S−Forceの新人隊員奮闘記 作:マナドゥム大好き
それでは、本編をどうぞ!
「なぁなぁ見たか?あのシンクロ召喚ってやつ!」
「うん、見た見た!あんなの見たことないよな…シンクロ召喚を使っていたあいつはテスターだとか言ってたけど、俺達も使えるのかな」
「なぁ、来人(らいと)!お前はどう思う?」
「ん?」
ここ、デュエルアカデミアのラーイエローの食堂で俺、遊木来人(ゆうきらいと)は同じイエロー生の1人に声を掛けられた。
話題はデュエルアカデミアの試験でシンクロ召喚を披露した1人のアカデミア生の話題だ。
そのアカデミア生の名前は黒井正継(くろいまさつぐ)、おそらく転生者、あるいは転移者だろう。
そいつが披露したシンクロ召喚はこの時代の人からすれば驚きだろう。
「さぁ、どうだろうな…ただ、シンクロ召喚はあまりに唐突すぎる気はするな。だって、そんな発表があるなんて素振り1つもなかったじゃん」
「確かに…まぁ、でもサプライズってことじゃね?」
「なるほどな…とりあえず近いうちにデュエルを申し込んでみるよ。シンクロ召喚も気になるし」
俺はそう言って、その場から立ち去る。
そして、自分の部屋へと戻り、鍵を掛ける。
すると、ボールペンのような形の端末が振動する。
それを軽く回転し、目の前にウィンドウ状の通話画面が出現した。
『来人君!そちらの状況はどうですか?』
「小夜丸先輩、こっちはまずまずってところですかね」
『そうですか!良かったです…来人君の担当する案件は危険なものばかりなので心配だったんですが、今のところは大丈夫そうですね。…安心しました』
そう言いながら、ホッとしたような表情を見せた黒髪の美少女は乱破小夜丸、遊戯王のテーマデッキの1つ、S-Forceに所属するくノ一の少女であり、俺の先輩でもある。
え?何でS-Forceに俺が入ってるかって?
…シンプルにスカウトされました。
なんでも俺のデュエルの腕と特異体質を見込んでのことらしい。
あの時はびっくりした…目を覚ましたらいきなり知らない所にいるわ、遊戯王の世界の存在だと思ってたS-Forceの基地にいるわで、本当にびっくりした。
まぁ、それはさておき、どうやら俺はどんな世界に行っても、世界から異物として扱われないという特異体質らしい。
詳しいことはわからないが、本来、別の世界や別の時間軸に飛んだ人間は世界からは異物として認定され、異物を排除するために多かれ少なかれ、抑止力的なものが働くらしい。
元々、その世界に居た存在に憑依した場合はまた変わるらしいが。
デュエルの腕に関しては、正直俺以外に強い人はいくらでもいるだろうけど、一応基準値には達していたようで、特異体質であることも手伝って、晴れてS-Forceの一員として迎え入れられた。
俺が担当するのは主に遊戯王世界の異変である。
俺は特異体質のおかげで、異変を起こした犯人にも察知されない。仮にその異変を起こした存在が神であれなんであれ、俺という存在が紛れ込んでいることに気づかない。
そのせいか、俺が担当する案件の中には神を相手にするものもある…いや、正直に言えば、俺のような新人隊員に任せる案件じゃないだろう!って思うけど。
小夜丸も同じ気持ちなのか、今回のように俺が任務に向かう時にいつも心配して連絡をくれる。
「…小夜丸先輩、いつもありがとうございます。本当、先輩の顔を見るだけで元気が出ますよ…」
『えっ!?そ、そうですか…えへへ!連絡してくれれば、いつでも見れますよ!何かあったら、遠慮なく先輩である私を頼ってくださいね!すぐに駆けつけますから!』
「はい!その時はよろしくお願いします!…あ、そうだ!ちょっと今回の任務の内容を整理したいんですけど、手伝ってくれませんか?」
『それぐらいお安い御用です!では整理していきましょうか!』
「はい。まず、今回の任務は転生者、あるいは転移者であると思われる黒井正継の調査。そして、調査結果次第では逮捕し、この世界の歴史から未来の召喚方法の存在を抹消することですね」
『その通りです。いくつもの並行世界がある以上、転生者や転移者は溢れていますが、今回は少々厄介な状況です』
「この世界が本来の歴史…俺達の世界で言う遊戯王5Dsの世界にそのまま繋がってしまうから、ですよね?」
『はい。本来シンクロ召喚はこの時代から遙か先の未来で主要となる召喚方法なのですが、黒井正継の存在により未来が大きく変化してしまう。その結果、ゼロリバースと呼ばれる現象が後に英雄となる不動遊星の誕生を待つことなく起きてしまう…そうなってしまえば、この世界に未来はありません』
「だから、そうなる前に黒井正継を止め、シンクロ召喚の存在をこの世界から抹消しなくてはならない…」
