―――未練がなかった、と言えば嘘になる。
たとえ最初から定められた裏切りであったとしても、確かに自分は彼らの仲間だったのだから。
だが、後悔はしていない。これが自分の使命。
未来を切り開く力を託し、その進む道を切り開くこと。
今ならはっきりとわかる。
彼なら、彼であれば、その力で未来を救い、絶望に飲まれた友の心を救ってくれることを。
成すべきことは全てやり遂げた。使命は終わった。
あとはただ、無限の重力によって引き伸ばされたこの時間の中に身をゆだねるのみ。
この意識も、もう間もなく消えるだろう。
(長かったな)
脳裏を記憶が通り過ぎていく。これは走馬灯と言うものだろうか?
それで、全く場違いにも苦笑した。生き物ですらない、作り物のこの身にもそんなものが見えるとは。
目標を目指して邁進した日々。
強敵たちとのライディング・デュエル。
世界一の栄冠を掴んだ瞬間。
突如として始まった滅び。
荒野と化した世界。
出会った最後の同志たち。
模索と挫折の繰り返し。
その果ての、一度目の死。
新たな使命を得て送り出された日。
導くべき男との出会い。
記憶と引き換えに得た仲間。
希望を信じて邁進した、短くも充実した日々。
そして、対峙。
色濃く残る新しき日々の記憶に、そうか、と今更のように理解した。
あの場所、あのチーム。彼らと共に過ごした日々は本当に楽しかった。全ての使命を果たした今だから言えることだ。
彼らと共に、どこまでも歩んでいきたかった。
もはやあの場所に戻ることはない。あの日々に帰ることもできない。
だが、最後に見るのがあの記憶なら、悪くない。
そう、悪くない最期だ。
その、はずだった。
―――まだだ。
「!?」
全てを呑み込み消し去る重力の暗闇の中に、突如として声が響いた。
問いかける間もなく、その声が突きつける。
―――まだ、消えてはならん。
甲高い咆哮が轟き、同時に闇の中に別の色が混じる。
赤い何かが差し、灯り、光り、輝き、
―――お前にはまだ、やってもらわねばならないことがある。
そして、視界の全てを覆い尽くした。
「うおあああああっ!!?」
「……!?」
意識が闇から浮上する。反射的に身を起こして立ち上がると、そこには見慣れた景色が広がっていた。
曇天の夜空を戴く、ネオ童美野シティ。その大通りの真ん中に、彼は倒れていたのだ。
「どういうことだ……今のは、何だったんだ? なぜ僕はここに……」
ブラックホールに飲まれ、消えたはずの自分がなぜ存在しているのか?
ふと横を見ると、そこには既にアイドリング状態の愛機があった。
「デルタイーグル……!? お前まで……」
ライディングデュエルの負荷とブラックホールの重力、そしてリミットを無視しての最高速度。
それだけの無茶でボロボロになっていたはずのD・ホイールは、傷一つない完調状態で主を待っていた。
一体何がどうなっている?
事態を把握しきれず、というかまったく理解できず、ひたすら混乱する青年だが、状況は彼が落ち着くのを待ってくれるほど気が長くなかった。
不意に、辺りが濃霧に包まれ始めた。
今度は何だ、と混乱がピークに達した青年の耳に届いたのは、エンジン音でも足音でもなく、
「……蹄の音……か?」
この街では聞くはずのない音。元いた時代に人類がいた頃でも、限られた場所でのみ聞けた音。
霧の向こうに浮かんだ影を見咎めた青年は、叫んだ。
「何者だ!」
が、返事は返らない。さらに、霧の中から現れたその姿を見た青年は、驚愕に目を見開いた。
なぜなら、現れたのは人間ではなかったからだ。
人の形はしている。だが、そこにはあるべきものがない。目も耳も鼻も、それ以前に肉というものがない。
兜と鎧を纏い、マントを翻し、骨だけの馬に騎乗するそれは、騎士。骸骨の、騎士だった。
とはいえ、化け物程度ではもはや青年は慄かない。
もっと恐ろしいものを、彼は知っている。
「貴様が、そうか……」
「!? 僕を知っているのか? お前は一体……」
「我に名はない。名乗るべき名を、我はもはや持たぬ。赤き竜の導きによって、この地を訪ったに過ぎん」
「赤き竜だと……」
その名は知っている。
直接見たことは数えるほどだが、シグナーの力を持つ者を幾度となく導いてきた、赤いオーラを纏う竜の神。
それが、この怪物をこの地に導いたというのか。
「我はその意志により、貴様の力を試す。デュエリストよ、貴様の名を聞こう」
問われて一瞬、青年は迷った。
人としての名。
現身としての名。
そして―――彼らの仲間としての名。
そのどれを名乗るべきか?
