遊戯王5D's-The After   作:辛麺焼き

10 / 21
第10話:遊星VS遊星!?

ジャックとの遭遇で負傷した遊星が退院したのは、クラッシュから1週間後のことだった。

その間、涼や鬼柳、牛尾が警戒を強めていたが、不気味なほど何も起きず―――むろん「普通の」トラブルは起きている―――平穏な時間が続き、それがかえって彼らを疲弊させていた。

 

ワーカーホリックと化しているのを懸念し、強硬措置に出たイェーガーのおかげで遊星はもうしばらくの間、ラボには行けない。

ならば仲間を少しでも手伝おうと、遊星号を飛ばしてシティからサテライトまでぐるぐると走り回って警戒を行っていた。

 

天候は曇り。

昼間だというのにどんよりと分厚い雲が垂れこめ、まるで空が落下してきているかのような錯覚を覚えるほど薄暗い。

 

「ダークシグナー……ジャック……そしてブルーノ……一体何が起きている……」

 

仲間と共に守ったはずの平穏が、じわじわと脅かされている。

それをほとんど実感として感じ取っている遊星は、一向に見えない状況の全景、すべきことの掴めない現状に少なからぬ焦りを覚えていた。

 

焦ってもどうにもならないと頭では理解しているが、感情をそれで制御できるわけでもない。

一体何が起きている? 一体どうすればいい? そればかりが頭の中でぐるぐると回り続けている。

 

 

―――だから、遊星がそれに気づかなかったのは、無理もないことだと擁護できなくもない。

 

 

「……何? なんだ?」

 

気が付けばハイウェイに差し掛かっていた遊星号を、後ろから別のD・ホイールが追ってきていた。

ライトのパッシングはライディングデュエルの申し込みのサイン。

遊星の脳裏をよぎったのは、あのジャックとの戦い。《スピード・ワールド2》のないライディングデュエル。それは通常のスタンディングデュエルと何が違うのか……とは思えなかった。

 

スピードの中で戦う、変わらないその一点。

だがあの戦いは確かに、何かを解き放ったような、そんな感覚があった。

 

今追ってきているのは、もしや例の敵なのか?

そうであればここで戦うことは手がかりに繋がる。そう考えた遊星はスピードを緩めて追ってくるD・ホイールと並ぶ。

が、次の瞬間彼を襲ったのは心底からの驚愕だった。

 

「!?」

 

なぜなら、並走し始めたそのD・ホイールは、今遊星自身が乗っているのと同じ、他でもない遊星号そのものだったからだ。

乗っている人物に至っては言うに及ばず。

ゴーグルの奥の目線こそ読めないが、ヘルメットも服装も、遊星そのものだった。

 

「お前は何者だ!?」

『その問いに意味はない』

 

発せられた声は遊星自身のものだったが、重なって別の深い男の声が聞こえる。

恐らく遊星の姿は擬態だ。重なって聞こえる何者かの声は、ダークシグナーとの戦いにおける地縛神の意志を思い出させる。

 

『見せてもらおうか、お前の力を』

「くっ……! ならば、お前の正体と目的をここで暴く!」

『その必要はない。この一戦で全てを決めるとしよう』

 

言う間にD・ホイールのシステムが勝手に切り替わり、ライディングデュエルの申請が始まる。

だが《スピード・ワールド2》はやはりセットされず、そのままシーケンスが進んでいく。

 

[レーンセレクション。使用可能な最適レーンをサーチ……デュエルレーン、セントラルに申請……オーソリゼーション]

[デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。ルート上の一般車両は直ちに退避してください]

 

並走する2台の遊星号が、展開された通路に沿ってデュエルレーンへ進入する。

 

 

「『ライディングデュエル、アクセラレーション!!』」

 

 

 

 

 

 

遊星:LP4000

???:LP4000

 

第一コーナーを取るまでの壮絶なデッドヒートの末、辛うじて遊星がタイヤ一つ分先行した。

 

(相手がわざわざオレの姿を取っているということは、デッキもコピーされている可能性が高い……ならば、先手を取る!)