『そういうことです。…いつも思うのですが、来人君1人に任せていい任務じゃありませんよね!?先輩方のことは尊敬していますが、流石にこれだけは受け入れられませんよ…』
「あはは…心配してくれてありがとうございます。でも、大丈夫ですよ!いざという時は小夜丸先輩が助けてくれると信じてますし」
『来人君…!ふふっ!そうですね。来人君が困っていたら、私が助けます!』
「はい、頼りにしてます!…何かあったらまた連絡しますね」
『はい!それではまた!…来人君、気を付けてくださいね』
小夜丸は最後にそう言って、通話を終了した。
「…よし、とりあえず明日、黒井正継に会いに行こう!」
俺はそんなことを思いながら、明日に備えて準備を進めるのだった。
/////////////////
「さて、黒井正継は…」
黒井正継に会うためにオシリスレッドの寮へとやってきた俺は辺りを見渡す。
シンクロ召喚を披露した割にはあまり盛り上がっていないのか、寮の周りには誰もいない。
まぁ、アニメではオシリスレッドは落ちこぼれ、みたいな認識をされていたしあまり人が寄り付かないのかもしれない。
これが教室とかなら話は違うのだろうが、わざわざこの寮まで足を踏み入れようとする人物は少ないのだろう。
「おや?どうかしたにゃ?」
そう声を掛けてきたのは猫を抱きかかえている眼鏡を掛けた男性だった。
「初めまして。えっとレッド寮の先生ですか?」
「そうにゃ。私のことをみんなは大徳寺先生って呼んでくれてるから君もそう呼んでくれて構わないよ」
「はい。大徳寺先生」
俺に声を掛けてくれた男性は大徳寺先生、遊城十代達の先生で、担当している授業は錬金術という実に男心をくすぐられる授業だ。
その正体はセブンスターズの一員のアムナエル。まぁ、今はセブンスターズが本格的に活動しているわけじゃないから、少なくとも俺に害はないと見て良いと思う。
「そうだ!大徳寺先生、黒井君はいらっしゃいますか?彼の見せたシンクロ召喚が気になってしまって、一回デュエルしたいなと思ってるんですけど、見当たらなくて…」
「正継君ならもうすぐ…お、噂をすればなんとやらですにゃ」
大徳寺先生のその言葉と同時に大きな声が響く。
「なんで誰も来ねぇんだよー!!」
「うおっ!びっくりした!何なんだ…」
「彼が正継君。今、呼んできますにゃ」
「あ、はい…」
どうやら大声の主が件の男らしい。
黒井正継は黒髪の少年で、遠目ではわかりづらいが、一応顔は整っているように見える。
それにしても…なんであんな大声を出しているのやら。
俺がそんなことを思っていると、大徳寺先生が正継を連れてきた。
「正継君、彼が君とデュエルしたいというラーイエローの生徒だにゃ。えっと、名前は…」
「そういえば、自己紹介してませんでしたね。俺は遊木来人です」
「…来人君だにゃ、それでは先生はこれで失礼しますにゃ」
「大徳寺先生、ありがとうございました。お仕事頑張ってください」
俺の言葉を聞いた大徳寺先生は小さく笑ってその場を後にした。
「お前が俺とデュエルしたいってやつか?」
「うん、そうだよ。噂のシンクロ召喚とやらを見せてもらおうと思ってさ」
「ははっ!いいぜ!せっかくデュエルアカデミアに来たのに手応えのないやつばっかりで退屈してたんだ!」
「手応えがない?オベリスクブルーの生徒はエリートだって聞いてるけど…」
「いや、オベリスクブルーも大したことねぇよ。実力もないのに威張り散らしてるだけだった。むしろ、ラーイエローの方が強いんじゃねぇかって思うぐらいだ」
そりゃあ、お前は未来のカードを使ってるんだから強いだろう…まぁ、上手い戦い方をしているデュエリストである可能性もあるが。
正直、デュエルしてみないことにはなんとも言えないが、正継は果たしてどちらなのか…単純にカードパワーで押し切っているのか、はたまたプレイングによるものか…なんにせよ、デュエルしてみればわかることだ。
「そういえば、さっきはなんで叫んでたの?いきなり大声が聞こえてびっくりしたんだけど」
「あー、あれな。俺って、自分で言うのもあれだけど有名人じゃん?だから、その噂を聞きつけて人が集まってくるんじゃねぇかって期待してたというか」
「…つまり、シンクロ召喚を披露した正継君の元に人がたくさん集まってきて、チヤホヤされたかったと?」
「うぐ。そうだよ!悪いかよ!」
「あはは…まぁ、悪いとは思わないけど」
まさか、承認欲求の固まりだったとは…まぁ、誰かに認められたい、チヤホヤされたいっていうのは誰しも思うことではあるだろうから責めるつもりはない。
「いいから!やるぞ!来人!」
「オーケー。行くよ!正継君!」
「「デュエル!!」」
まさかデュエルシーンに辿り着けないとは…なかなか難しいですね…
ちなみに主人公は高校生です。約1年前にS−Forceに勧誘され、それ以降いくつか遊戯王世界を巡って現在に至る形です。