「僕は……」
人としての名―――ジョニー。
現身としての名―――イリアステル滅四星、戦律のアンチノミー。
彼らの仲間としての名―――。
「……チーム5D's専属メカニック、ブルーノ!!」
選んだのは、忘れえぬその名。
「ならばブルーノよ、貴様の力を見せてもらおう。D・ホイールに乗るがいい」
言われた時には既に、青年―――ブルーノは愛機に飛び乗っていた。
最後の戦いの時のライディングスーツのままだが、赤いバイザーもヘルメットもあの時になくしてしまっている。ただ、機械仕掛けのこの体ならばさして問題にはならないだろう。
それよりも気になるのは、
「馬に乗ったままライディング・デュエルを?」
骸骨騎士。
骨だけの馬に乗り、左腕には明らかに生体組織で造られているデュエルディスクがあるが、まさかこれでライディングデュエルをするつもりだろうか?
「それでは、《スピード・ワールド2》がセットできないぞ」
「そんなものが必要だと、本当に思うのか?」
「何だって?」
聞き捨てならない問い返しに、ブルーノの語気がわずかに強まる。
しかし、骸骨騎士は全く動じるそぶりもなく、どころか物分かりの悪さを咎めるようにこう続けた。
「スピードが魔法となる、高速の世界のデュエル……だが、我に言わせればそれは、進化の行き詰まりでしかない」
「進化の……行き詰り?」
「そうだ。スピードスペル? 消えぬフィールド魔法? その先に何があるのだ?」
「何って、それは」
言いかけて、ブルーノはその続きを口に出せなかった。
確かに、ライディングデュエルのルールは、通常の……スタンディングデュエルとは大きく異なる。
専用のスピードスペルカード。
それ以外の魔法カードに対しダメージのペナルティを付与する《スピード・ワールド》系統のフィールド魔法。
それは、ブルーノのみならず、ライディングデュエルに携わる者にとって、息をするほどに当たり前のことだった。
人々を熱狂させ、多くのデュエリストをスピードの世界に誘った、新たなるデュエル。
だが、いざこうしてそれに「否」を突き付けられると、反論が出て来ない。
スタンディングデュエルとは全く違う戦い方を求められるライディングデュエル。
世界的エンターテインメントでもあるそれはしかし、相応の影を生んでもいる。
(……そう、なのか?)
脳裏をよぎったのはかつてのチームメイト、龍亜と龍可の顔だった。
あの双子は遊星やジャックにはまだまだ及ばないとはいえ、才能あるデュエリストだった。だが、全世界で隆盛を極めるライディングデュエルにおいて、あの二人は全くその力を発揮できないのも事実。
片や装備魔法、片やフィールド魔法。
ライディングデュエルでは使用できないカードを軸に置く、あの二人のようなデュエリストはどうすればいいのか?
内心の迷いを読み取ったかのように、骸骨騎士が続ける。
「スピードの世界に入り込み、そこに当てはまらぬものを置き去りにすることを、貴様らは進化と呼ぶのか?」
「それは……」
「我はそうは思わぬ。我に言わせれば、それは停滞だ。スピードを求め続け、そのスピードで同じところを巡り続けているに過ぎん。……そうだな。俗な話をすれば、貴様のいた時代。魔法カードと罠カード、どちらが多かったのだ?」
聞かれてようやく、ブルーノはその意図に気づいた。
(罠カードの方が圧倒的に多かった……! そういう、ことなのか!?)
ブルーノが……厳密にはそのオリジナルとなった人物が元いた時代では、ライディングデュエルが常識となっていた。
だが、今思えば、あの時代に魔法カードと言えばスピードスペルだった。罠カードのバリエーションは多かったが、逆に魔法カードで新規公開されるのは必ずスピードスペル。
ライディングデュエルこそが最先端、進化の象徴。
さらなるスピードを、さらなる進化を。そうしてスタンディングデュエルを徐々に過去のものとしたその在り方は、本当に進化だったのだろうか?
無論、確かに相応の発展はあった。
デュエルは進化していた。進化した、はずだった。誰もがそう思っていた。
スピードの世界で進化したのだと。
「その先にあったのが破滅では、笑い話にもならん。我も偉そうなことを言える身ではないが……それは、スピードの世界で『のみ』進化できるという固定観念を生んだに過ぎん。違うか?」
「………………」
「そのような窮屈な縛りなどなくとも、ライディングデュエルはできる。ゆえに見せよう―――我らの“
「……いいだろう」
気づけば、デルタイーグルがいつの間にかデュエルモードを起動していた。
セントラルへのデュエル申請も終了し、デュエルレーンが展開されつつある。
「「ライディングデュエル! アクセラレーション!」」
デュエル開始の宣言と共に、ブルーノはアクセルを全開まで踏み込んだ。
宣言と共に、ブルーノはアクセルを限界まで踏み込んだ。いくらわけのわからない相手だろうと、乗っているのは馬。
D・ホイールに追い付けるはずがない。
そう思っていたのだが、
「っ、速い……!!」
「我が愛馬Dホース……凡百のD・ホイールに後塵を拝する程、鈍間ではない!!」
加速力が圧倒的に過ぎた。凡百どころか最新鋭のワンオフ機であるデルタイーグルが、ギリギリ追随できる程度の猛烈なスピードだ。
「だが……そうだな、そこまで急ぐのならば先攻は譲ろう」
「くっ……!」
Dホースの足並みが一瞬ゆるみ、その間にデルタイーグルが第一コーナーを取る。
ブルーノ:LP4000
骸骨騎士:LP4000
「僕の先攻、ドロー!」
ブルーノ:手札5→6
「《TG ラッシュ・ライノ》を召喚!」
先陣を切らせるべく呼び出したのは、サイボーグとなったサイの獣人。
ブルーノのデッキは【TG】、機械の特性を持つモンスターたちの集団だ。が、
(!? 機械族になるテキストが消えてる!? これは……いや、後だ!)