「オレの先攻ドロー! 魔法カード《調律》を発動! デッキから《クイック・シンクロン》を手札に加え、デッキをシャッフルしたのち一番上のカードを墓地に送る!」

 

遊星:手札5→6→6

 

「! 墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果発動! デッキから《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」

 

このデュエル、最初に現れたのは遊星の切り込み役の機械戦士。

通常召喚ではなく、先攻ターンのためその真価は発揮できないが、攻撃だけがモンスターの仕事ではない。

 

「さらにオレは、手札の《ドッペル・ウォリアー》を墓地に送り、チューナーモンスター《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」

 

続けて、二頭身のガンマンの姿をしたシンクロンが現れる。投げ上げた的を無造作に打ち抜き、落ちてきたのは《ジャンク・シンクロン》の書割。

 

「このカードは、シンクロンと名のつくチューナーの代わりになることができるが、それ以外のシンクロ素材にはできない。そして、チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を通常召喚!」

 

と思いきや、書割を跳ね除けて全く同じ姿のチューナーがフィールドに飛び出す。

背中のリコイルスターターを引っ張り、早速エンジン全開だ。

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚できる! 来いっ、《ドッペル・ウォリアー》!」

 

遊星:手札6→4→3

 

一気に遊星の場に並ぶ4体のモンスター。

だが本番はここからだ。

 

「オレはレベル2の《ドッペル・ウォリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング! 集いし願いが、新たに輝く星となる! 光さす道となれ!」

 

「シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

機械仕掛けの格闘戦士、大きな右腕を持つ遊星のデッキの主力モンスターが早くも姿を見せる。

さらにその両横に、マシンガンを持った人形のような兵士が2体揃った。

 

「シンクロ素材となった《ドッペル・ウォリアー》の効果により、攻撃力400のドッペル・トークンを2体特殊召喚する! そして、《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分アップする! パワー・オブ・フェローズ!!」

 

《スピード・ウォリアー》も含めて3体分のモンスターの力を受け取り、《ジャンク・ウォリアー》のパワーが一気に跳ね上がる。

 

『1ターン目から攻撃力4000のモンスターを出して来るか……』

「まだだ! さらにオレは、レベル1のドッペル・トークンに、レベル5の《クイック・シンクロン》を《ジャンク・シンクロン》としてチューニング! 疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光さす道となれ!」

 

「シンクロ召喚! 現れよ、《ジャンク・ガードナー》!」

 

さらに、深緑の装甲で身を覆った、巨大な手足を持つ機械戦士が隣に現れる。

遊星自身もかなり久々に呼び出したが、前に呼び出したのはいつだっただろうか。

 

(前にこいつを使ったのは、確かパラドックスの……)

決闘疾走(ライディングデュエル)のさなかに考え事か? 随分と余裕だな』

「……! オレはカードをセットし、ターンエンド!」

 

遊星:手札3→2

 

『俺のターン!』

 

???:手札5→6

 

姿も声も遊星そのもの、しかしその本質は重なって聞こえる別の声の主。

果たしてどんな戦術を取って来るのか、と警戒する遊星の前で、謎の存在はドローカードを一瞥して展開を開始した。

 

『俺は《ジャンク・フォアード》を特殊召喚! このカードは自分のフィールドにモンスターがいない場合、手札から特殊召喚できる!』

「やはりジャンクデッキ……だが、あのモンスターは一体」

 

先陣を切ったのは細身のボディが印象的なジャンクモンスター。

遊星が使っているのと同じようなコンセプトのようだが、あんなモンスターは見たことがない。

 

『さらに、チューナーモンスター《ライティ・ドライバー》を召喚し、その効果を発動! デッキより《レフティ・ドライバー》を特殊召喚!』

「デッキから素材を呼び出すチューナーだと……!」

 

続けて現れたのは、プラスとマイナスのドライバーをそれぞれ持った、少女の姿をした機械仕掛けのチューナーモンスター。

遊星に負けじとあちらもモンスターを並べに来ている。

 

???:手札6→4

 

『特殊召喚に成功した《レフティ・ドライバー》は、自身のレベルをこのターンの間3に変更できる』

「!」

『さて……そちらのモンスターはトークン含め4体、そのうちシンクロが2体か。となれば《ジャンク・ガードナー》が邪魔だな。俺は、レベル3の《ジャンク・フォアード》と、レベル3となった《レフティ・ドライバー》に、レベル1の《ライティ・ドライバー》をチューニング! モンスターをシンクロ召喚!』

