真人間には向かないプラン   作:ikos

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前作を久々に自分で読み返して、フロイトのものすごい差に笑ってしまったところからできた一本です。前回のレイヴンが今回のフロイトを夢で見て「ちょっと待って」になってるお話。

元からラスボスにするつもりだったから抑制的だったというのはありますが、自分の考える原作イメージにできるだけ近い感じでと考えると、やはりあんな感じになるんですよね。
「真人間には向かないプラン」では主人公にすべくちょっとキャラを変えているので、あー元々はこんなやつとして描いていたなあと頷いていたり。

V.Ⅸルート終了後、二人で火星かどこかで独立傭兵やってる感じです。相も変わらず戦ってもいる。結婚したのかどうかは……どうだろう? どっちでもいい気はします。




余話:前周のレイヴンが今周のフロイトに「誰!?」となってる話

 

 

 

 目がさめて最初に思ったのは、「いや、誰あれ」だった。

 そんな道をたどる可能性自体はあったかもしれないが――あり得たかもしれない可能性と言うには、どうにも違和感のひどい夢だった。

 

 なんだか憮然とした気持ちを持て余しながら、ベッドを降りて、物音のするキッチンへと足を向ける。

 見慣れた後ろ姿がコーヒーを淹れていた。「おはよう」と声をかければ同じ温度で同じ言葉が返ってくる。平穏ないつもの光景だ。

 そのまま隣に寄って、少しだけ口ごもった。

 

「……ちょっと面倒くさい質問をするんだけど」

「ん」

「私のこと好き?」

「ああ」

 

 あっさりと答えてから、フロイトが不思議そうに首を捻った。

 

「どうした、急に」

「……やっぱり違うような……」

「何が」

 

 はあ、とため息をついて肩に寄りかかった。

 フロイトが逆側の手で、くしゃくしゃと髪を撫ぜていく。

 

「朝からご機嫌ななめだな」

「……夢見がひどかったの」

「へえ」

「変な夢よ。貴方との100回の契約を断ったら、仕事のたびに出没して勝負を仕掛けてくるようになるの」

「ああ、だろうな。想像がつく」

「まあそれはいいんだけど……その貴方が、なんて言うのか……こう、様子がおかしいというか……」

「何だそれ」

「私のこと好きすぎない?って。なにあれ、願望?」

「今も大概惚れてると思うが。足りていないなら改善を検討する」

「それは十分なんだけど……でも、何かこう、ちょっと違ったのよね……」

 

 今でこそまともに思いが通じ合った気がするものの、あの頃はまったくもって、そうではなかったのだ。

 あんな感じに開けっぴろげに好意を向けられていれば、もう少し自信が持てていたかもしれない。馬鹿な考えは捨てて一緒に生きてほしいと懇願するだけで、受け入れてもらえると信じたかもしれない。あそこまで話がこじれることもなかっただろう。

 

 だが、一体なにをどうすればフロイトがあんなことになるのか。一回振っておくだけでああなるなら苦労はしない。やっぱり何かがおかしい気がする。

 うんうん唸っていると、不意に、腰を掬って持ち上げられた。

 そのままカウンターに降ろされて、目を瞬く。フロイトが両脇に手をつき、囲うようにして見上げてきた。

 

「……何?」

「聞き捨てならないな、浮気か?」

「違うわよ。それに、相手は夢の中の貴方なんだけど」

「そいつより本物の方がいいだろ」

 

 随分な自信だ。

 少し考えるように視線を上げて、小首を傾げた。

 

「……まあ、そうね」

 

 ものすごく傍迷惑な存在だが、あんな風に甘やかして譲歩されまくるよりは、この男が好き勝手しているのを眺めている方がいい。全部が全部付き合いきれるものではなくても、その辺りはお互い様だからちょうどいいのだ。

 うん、ともう一度、今度ははっきりと頷いて両手を伸ばす。

 頬に触れて額に口づけると、融けたような色の目が意外そうに瞬いた。

 かなりの満足感だ。からかうように目を細めて、笑い声をこぼした。

 

「そうね。私は、貴方だからいいんだわ」

「だろう」

「でもフロイト、あれは二度とごめんよ。リリースとかファクトリーとかそういう系統は。次やろうとしたら本当に愛想を尽かすから」

「久々だな。まだ釘を刺すほど信用がないか」

「そうでもないけど、昔の夢を見たんだもの。お返事は?」

「わかってるさ、案外面白いものでもなかったしな」

「よろしい」

 

 ふと、一番の違いはそこなのかもしれないと思った。

 身体を失ってACを動かすことを、「面白いものではない」と気づいているからこそ、ああも譲ることができたのかもしれない。その辺りを取り除いてしまえば、残るのは「戦いたい」という単純な欲求だけだ。それならありえるのかな、と首を捻る。

 それだけではないような気もしたが、結局のところ、ただの夢だ。

 

「……ACの修理、今日終わるんだっけ」

「ああ。楽しみで早起きしすぎた」

 

 子どもみたいだと笑ったが、自分も似たようなものだ。

 ダンスを申し込むように手を差し伸べた。察したフロイトが恭しく手を取ったので、二人して笑ってしまう。

 

「まずは手慣らしに、私と手合わせしてくださる? 王子様」

「もちろん喜んで。俺の女王」

「お姫様じゃないのね」

「姫って柄でもないだろ」

 

 可愛くないことを言う頬を抓って、まずは朝食だ。

 今日もきっと良い一日になる。 

 

 

 

 

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