幸いその他の効果やステータスには何も変化はない。
ひとまず戦術そのものを切り替える必要はなさそうだ。
「カードを2枚セットし、ターンエンド!」
ブルーノ:手札6→3
(ひとまずはこの盤面で様子を見―――)
「何を恐れておるのだ?」
思考を斬るように割り込む骸骨騎士の声。
威圧でも挑発でもない、ただの問い。だがそれだけの言葉が、ブルーノの心に奇妙に大きく響いた。
(僕が……恐れている!?)
「まあ、無理もないがな……。我がターン、ドロー」
骸骨騎士:手札5→6
「《劫火の槍術師 ゴースト・ランサー》を特殊召喚!」
デルタイーグルから一定の距離を空けて追ってくるDホース。
それを操る骸骨騎士が呼び出したのは、長大な槍を持ち、炎のごときオーラを纏った死者の戦士。
骸骨騎士:手札6→5
「ゴースト・ランサーは、貴様のフィールドにのみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できるのだ」
「《サイバー・ドラゴン》と同じ効果か!」
「ゆくぞ! ゴースト・ランサーで貴様のモンスターを攻撃! ヘル・スキューア!!」
瞬間、槍を地面に突き立てたゴースト・ランサーが棒高跳びの要領で跳躍、そのままラッシュ・ライノの頭上を取ると背後から槍で刺し貫いた。
サイのサイボーグが光の粒子と化して霧散する。
「ラッシュ・ライノを粉砕! 400のダメージを受けてもらおう」
「くっ……うおおおおっ!?」
ブルーノを襲ったのは、明らかに通常のデュエルではありえない物理的衝撃。
予想外のダメージにデルタイーグルが一瞬蛇行しかけたが、反射にものを言わせてすぐさま立て直す。だがその数秒の間に、Dホースがあっさりと先行していた。
ブルーノ:LP4000→3600
「なん、だ、今のは……!?」
「バーチャル・ソリッド・フィール。モンスターの攻撃によるダメージは物理的衝撃を生み、それがプレイヤーに降りかかる。もっとも我がフィールは仮想ではなく、れっきとした実体だがな」
「……!?」
事態を図りかねるブルーノだが、デュエルの最中に余計なことを考えるのは敗北につながる。
頭を無理矢理切り替え、全てを戦いにふりむける。
「罠カード、《リベンジ・リターン》を発動! モンスターがバトルで破壊された時、カードをドローする!」
ブルーノ:手札3→4
「我はカードを1枚伏せ、ターンを終了する」
「ならばこのエンドフェイズ、フィールドで破壊され墓地に送られたラッシュ・ライノの効果発動! 同名以外のテックジーナス1体をデッキから手札に加える! 僕は《TG ギア・ゾンビ》を手札に加える!」
ブルーノ:手札4→5
骸骨騎士:手札5→4
「さらにこの瞬間、《リベンジ・リターン》の効果処理を行う! このターンに破壊されたラッシュ・ライノを復活させる!」
ダメージこそ受けたものの、カード・アドバンテージを確実に稼ぐブルーノ。
だが、骸骨騎士はまだまだ本気を見せていない。それをわからず図に乗るほど、ブルーノは素人でも盲目でもない。
(奴は今のターン、通常召喚をしていない……追撃しようと思えばできたはずだ。まだ様子を見ているというわけか……)
「僕のターン! ドロー!」
ブルーノ:手札5→6
「手札の《TG ギア・ゾンビ》の効果発動! 場のテックジーナス1体を対象に、そのモンスターの攻撃力を1000ポイント下げることでこのカードを特殊召喚する!」
ラッシュ・ライノの攻撃力を大きく削り、歯車のようなもので強化されたサイボーグゾンビがブルーノのもとに出現する。
これでチューナーとチューナー以外のモンスターが揃った。
(こいつ相手に出し惜しみをしている余裕はない! このまま一気にアクセルシンクロまで持っていく!)
だが、骸骨騎士はその狙いを既に読んでいた。
「我はこの瞬間、永続罠《サモンリミッター》を発動! お互いのプレイヤーは、1ターンに行える召喚・反転召喚・特殊召喚の回数が、全て合わせて合計2回となる!」
「何!?」
「つまり、貴様はこのターン、シンクロ召喚をすればそれ以上のモンスターは呼べんということだ」
高速展開に大ブレーキをかけられたブルーノだが、だからと言ってこれで止まるほど甘い男ではない。
「だが、お前の場には僕の攻撃を止めるものはない! このままいくぞ、レベル4のラッシュ・ライノにレベル1のギア・ゾンビをチューニング! シンクロフライトコントロール……リミッター解放、レベル5!」
ブルーノの宣言と共にギア・ゾンビが光のリングに変わり、その中に突入したラッシュ・ライノが自身のレベルと同じ、4つの星へと変化する。
「ヴァーサタル・トランスミッションOK! ブースター注入120%、オールクリア! G0、シンクロ召喚!」
「カモン! 《TG パワー・グラディエイター》!!」
星を貫く光が膨れ上がり、その中から斧と盾を装備したサイボーグの闘士が出現する。
未知の相手にぶつけるには、これが最適だ。
(だが、早めに《サモンリミッター》を破壊しないと……まずは攻撃だ!)
