしまったばかりの響だ。振り向く気配も、喋ろうとする気配もない目の前の男の態度に不安を感じ、また自分は誰かを怒らせてしまったのかと思っても仕方のない事だろう。
雅人も雅人で、この状況でどう動くか決めあぐねていた。
一度話をしてみたいと思っていた少女の方から声をかけてきてくれたのは嬉しいが、正直今話しかけてくるのは迷惑でしかない。
しかし、このまま何も話さずに帰ってしまったらいつか話し合うときに支障が出るかもしれない。
『…………『クウガ』』
やむなく、雅人は名前だけを短く名乗ると駆けだした。
ちらりと後ろを振り向くと、青髪の少女……翼がこちらに来ていたのが見えたからだ。響とは話をしてみたいと思ったが、明らかに政府の人間である翼とはきっと話をしてもややこしいことになるのは目に見えている。
路地裏に入り、入り組んだ道を進みながらたまに建物の中を通って追ってきているかもしれない誰かを撒く。
『ノイズ』の現れた現場から十分に距離を取った場所にある、薄暗い路地裏で立ち止まる。
物陰に入り、辺りを警戒しながら『クウガ』の姿から人の姿に戻り、溜息を吐く。
「……俺は何でこんな泥棒みたいな真似をしてるんだ?」
既に翼との追いかけっこは何度か経験しているため慣れっこになってしまったが、正直疲れるので放っておいてほしいのが雅人の本音である。
「クウガの正体も存在も秘匿するべしと言う掟がなければこんな苦労をする必要はないのに……」
――いっそ師匠のように例外を作ってしまおうか。
そんなことを思いながら、雅人は大通りに戻るために暗い路地裏を進んでいった。
「『クウガ』……と。そう名乗ったんだな?」
「はい。私が名前を聞いたら、確かにそう言いました」
所変わって特異災害対策機動部二課本部指令室。
そこで、『未確認生命体一号』と呼ばれている存在に接触した響は司令である『風鳴 弦十郎』に対してそう報告した。
響も『未確認生命体一号』と『未確認生命体二号』のことは、今日の出撃前に聞いている。
どこからともなく現れ、『ノイズ』だけを倒し、どこかへ去っていく。
今まで現場で出会った翼がしたどんな呼びかけにも応じず、喋れないのではないかと疑っていた二課の面々も、この響の報告には度肝を抜かれる思いだった。
「先ほど説明したように、『一号』も『二号』も俺たちの呼びかけにこの1年間答えたことはない。だが、響君の呼びかけに立ち止り、そして名乗った。これはどういうことだ……?」
「『融合症例』である響ちゃんに反応してるのかしら? それとも『ガングニール』に反応してる? ……だめね、情報が少なすぎるわ」
「……私の勘違いでなければ、『一号』は私を見て逃げ出したように見えました」
翼の言葉に、一同が唸る。
「ん~。なら響ちゃんと『一号』を二人っきりにしてみるとか?」
そう言った了子の声に、すぐさま反発したのは現場と指令室をつなぐオペレーターである『藤尭 朔也』だ。
「いや、それは危険すぎますよ了子さん。まだ訓練前でまともに戦えない響ちゃんをあんな得体のしれないやつと二人っきりになんてさせられないじゃないですか」
「や~ね~、冗談よ♪」
朔也の言葉におどけてみせる了子だが、響以外の人には彼女が本気で言ったのが分かった。
当の響は、妙に張りつめてしまった空気の中一人取り残されていた。
「いずれにせよ、『クウガ』と名乗ったとしても俺たちにとって奴の正体も目的も何もわからない現状では、やつの言葉を鵜呑みにすることはできん。これまで通り、『未確認生命体一号』『未確認生命体二号』と呼称する! 以上だ!」
弦十郎のその一言で『未確認生命体対策会議』は終わりをつげ、全員が元の仕事に戻った。
一人納得いかないと言った様子の響を残して。
今回のテンプレに売った喧嘩。
響の『奏の代わり』宣言に切れるどころか同意する。
オリ主と二課の仲がとことん不仲。
今話後半と次話はシンフォギア原作でスルーされた1か月の話です。
ちょっとオリジナル展開。
オリ主の雅人君は覚悟ふわふわタイムを目指してたりします。
たやマさんと仲良くなれそうですね。
前にも言いましたが、今作のクウガは原作とだいぶ設定が変わってます。
掟なんてのもありますしね。
因みに五代さんに協力してた警察官はご存じあの人です。
流れた劇場版で変身する予定があったとか……小説だっけ?
『変身!』とか『超変身!』とか期待してる人はもうちょっと待ってください!
今はまだその時ではない。
前回入れ忘れちゃったし次回予告でも入れるかな。
でわまた次回!
次回予告
「えーっと……紹介するね、響。この人がこの前話した怪我してたから手当てした……」
「立花さんが、小日向さんが言ってた「かわった親友」?」
「また秘密の用事?」
「『未確認生命体一号』……一緒に来てもらおうか」
「私にだって! 守りたいものがあるんです!! だからッ!!」
―――――代わりに戦って、何が悪いんだよ。
『葛藤』