 

『光を切り裂け! 《セブン・ソード・ウォリアー》!!』

 

チューニングの光が球状に形成され、その中から飛び出してきたのは七つの刀剣を装備した戦士の姿。

やはり、見たことのないモンスター―――のはずだが、遊星は強い既視感を覚えていた。

 

「あのモンスターは……!?」

『さらに、装備魔法《災いの装備品》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備する』

 

刀剣の戦士に装着されるアミュレット。

そこから発せられる力が、戦士の力を削り取る。

 

『装備モンスターの攻撃力は、俺の場のモンスター1体につき600ダウンする』

「攻撃力を下げた?」

『狙いはこっちだ。《セブン・ソード・ウォリアー》、効果発動! 装備カードを装備した時、相手に800ダメージを与える!』

 

―――イクイップ・ショット!

 

遊星:LP4000→3200

 

「ぐっ!?」

 

先日ジャックと戦った時と同じ、物理的な衝撃が遊星号を襲う。

あの時と比べればダメージの少なさゆえか、走行に影響が出るほどではないが、その向こうに感じ取れるプレッシャーのようなものが尋常のそれではない。

この存在は一体何者なのか?

 

『さらに行かせてもらう。俺は魔法カード《シンクロ・クリード》を発動!』

 

???:手札4→3→4

 

『そして、《セブン・ソード・ウォリアー》のさらなる効果を発動! 1ターンに1度、自身の装備カードを1枚、墓地に送ることができる。俺は《災いの装備品》を墓地に送るが、この時《災いの装備品》の効果を発動。さらにチェーンで《セブン・ソード・ウォリアー》の新たな効果を発動させてもらう』

 

アミュレットを外した《セブン・ソード・ウォリアー》が、それを《ジャンク・ウォリアー》目掛けて投げつける。

その横で、《ジャンク・ガードナー》の守りをすり抜けて一本の剣が突き刺さっていた。

 

「何!?」

『《災いの装備品》はフィールドから墓地に送られた時、相手モンスターに装備できる。さらに《セブン・ソード・ウォリアー》は自身の装備カードが墓地に送られた時、相手モンスター1体を破壊する! これにより《災いの装備品》を《ジャンク・ウォリアー》に装備し、モンスター効果により《ジャンク・ガードナー》を破壊した』

「くっ……だが、墓地に送られた《ジャンク・ガードナー》の効果発動! 《セブン・ソード・ウォリアー》を守備表示に変更する!」

 

散り際に、というか墓地から《ジャンク・ガードナー》が身を乗り出してはなって来た衝撃波が《セブン・ソード・ウォリアー》を押しとどめる。

しかし、それは謎の存在の予想の内。

 

『ならば俺は、魔法カード《ジャンク・コール》を発動! 自分フィールドにチューナーが存在しない場合、デッキからジャンクと名のつくモンスターを特殊召喚する!』

「なに!?」

『来い、チューナーモンスター《ジャンク・ルーラー》!』

 

???:手札4→3

 

『手札を1枚墓地に送り、《ジャンク・ルーラー》の効果を発動! 召喚または特殊召喚した時、墓地のジャンクモンスター1体を特殊召喚できる! 俺は墓地の《ジャンク・フォアード》を対象とする』

「これは……!?」

『2体のモンスターをチューニング! 大地の痛みを知る傷だらけの戦士よ、その健在を示せ!』

 

『シンクロ召喚! 現れよ《スカー・ウォリアー》!!』

 

追撃に現れたのは体の右半分を機械化し、あちこちに包帯を巻いた満身創痍の戦士。

そのボロボロの姿とは裏腹に闘志と隙のなさは本物で、まさに歴戦の勇士であることを示している。

 

『これにより《災いの装備品》の効果で、《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力はさらに600ダウン。2800まで下がる。さらに、たった今墓地に送った魔法カード《代償の宝札》の効果発動! 手札のこのカードが墓地に送られた場合、俺は2枚ドローしなければならない』