「バトル! パワー・グラディエイターでゴースト・ランサーを攻撃!」
ブースターを吹かしたパワー・グラディエイターがゴースト・ランサーに追いすがり、向き直ったそこを狙いすまして斧を一閃した。
―――マシンナイズ・スラッシュ!
骸骨騎士:LP4000→3700
「ぬううっ……!」
先ほどブルーノが受けたのと同じような衝撃が発生し、それが骸骨騎士を襲ったのをブルーノ自身も手ごたえとして感じていた。
だが、デルタイーグルにはこんなシステムはなかったはず。
(……伝説では聞いたことがあるけど……闇のゲームってやつなのか、これが?)
「僕はさらにカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
ブルーノ:手札6→4
「やるな、ブルーノ……我がターン、ドロー」
骸骨騎士:手札4→5
「《サモンリミッター》の効果はお互いに作用する! 召喚できるのは2回だぞ」
「百も承知。我は、魔法カード《劫火の祭礼》を発動!」
「何!? そうか……!」
一瞬耳を疑ったブルーノだが、このライディングデュエルでは《スピード・ワールド2》が適用されていない。
魔法カードを普通に使うことが出来るのだ。
《劫火の祭礼》
通常魔法
「劫火の祭礼」の①②の効果は1ターンに1度、どちらか1つしか発動できない。
①:500LPを払って発動できる。デッキからアンデット族モンスター1体を墓地に送り、自分の墓地または除外状態の自分のアンデット族モンスター1体を選んで手札に戻す。
②:墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキからアンデット族のチューナー1体を手札に加える。
「これにより、我はライフを500支払い、デッキから《劫火の眠り姫ゴースト・スリーパー》を墓地に送り、墓地のゴースト・ランサーを手札に戻す」
骸骨騎士:LP3700→3200 手札5→5
「さらに、墓地に送られたゴースト・スリーパーのモンスター効果を発動! デッキより《幽合-ゴースト・フュージョン》を手札に加える」
骸骨騎士:手札5→6
「フュージョン……!? まさか!」
そのカード名を聞いて、骸骨騎士の狙いがわからないブルーノではない。
ライディングデュエルではめったに聞くことのない、しかしデュエルモンスターズにおいて最古の召喚法の一つとして知られる、それが。
「我が力の一端を見せよう、ブルーノ! 我は、魔法カード《幽合-ゴースト・フュージョン》を発動! このカードは、我の手札、およびフィールドより融合素材となるアンデット族モンスターを墓地に送り、融合させる。だがこの時、我のライフが相手よりも少なければ、素材となるモンスターを1体のみ、デッキか墓地から除外することで賄うことができる!」
「なんだって!? デッキ融合!?」
「我は手札のゴースト・ランサーを墓地に送り、デッキの《劫火の翼竜ゴースト・ワイバーン》を除外!」
骸骨騎士の頭上に力の渦が生まれ、2体のモンスターがそこへ飛び込んでいく。
その向こうから、何かの咆哮が聞こえた。
「2体の亡者の魂が、冥界の主を呼び覚ます! 現世の扉を破り降臨せよ!」
「幽合召喚! いでよ、《冥界龍 ドラゴネクロ》!!」
次の瞬間、渦を向こう側から空間ごと粉砕し、翼を大きく広げた鬼とも悪魔ともつかぬ形相のドラゴンが姿を現した。
よく見るとその肉体は筋肉をあらわにしたような造形になっており、肉の筋のうち数本は途中で切れているが、意にも介さず―――実際問題ですらないのだろう―――敵を見定めて唸りを上げる。
『グオオオオオオ!!』
「なん、だ、このドラゴンは!? この禍々しいオーラ……ジャックのスカーレッド・ノヴァとも違う……!」
記憶を探るブルーノだが、その中に一つのカードが思い当った。
《ヒドゥン・ナイト-フック》。歴史改竄前のWRGPにて、チーム・カタストロフがプラシドから与えられた闇のカード。
ドラゴネクロの放つ気配はあのカードに近い。だが、違う。圧倒的に規模が違う。
「フフフ……行くぞブルーノ! ドラゴネクロよ、パワー・グラディエイターを攻撃せよ!」
骸骨騎士の命令を受け、ドラゴネクロがパワー・グラディエイターに文字通り食らいついた。
だが、戦士の体が破壊されることはなく、代わりに黒い何かがそこから引きはがされるのが見えた。
―――ソウル・クランチ!!
