真人間には向かないプラン   作:ikos

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前周のオリキャラK9君については結構色々悩んだのですが、結局今回は出さないことにしました。
レイヴンにとっての被保護者枠を増やしたくないというのと、あと話がちょっとぶれちゃうんですよね。

そんなわけで、ウォルターが後輩としてK9君連れてきてたら、の発生しなかったif。
フロイト視点です。






余話:今周は出演のないK9君について

 

 

 

 

 こいつの抗議方法は家出しかないのだろうか。

 

 うっかり本人が聞いたら怒って出て行きそうな(それこそ語るに落ちる)ことを思いながら、憤慨している女にコーヒーを差し出した。

 

 

「まあ、これでも飲んで落ち着け」

「……ありがとう。でも無理、落ち着けない」

「酒の方が良かったか?」

「飲みたい気分だわ……飲まないけど」

「そうか」

 

 レイヴンの酒は陽気な酒なので気分転換にはなっただろうが、こう言うなら飲まないだろう。残念だ。

 

 ストライキと考えれば正当かもしれないが、前にも喧嘩したときは出て行ったなと思うと、ついそんな感想も出てきてしまう。

 

 事の起こりは、ようやくルビコンにやってきた飼い主(ウォルター)が、新しい猟犬を伴っていたことだった。

 それが十歳にもならない子どもだったことが、それはもうものすごく、気に入らなかったらしい。

 

 子どもは守られるべきだというのは安定した社会の考え方で、つまりはこの宇宙開拓時代においては大半の場所で「ただの未熟な労働力」に過ぎない。レイヴンの考えは前者のようだ。

 考えてみれば納得できるような気もするし、意外に思うような気もする。

 前回は周囲に子どもがいなかったので、気付かなかった。もしかしたら以前も揉めていたのだろうか。

 コーヒーに口をつけながら、どうしたものかと考えた。

 

「それで、どうしたって?」

「……大喧嘩をしたわ。私が二人分働くし稼ぐから、当面戦場に出さないで、って言ったけど……」

「断られたか。まあ、そうだろうな」

 

 カップを両手で持ったまま、眉間に皺を寄せたレイヴンが唇を曲げた。

 「後輩」ということは、つまりは補助戦力であり万一の際の後任だ。経験を詰ませないことには役に立たない。そしてその経験は、フォローができる人間がいる状況の方が安全であるはずだ。

 レイヴンが伏し目がちになってため息を落とした。

 

「貴方も、ウォルターの意見に賛成なの?」

「別にそういうわけじゃない。……ただ、本人はどう言っているんだ?」

「年端もない子どもよ。求められた通りに動こうとするに決まってる。そもそも、そんな選択をさせるべきじゃないわ」

「そうか? お前がそいつの立場だったら、何歳だろうが決めるのは自分だと思うだろう」

 

 レイヴンが弾かれたように顔を上げた。

 丸くなった目に首を傾げて返す。何を意外に思うことがあるのだろう。

 

「……それは……、……でも」

「批難してるわけじゃない。そいつの意思をないがしろにするのは、お前らしくないと思っただけだ」

「……相手は子どもよ」

「それは判断を取り上げる理由になるのか?」

 

 唇を噛み締め、レイヴンが視線を落とす。

 考えるようにコーヒーの濁った水面を見つめて、長い間沈黙していた。

 特に追求するようなことでもない。黙って続きを待っていると、やがて、絞り出すように答えた。

 

「……多分、子どもが人を殺す選択を求められる状況自体が……()()()()()()んだと思う」

「そうか。このケースだと手遅れだな」

「手遅れだと思う? まだ、この先の人生を選ぶことができる年齢よ。まだ手を汚してない。……大人の勝手な思惑でここにつれてこられたなら、大人の勝手な思惑で、守られたっていいでしょう」

 

 少し驚いてレイヴンを見た。

 腹を括った強い眼差しが、まっすぐにコーヒーの水面を――その先に見える理不尽を睨み据えていた。

 

「なるほど。そういう考えもあるか」

「この子は私の手の届くところにいるんだもの。私は私で、私のしたいようにするわ」

「平和な生き方を強いるというわけか。いいな、お前らしい傲慢さだ。……そいつが反発して、結局この稼業に戻ってきたらどうする?」

「それは彼の選択ね。だったら、私が下手を打ったというだけの話」

 

 打てば響くように返ってくる言葉が、彼女がはっきりと選択したことをしらしめた。

 思わず、口角が上がる。

 共感はできない。自分ならと考えてしまうからだ。多分、彼女も自分もどこかが間違っていて正解ではなく、歪な判断をしているのだとは理解している。

 

「なら、とりあえずはウォルターの攻略からか。難敵だぞ」

「……燃えるわね」

「声のトーンが逆なんだが」

「水を! 差さないで!」

「まあそういきりたつな。要は、是非をさておきウォルターに要求を呑ませるという話だろう。一枚噛ませろ」

「……身を寄せさせて貰ってる時点で、十分頼ってるけど」

「気にするな。多分、ウォルターの攻略は将来的に役に立つ気がする」

「……将来……? 対立する未来があるってことなら、歓迎できないんだけど……」

「その系統じゃない。安心しろ。ともあれ作戦を立てるぞ」

「……何かごまかさなかった?」

 

 

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