 

???:手札3→2→4

 

結果的に、手札交換とシンクロモンスターの追加を同時にやってのけたことになる。

 

「だが、それでも《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力の方が上だ!」

『ならば、そこのトークンを狙うだけだ。バトルフェイズ! 《スカー・ウォリアー》でドッペル・トークンを攻撃!』

 

―――勇敢な短剣(ブレイブ・ダガー)

 

遊星:LP3200→1500

 

「ぐあああっ!?」

 

先の効果ダメージに倍する衝撃が襲い掛かり、遊星号が大きく蛇行する。

数秒で立て直したが、相手は並走したまま。あえて速度を緩め、遊星が立て直したと見るや加速していった。

 

「くっ……トラップ発動! 《緊急警戒指令》! 自分のモンスターが相手の攻撃で破壊され、オレが1000ポイント以上のダメージを受けた時、フィールドのシンクロモンスターの数だけドローできる!」

『3枚のドローか。全くの無策ではなかったようだな……俺はカードを伏せ、ターンエンドだ』

「オレのターン!」

 

???:手札3→2

遊星:手札2→5→6

 

手札こそ回復したが、ライフを大きく削られた遊星。

一応想定の範囲内ではあるが、このターンで切り返さなければ負けだ。

 

『先に言っておくが、《スカー・ウォリアー》がいる限り他の戦士族を攻撃することはできない。そしてこのモンスターは1ターンに1度、バトルでは破壊されない』

「! ならば……オレは《シンクロン・エクスプローラー》を召喚!」

 

そのために遊星が呼び出すのは、ドラムのような胴体に手足のついた赤いロボット。

目から光を放ち、墓地のシンクロンを探し出す。

 

「このモンスターの召喚に成功した時、墓地のシンクロンと名のつくチューナーを特殊召喚できる! 甦れ、《ジャンク・シンクロン》!」

『ほう?』

「さらに、同じレベルのモンスターが2体以上存在することにより、《スロワースワロー》を特殊召喚!」

 

遊星:手札6→4

 

『《スピード・ウォリアー》を放置したのが裏目に出たか』

「レベル1の《スロワースワロー》とレベル2の《シンクロン・エクスプローラー》、《スピード・ウォリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング! 集いし闘志が、怒号の魔神を呼び覚ます! 光さす道となれ!」

 

「シンクロ召喚! 粉砕せよ、《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

出現したのは四つの腕を持つ黒と金のスーパーロボット。

遊星のモンスターは全体的にロボットテイストのものが多いが、これはその中でもヒロイックな姿をしている。そして、能力もその姿に恥じるものではない。

 

「このモンスターのシンクロ召喚に成功した時、素材となったチューナー以外のモンスターの数まで、相手の場のカードを破壊できる! オレは《スカー・ウォリアー》と伏せカードを選択する!」

『そう簡単に突破できると思うな! 俺はそれに対し、リバースカード《もの忘れ》を発動! 《ジャンク・デストロイヤー》の効果を無効化し、守備表示に変更する!』

 

だが、不意に放たれた閃光がその回路を乱し、危機を察知した《ジャンク・デストロイヤー》はその場で身を固めてしまった。

 

「何だと!?」

『さっきのお返し、というわけではないがな。さあ、どうする?』

「ならば……無理矢理にでも押し通す! 《ジャンク・ウォリアー》を守備表示に変更し、手札を1枚捨てて《カード・フリッパー》を発動! フィールドのモンスター全ての表示形式を変更する!」

 

遊星:手札4→2

 

『なるほど、これで攻撃モンスターを確保したか。だが《スカー・ウォリアー》は守備表示になったぞ?』

「構うか、バトルだ! 《ジャンク・デストロイヤー》で《スカー・ウォリアー》を攻撃! デストロイ・ナックル!」

 

射出されたロケットパンチを、傷だらけの戦士は短剣で切り払い、その身で受け止め耐えしのぐ。

しかし、そこに追撃の鉄拳。

 

「さらに《ジャンク・ウォリアー》の攻撃! スクラップ・フィスト―――!!」

『むうっ……!』

 

不退転の戦士も連続攻撃には耐えきれず、爆発と共に姿を消す。

だが、

 