ブルーノ:LP3600→2900
「ぐぅっ!?」
「この瞬間、ドラゴネクロの効果発動! このモンスターと戦闘を行った相手モンスターは、その戦闘によっては破壊されぬ。だが、その攻撃力は0となる!」
そして、その黒い何かが、パワー・グラディエイターと同じ姿を取ってドラゴネクロと並ぶ。
「さらに、その相手モンスターの魂を抜き取り、同じ攻撃力を持つダークソウルトークン1体を特殊召喚する!」
「これはっ……!」
「追撃だ! パワー・グラディエイター・ダークソウルの攻撃!」
「トラップ発動! 《防壁突破》! バトルフェイズに特殊召喚されたモンスターを破壊する!」
斬りかかって来たパワー・グラディエイターの影が霧散する。
被害は最小限に抑えたものの、ドラゴネクロへの対処法は今はない。
「ほう、やるな。さすがにこの程度では折れぬか」
「当たり前だ! これでも最強チームの一員だからな」
「フッ……我はカードを1枚伏せ、エンドフェイズにゴースト・ワイバーンの効果を発動。このカードが除外されたターンのエンドフェイズ、我はデッキからレベル2以下のアンデット族・チューナーモンスターを1枚墓地に送る。我は《シノビネクロ》を墓地へ送り、ターンエンドだ」
骸骨騎士:手札6→3
「あのモンスターは何だ……僕のターン!」
ブルーノ:手札4→5
徐々に追い込まれていることをブルーノは理解していた。
《サモンリミッター》による召喚制限、ドラゴネクロによるモンスターの無力化。このままではどんなモンスターを召喚しても切り返されてしまう。
何より、高速・連続での展開を得意とするシンクロデッキにとって、召喚行為に回数制限が設けられたこの状況は非常に戦いづらい。
「だが、やるしかない……僕は《TG サイバー・マジシャン》を召喚!」
出現したモンスターは、白い装束を纏った機械魔術師。
その手が振り向けられた先は、ブルーノの手札だ。
「サイバー・マジシャンはテックジーナスのシンクロ素材にする場合、手札のテックジーナスを素材に選ぶことが出来る! 手札のレベル4、2体目のラッシュ・ライノにレベル1のサイバー・マジシャンをチューニング! リミッター解放、レベル5! ブースターランチOK、インクリネイションOK! オールクリア!」
「GO、シンクロ召喚! カモン! 《TG ワンダー・マジシャン》!」
チューニングによって現れた2体目のシンクロモンスター、サイバー・マジシャンに似た装束を纏う女魔術師。
掲げた両手が生み出した光弾が、骸骨騎士のフィールドへ飛来する。
「ワンダー・マジシャンのシンクロ召喚に成功した時、効果発動! 場の魔法・罠カードを1枚破壊する! 《サモンリミッター》を破壊だ!」
「だが、それは想定内だ。言っておくが、ドラゴネクロの効果はこやつが倒される時にも発動する」
「! つまり、戦闘を挑めば実質、その攻撃力をお前に与えてしまうということか」
何とも対処に困るモンスターだ。
攻撃をしてもされても、その相手となるモンスターは無力化され、攻撃力がトークンとして骸骨騎士のしもべと化してしまう。
つまり返しのターンでの反撃が確定するのだ。
(僕のライフポイントは3000を切っている……ここでブレード・ガンナーを呼んで攻撃すればドラゴネクロは倒せるが、ダークソウルトークンの攻撃で僕は負ける。それを避けるには……)
手札を再度確認し、ブルーノは守りの手立てを思案する。
(この方法しかない、か)
数秒の後に結論を出し、同時にデルタイーグルを一気に加速させた。
Dホースは当たり前のような調子で平然と並走してくるが、元より振り切るのが目的ではない。
「行くぞ! レベル5のパワー・グラディエイターに、レベル5のワンダー・マジシャンをチューニング! リミッター解放、レベル10! メイン・バスブースター・コントロール、オールクリア!」
「無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め!」
瞬間、デルタイーグルの加速が限界を超える。
周囲が光に覆われ、骸骨騎士の視界からその姿が消えた。
「ム……来るか」
「G0! アクセル・シンクロ!!」
「カモン! 《TG ブレード・ガンナー》!!」
そして、Dホースの後方から出現したデルタイーグルに続き、緑の装甲と銃剣の右腕を持った戦闘ロボットが飛来する。
消えては現れ、現れては消え、不規則な軌道を描きながらフィールドに降り立った。
「バトルだ! ブレード・ガンナーでドラゴネクロを攻撃!」
―――シュート・ブレード!!
斬撃と銃撃のコンボが冥界龍を打ち砕く。
だが、敵もそれを無視してブレード・ガンナーに食らいつき、その魂を奪い取った。
骸骨騎士:LP3200→2900
「我が決闘龍を葬るか……! だが効果により、ブレード・ガンナーの攻撃力を消去し、その攻撃力3300を持つダークソウルトークンを生成する! これで次のターン、貴様のライフは0となるぞ」
「そんなことをさせる気はない! 僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
ブルーノ:手札5→2
「虚勢でなければ良いがな。我がターン、ドロー!」
骸骨騎士:手札3→4
「ならば、我は容赦なく行かせてもらおう。我は《劫火の召喚士 ゴースト・サモナー》を召喚!」
「新しいモンスター……!」
「さらに、このカードの効果を発動! 墓地のアンデット族を1枚除外することにより、デッキからアンデット族を1体、守備表示で特殊召喚できる! 我は《シノビネクロ》を除外し、デッキより《劫火の防人 ゴースト・ガードナー》を特殊召喚する!」
《劫火の召喚士 ゴースト・サモナー》
効果モンスター
☆4/闇属性/アンデット族
ATK1500/DEF1300
「劫火の召喚士 ゴースト・サモナー」の①の効果は1ターンに1度しか発動できない。
①:自分の墓地のアンデット族モンスター1体を除外して発動できる。デッキからアンデット族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはフィールドを離れた場合に除外される。
骸骨騎士が呼び出したのはローブを纏った冥界の僧侶。
怪しげな呪文が流れ出したかと思うと、その隣に巨大な盾を構えた屍の兵士が並び立った。
のみならず、さらに忍者装束のゾンビが音もなく降り立つ。
「モンスターが3体!?」
「《シノビネクロ》の効果だ。このカードは墓地から除外された場合、特殊召喚される! ただし、この状態でフィールドを離れれば、そのまま除外されるがな」
先ほど墓地にモンスターを送ったのはこれが狙いだったようだ。
シンクロ素材を揃えた骸骨騎士がさらに動く。
「我はさらに、ゴースト・ガードナーの効果発動! 場のこのカードを除外し、墓地のアンデット族モンスターを復活させる! いでよゴースト・ランサー!」
「!」
「この効果でよみがえったモンスターもまた、フィールドを離れた場合除外される。さらに、《シノビネクロ》の効果! 我の墓地からアンデット族が復活した時、カードをドロー! その後、手札を1枚捨てる」
骸骨騎士:手札4→3→3
わずかに手札1枚を消費したのみでモンスターを3体増やして見せた、その手際にさすがのブルーノも瞠目せざるを得ない。
しかも手札交換と墓地肥やしも進めている。言葉にすれば何ということはないが、それを当然のように出来るデュエリストというのは、実のところそこまで多くはない。
「我はここで、レベル4のゴースト・サモナーに、レベル2の《シノビネクロ》をチューニング! シンクロチューナー、《イモータル・ドラゴン》をシンクロ召喚!」
「シンクロチューナー!? まさか……!」
「残念だが、我には揺るがなき境地というものはない。だが、我は《イモータル・ドラゴン》の効果を発動! デッキからアンデット族を墓地に送り、《イモータル・ドラゴン》のレベルを、墓地に送ったモンスターとのレベルの差の数値とする。我が墓地に送るのは、レベル2の《タスケルトン》! これにより、《イモータル・ドラゴン》のレベルは2と6の差分、4となる」
どうやらいよいよ本気で攻め落としに来たらしい。
警戒度を高めるブルーノの前で、骸骨騎士のモンスターたちが攻撃態勢に入る。
「バトルフェイズだ。この攻撃をしのげねば貴様の負けだ、ブルーノ!」
「だからこそ、備えはしてある! ブレード・ガンナーの効果発動! 相手のターンの時、墓地のラッシュ・ライノを除外し、このカードを次のスタンバイフェイズまで除外できる。だがその前に、罠カードオープン! 《立ちはだかる強敵》!」
「むっ……このコンボ、そういうことか」
その注意を一身に受けるブレード・ガンナーが、不意に煙幕を張り姿を消す。
アンデット達が敵の姿を求めて視線を彷徨わせるが、それはむなしく空を見つめるのみだった。
「《立ちはだかる強敵》の効果により、相手モンスターはブレード・ガンナーを攻撃しなければならない。だが、ブレード・ガンナーはその効果を受けたまま、このターンの間除外されている!」
「つまり、我のモンスターは誰にも攻撃できぬというわけだ。やるな、ブルーノ……我はこれでターンエンドだ」
骸骨騎士:手札3
「僕のターン、ドロー! このスタンバイフェイズ、ブレード・ガンナーが特殊召喚される!」
ブルーノ:手札2→3
窮地をひとまずしのいだブルーノだが、相手の場にはモンスターが3体。特にダークソウルトークンをどうにかしないと次のターンでまた追い込まれることになる。
だが、既に手は用意されていた。―――完全にライディング用であるブルーノのデッキに、なぜ入っていたのかは謎だが。
(このカードは……)
「……速攻魔法《無許可の再奇動》! 機械族であるブレード・ガンナーに、デッキから機械族のユニオンモンスターを装備させる! 僕は《ユニオン・ドライバー》を装備させる」
「ユニオンだと?」