『《セブン・ソード・ウォリアー》は守り切った、これで十分だ』

「くっ……! オレはこれでターンエンド!」

 

想像以上の守りの硬さに、遊星はなかなか攻め切ることができない。

一番厄介な《セブン・ソード・ウォリアー》を残してしまったのがあまりにも痛いが、《スカー・ウォリアー》まで残すよりはマシだ、と自分を説得する。

 

『俺のターン!』

 

???:手札2→3

 

(む……装備魔法が手札にこないか)

 

対する謎の存在の方も、見かけほどの余裕はなかった。

遊星は強い。心に迷いを抱え、実戦を離れて時間の経った今もなお。

今は守れているが、隙を見せればそのまま食い破られるのは自明の理。

 

(いいだろう、ならば次だ。抗って見せろ、不動遊星)

『俺は永続魔法《天輪鐘楼》を発動する。そしてチューナーモンスター、《ガード・シンクロン》を召喚する!』

「!」

 

チューナーが出てきたのなら、その後の選択肢は決まっている。

場にいるのは《セブン・ソード・ウォリアー》、レベルは7。

 

(合計レベル8……?)

 

まさか、という思いが遊星の脳裏をよぎる。

 

『俺はレベル7の《セブン・ソード・ウォリアー》に、レベル1の《ガード・シンクロン》をチューニング!』

 

『星海を切り裂く一筋の閃光よ! 魂を震わし、世界に轟け!』

 

 

『シンクロ召喚! 飛翔せよ、《閃珖竜 スターダスト》!!』

 

 

その予感は、当たった。

遊星の目の前で飛翔したのは、魂の半身たるドラゴンそのものの姿。

良く見ればその体に、彼の知るそれにはない紋様が走っていることに気づいただろう。

 

「スターダスト……だと!?」

『シンクロ召喚成功により、永続魔法《天輪鐘楼》の効果を発動! 1枚ドローする』

 

???:手札3→1→2

 

《天輪鐘楼》

永続魔法

①:S召喚に成功した場合、そのプレイヤーはデッキから1枚ドローする。

 

『このスターダストは《ガード・シンクロン》の効果により、1ターンに1度、戦闘では破壊されない。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ』

「オレのターン!」

 

遊星:手札2→3

 

相棒そっくりのモンスターの登場に、遊星は動揺を隠せなかった。

だが、それでもデュエリストとしての本能が場の状況を確認する。

 

《閃光竜 スターダスト》の攻撃力は2500、遊星のモンスターの方が上だ。

だが《ガード・シンクロン》の効果により、戦闘での突破は困難。そして恐らく、破壊を無効にする何らかの効果を持っているのだろう。

 

「オレは魔法カード《戦士の生還》を発動! 墓地の《ジャンク・シンクロン》を手札に戻す!」

『!』

「そして《ジャンク・シンクロン》を召喚し、効果発動! 墓地の《チューニング・サポーター》を特殊召喚する」

 

遊星:手札3→2

 

『《カード・フリッパー》のコストで墓地に送ったのはそいつか』

「レベル1の《チューニング・サポーター》に《ジャンク・シンクロン》をチューニング! 《アームズ・エイド》をシンクロ召喚!」

 

現れたのは巨大な腕の形をした機械のモンスター。

その見た目通り、他のモンスターに装着されることで真価を発揮するが、遊星の狙いはそこだけではない。

 

「シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》と、お前の《天輪鐘楼》の効果により、2枚のカードをドローする!」

 

遊星:手札2→4

 

「オレは《アームズ・エイド》の効果を発動! 《ジャンク・デストロイヤー》に装備し、攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

『そこだ! 装備された瞬間、トラップカード《シューティング・スター》を発動! スターダストと名のつくモンスターが存在することにより、《ジャンク・デストロイヤー》を破壊する!』

 

《ジャンク・デストロイヤー》へ装着されるべく展開する《アームズ・エイド》だが、右腕にセットされた瞬間飛んできた閃光にもろとも貫かれ爆散した。

 