「さらに、《ユニオン・ドライバー》の効果を発動! 装備状態のこのカードを除外し、デッキからレベル4以下、かつ装備モンスターが装備できるユニオンモンスターを装備させる! 《バスター・ショットマン》、イクイップ!」
ブレード・ガンナーの前に青い機械戦士が現れ、それが変形して二連装の銃砲となり手の中に納まった。
「これにより、ブレード・ガンナーの攻撃力と守備力は500ダウンする」
「弱体化効果? 何かあるようだな、そのユニオンには」
完全に見透かされていた。
だが、今打てる最善手であることも事実。ならば突き進むのみ。
「バトルだ! ブレード・ガンナーで《イモータル・ドラゴン》を攻撃!」
「ほう、守備モンスターが狙いか」
「ゴースト・ランサーの効果は確認させてもらった。そいつは、EXデッキから現れたモンスター以外には戦闘破壊されないからな」
つまり、一度除外を経由して特殊召喚された今のブレード・ガンナーではゴースト・ランサーを破壊できないという話である。
「撃ち抜け、バスター・ショット!!」
キャノン砲が火を噴き、ワイアーム型の屍竜(にしては生き生きと咆哮を上げていたが)を粉砕する。
さらに、その余波が残る2体をも同じく粉砕した。
「《バスター・ショットマン》の効果発動! 装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、フィールドの同じ種族のモンスターをすべて破壊する!」
「なにっ!? 我のモンスターが、全滅だと……!」
一撃でフィールドを殲滅され、さすがの骸骨騎士も当惑する。
「ダークソウルトークンは消滅、ゴースト・ガードナーの効果で蘇生したゴースト・ランサーはゲームから除外される……やってくれたな、ブルーノ! これが貴様の力か」
「そうだ。そして、僕たちの力だ! ターンを終了する!」
ブルーノ:手札3→2
「なるほどな……! ならば、我も全力を出さねばならんようだ。我がターン!」
骸骨騎士:手札3→4
フィールドのカードが全てなくなり、一気に逆転されてしまった骸骨騎士だが、そこに動揺はない。
むしろ、このくらいはやってもらわなければ困る。そう思ってもいた。
「行くぞブルーノ! 我は、チューナーモンスター《劫火の舟守 ゴースト・カロン》を召喚!」
骸骨騎士の場に、まるで浮上するかのように渡し舟をあやつる亡者の船頭が姿を見せる。
「チューナー……!」
「そして、ゴースト・カロンの効果を発動! 相手の場にモンスターが存在し、我がフィールドに他のモンスターが存在しない場合に有効となる。このカードと墓地の融合モンスター1枚を除外し、そのレベル合計に等しいシンクロモンスターを特殊召喚する!」
「!? お前の墓地の融合モンスターは……!」
「その通り……! 我は墓地のレベル8、ドラゴネクロにレベル2のゴースト・カロンを強制チューニング!」
「冥界を流るる嘆きの河より、亡者の激流を逆巻き浮上せよ!」
「現れよ、我が力! 《冥界濁龍 ドラゴキュートス》!!」
霧の向こう、ハイウェイの下方に広がる海がはじけた。
水しぶきを連れてフィールドに現れたのは、ドラゴネクロに酷似した姿の闇のドラゴン。胴体部分に悪魔のような顔が浮かび、4枚に増えた翼を広げてフィールドを睥睨する。
「攻撃力4000……! これが奴の切り札か!」
「バトルだ。我は、ドラゴキュートスでブレード・ガンナーを攻撃! この攻撃は受けてもらおう!」
歯噛みするブルーノ。
もしブレード・ガンナーを除外効果で逃がせば、ドラゴキュートスの攻撃は自分を直撃する。そうなれば問答無用で終わりだ。
動く様子がないのを見て、骸骨騎士があらためて命令を下す。
「行け、ドラゴキュートス! ブルーノのしもべを粉砕せよ!」
―――
ブルーノ:LP2900→1700
「ぐぅぅっ……! 《バスター・ショットマン》を身代わりに破壊することで、ブレード・ガンナーは生き残る!」
「しぶといな。我は、2枚の永続魔法《劫火のヴェール》、《幽鬼の氷塊》を発動!」
デルタイーグルを再び追い抜いたDホース。
後を追うドラゴキュートスの周りに、炎の壁と氷の壁が出現した。
「《劫火のヴェール》は我の場の闇属性モンスターを効果による破壊から守り、さらに1ターンに1度、モンスターへの攻撃宣言時に効果を発動し、その攻撃を無効にする。そして《幽鬼の氷塊》は、我がフィールドの闇属性モンスターが相手の効果の対象となった時、墓地の闇属性モンスターを除外することでその効果から守る!」
「攻撃の無効化と、効果のシャットアウト……!」
「そして、ドラゴキュートスは戦闘では破壊されぬ不死の能力を持つ! この布陣、超えて見せよブルーノ! 我はこれにてターンエンド!」
骸骨騎士:手札1
「くっ……! 僕のターン!」
ブルーノ:手札2→3
まさに絶体絶命の状況だ。
2枚の永続カードと戦闘破壊耐性により、強固な壁と化したドラゴキュートス。さらに攻撃力4000となると、ブルーノのデッキにはあの怪物を単独で突破できるモンスターは乏しい。
切り札となるモンスターも、召喚を無効にする妨害効果を持っているが、既に場に出ているドラゴキュートスを排除することはできない。
(ドローカードは……ドリル・フィッシュか。これなら対処できるけど、《幽鬼の氷塊》を無効化する必要がある……ならば、これを使う時だ!)
「手札から、魔法カード《マジック・ポーズ》を発動! 永続魔法の効果をこのターンのみ無効化し、その数だけドローする!」
ブルーノ:手札3→4
「ほう」
「そして、《TG ドリル・フィッシュ》を召喚!」
厄介な防御カードを黙らせ、ブルーノが呼び出したのは頭からドリル型の角を伸ばしたサイボーグの魚。
レべルも攻撃力も低い、しかしこれに彼は逆転をかけた。
「バトルだ! ドリル・フィッシュでプレイヤーに攻撃!」
「直接攻撃だと? たかが攻撃力100……そういうことか!」
ドラゴキュートスの横を掻い潜って骸骨騎士に迫るドリル・フィッシュ。
その意図に気づいた骸骨騎士の前に、骨のようなものが割り込んだ。
「ならば、我は《シノビネクロ》の手札交換で墓地に送った、《タスケルトン》を除外し効果を発動! 対戦中に1度のみ、墓地のこのカードを除外することで攻撃を無効化する!」
「なっ!? これでは……!」
「大方そのモンスター、戦闘ダメージをトリガーに破壊効果を発動するのだろう? 甘いぞブルーノ! 貴様の力はこの程度か!」
完全に読まれている。
ドラゴキュートスを排除できないどころか、攻撃力100のドリル・フィッシュが無防備に残ってしまった。これでは次のターンの攻撃で終わりだ。
「さあ、どうする!」
「っ……カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」
ブルーノ:手札1
「ならば、我がターン! ドローだ!」
骸骨騎士:手札1→2
「そしてこのスタンバイフェイズ、ドラゴキュートスの効果を発動! 相手モンスター1体を対象に、そのモンスターの攻撃力を半減させ、その数値分のダメージを貴様に与える!」
「!?」
「当然対象はブレード・ガンナー! 1650のダメージを受けるがいい!」
「させるか! 墓地のテックジーナスを除外し、ブレード・ガンナーを次のスタンバイフェイズまで除外する!」
ドラゴキュートスの眼光がブレード・ガンナーを捉えんとするが、その瞬間に機械の銃士は姿を消していた。
だが、これで残ったのはドリル・フィッシュのみ。
(とはいえ、しのぐ手の一つくらいは用意しているか……様子を見るような余裕を見せれば一瞬で追いついて来るのは間違いない)
「我は魔法カード《幽明の宝札》を発動! お互いに自身の墓地のアンデット族モンスターを2枚まで除外し、その数だけドローすることができる! 我は墓地の《アルグールマゼラ》と《イモータル・ドラゴン》を除外し2枚ドロー!」
「ならば僕は、ギア・ゾンビを除外することで1枚ドローさせてもらう!」
骸骨騎士:手札2→3
ブルーノ:手札1→2
「《アンデットワールド》が発動していればさらに墓地のアンデット族を特殊召喚もできたが、贅沢は言うまい。そして《アルグールマゼラ》は除外された場合、守備表示で自己再生する効果があるが……貴様相手に的を増やす意味もない、その効果は発動しないことにしよう」
「っ……」
「行くぞ、バトルフェイズ! ドラゴキュートスよ、ドリル・フィッシュを攻撃せよ!」
手綱を打たれたDホースが雄々しくいななきを上げ、絶大なオーラを纏いながらデルタイーグルの背後を取り、さらに猛追して来る。
「食らえ、ブルーノ! これぞ我が最大のフィール、漆黒のダーク・ハウリングだ!」
「まだだ! 罠カード《リアライズ・ディフェンス》! ドリル・フィッシュを守備表示に変更!」
それでもしぶとくガードを試みるブルーノだが、骸骨騎士は容赦なく追撃をかける。
「ならば、我は速攻魔法《劫火の穂先》を発動! このターン、我の闇属性モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時! 墓地の劫火と名のつくモンスターを除外し、その攻撃力分のダメージを与える!」
「なっ!?」
「ゴースト・ランサーは既に除外されているゆえ、墓地よりゴースト・サモナーを除外! 1500のダメージを喰らうがいい!」
―――
ブルーノ:LP1700→200
「ぐわあああああああっ!!」
途轍もない衝撃に襲われ、制御を失ったデルタイーグルがスピンする。
壁に衝突する寸前でどうにか機首を返したものの、Dホースとの距離が開いてしまった。
「ほう、立て直したか。我がフィールを受けきるとはな」
「この、程度……遊星やZ-ONEの受けた痛みや苦しみに比べれば、どうということはない!!」
「フッ……なるほど、不動遊星か……」
なぜか、感慨深げにつぶやく骸骨騎士。だが、即座にその身に気迫が舞い戻る。
「我はこれにてターンエンド。だが、忘れてはいるまいな」
「…………」
「次の我のスタンバイフェイズ、ドラゴキュートスの効果が発動することを。そしてそれを回避しようとも、先ほど使った《劫火の穂先》は我のドローフェイズ、通常のドローの代わりに墓地から回収することができる!」
「!! 奴の墓地にはまだゴースト・カロンが……!」
つまり、
「貴様に残されたのは次のターンのみ! 我に勝利したくば限界を超えて見せろ、ブルーノ!」
「……僕のターン!!」
デュエルシーンを書くのはマジで大変……。
舞台設定は調べて分からなかった部分も多いので妄想が多分に入ってます。