「なっ……!」

『攻撃表示にしておけば、間違いなくライフを削りに来ると思ったぞ。そう簡単に突破できるとは思うな』

「っ、まだだ! 魔法カード《シンクロ・オーバーテイク》! エクストラデッキの《ジャンク・アーチャー》を公開し、素材として指定されている《ジャンク・シンクロン》を墓地から特殊召喚!」

 

遊星:手札4→3

 

『またそいつか!』

「レベル5の《ジャンク・ウォリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光さす道となれ!」

 

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!!」

 

 

満を持して遊星の場に飛翔する、シグナーの竜の一角たる星屑の化身。

同じ姿をした閃光竜と対面するや否や、まるで共鳴するかのように両者が咆哮を上げた。

 

「何だ!?」

『やはり呼び合うか……攻撃力2500では相打ち、しかも今の閃珖竜は戦闘破壊耐性を持つ。一方的にそちらがやられるだけだが、まさか無策で呼んだわけではあるまい』

「《災いの装備品》が邪魔だったからな。そのカードは装備モンスターがシンクロ素材となれば、タイミングを逃して再装備はできない! 《天輪鐘楼》の効果により、ドロー!」

 

遊星:手札3→4

 

「装備魔法《白銀の翼》を《スターダスト・ドラゴン》に装備! 装備モンスターは1ターンに2度、戦闘では破壊されない!」

『なるほど、にらみ合いに持ち込もうという腹か』

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星:手札4→2

 

『だが、守っているだけでは俺には勝てない! 俺のターン、ドロー!』

 

???:手札1→2

 

『墓地の《レフティ・ドライバー》の効果発動! デッキから《ライティ・ドライバー》を手札に加え、このまま召喚する!』

「!?」

『この瞬間、モンスター効果によりデッキからもう一体の《レフティ・ドライバー》を特殊召喚! だが今回は効果を使わず、レベル2のままレベル1の《ライティ・ドライバー》と共にチューニング! 現れろ《武力の軍奏》!』

 

膠着しつつある状況、新たに呼び出されるのは、様々な楽器を銃火器のごとく全身に装備した真鍮のロボット。

 

『《武力の軍奏》がシンクロ召喚に成功した時、墓地のチューナーを1体、効果を無効にして特殊召喚する。俺は《ガード・シンクロン》を復活させ、《天輪鐘楼》の効果によりドローする』

 

???:手札2→3

 

(さっきのチューナー……だが、今のスターダストをそう簡単に突破はできないはず)

 

次のターンでどう切り返すか、そう考えていた遊星の思考を、

 

『考えが甘いぞ、不動遊星!』

 

その大音声が張り飛ばした。

 

「なっ!?」

『相手のフィールドに上級モンスターが存在することで、《ジャンク・ジャイアント》を手札から特殊召喚!』

 

丸いボディに巨大な手と足、ドリルのついたサブアームを伸ばす鋼鉄の巨人が2体のチューナーと並ぶ。

 

『俺はレベル6の《ジャンク・ジャイアント》に、レベル1の《ガード・シンクロン》をチューニング! モンスターをシンクロ召喚!』

 

『光来せよ、雷の戦士! 《ライトニング・ウォリアー》!!』

 

そしてシンクロ、姿を見せるのは鬣と赤いマフラーをなびかせる雷の戦士。

 

『《天輪鐘楼》の効果発動! ドロー!』

 

???:手札3→2→3

 

「シンクロモンスターをこうも次々と……!」

『そういうお前こそ、いつもの実力はどうした? らしくないな、不動遊星』

「……!」

『まあいい。さて……このままでは当然《スターダスト・ドラゴン》を倒すことはできんが、そのための《武力の軍奏》だ。このカードはチューナーでもある』

「シンクロ・チューナー!? まさか……!」

『残念だがアクセルシンクロではない。そもそも、チューナーである以上普通にシンクロ召喚に使って何の不思議がある』

 

言われてみればその通りなのだが、遊星の中では完全にシンクロチューナー=アクセルシンクロの図式が出来上がってしまっていた。

先達のブルーノも、その先達たる別未来の遊星もそうだったのだから無理もない、と言えなくもない。

 

『俺はレベル7の《ライトニング・ウォリアー》に、レベル3の《武力の軍奏》をチューニング! 天よ、運命よ、事象の理よ! 巡る天輪に乗せ、今ここに結実せよ!』

 

曇天の空を切り裂いて猛烈な光が差し込み、エンジェル・ラダーを形成したそれに乗って何かが空から降りてくる。

それは、圧倒的な力を感じる1体の龍。

 

 

『示現せよ! 《天穹覇龍ドラゴアセンション》!!』

 

 

脚部を持たず、蛇のような長い胴体に陣羽織のような上半身、翼のような刃を伸ばす腕、長い首の先には鋭い牙の並んだ咢。

 

「レベル10のシンクロモンスター……!」

『《天輪鐘楼》の効果でドロー。この時、ドラゴアセンションの効果発動! このカードの攻撃力は、シンクロ召喚に成功した時点での俺の手札1枚につき800アップする!』

 

???:手札3→4

 

「攻撃力3200だと!?」

『《武力の軍奏》を素材としたシンクロモンスターはチューナーとなるが、今は関係ないな。俺はさらに、魔法カード《死者蘇生》を発動! お前の墓地から《ジャンク・デストロイヤー》を復活させる!』

「何!?」

 

一気に並ぶ大型シンクロモンスター3体を前に、さすがの遊星がはっきりと動揺を露わにした。

 

『バトルフェイズ! 俺は《ジャンク・デストロイヤー》で《スターダスト・ドラゴン》を攻撃! デストロイナックル!』

「く……《スターダスト・ドラゴン》は《白銀の翼》により、戦闘で破壊されない!」

 

遊星:LP1500→1400

 

『だがその効果はあと1度のみ! 《閃珖竜 スターダスト》で追撃! 流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!』

 

鏡写しのようなドラゴンのブレスを、《スターダスト・ドラゴン》は輝く翼で受け止める。

しかし、それを最後に翼のまとっていた光が消失した。

 

『そして、ドラゴアセンションの攻撃! 超・次・元・昇・天・葬(アルティメット・アセンディング・ウェーブ)!!』

「オレは手札から《シンクロ・ビリーバー》の効果発動! シンクロモンスターへの攻撃を無効にし、このカードを特殊召喚する!」

 

遊星:手札2→1

 

『しぶといな。だが言ったはずだ、守っているだけでは俺には勝てない! カードを2枚セットし、ターンエンド!』

 

???:手札4→1

 

ターンが回って来た遊星だが、カードを引こうとした手がなぜか動かない。

どういうことだ、と混乱する彼の耳に、謎の存在の声が―――完全に切り替わった音で―――響く。

 

『今更迷いを自覚したか?』

「!」

 

確かに彼の言うとおり、今の遊星には迷いがあった。

あの「ジャック」に言われたことが頭の中に引っかかっていたのだ。

 

 

―――人は生きていく限り一人! デュエルもまた然り! どれほどの応援を受けようが、どれほどの期待を背負おうが、戦うのは己のみ! 己を信じられぬ者に勝利など訪れはしない!! 貴様は己のカードをどれほどに信じられる? 己自身をどこまで信じている!?

 

 

イリアステルとの戦いでは多くの仲間達に支えられ、その力で勝利をつかんだ。

だが、心の奥底にある不安は未だ消えていない。

 

父の研究が結果的にゼロ・リバースを引き起こしたことは、遊星の心に根強いトラウマとなって残っている。

その真相がイリアステルによる歴史修正の一環であり、唆されたルドガーの仕業だったとしても、そもそも父がモーメントを研究していなければこんなことにはならなかったのではないか? そんな思いが消えていなかった。

 

この街に残り新世代のモーメントの研究を始めたのは、父の研究が間違っていなかったことを証明するためでもあるが、裏を返せば父は間違っていたのではないか、という疑念がどこかにあったからだ。

 

だからこそ、ジャックの言葉でそれを意識せざるを得なかった。

そんな自分にこの街の未来を創る力は、その権利はあるのか?

本当に自分は皆に認められているのか?

シグナーでなくなった自分に、今までのようなデュエルが出来るのか?

 

まるでそれが投影されたかのように、このデュエルは一方的に追い込まれている。

ドローを躊躇う遊星に、彼自身の姿をした何者かが言う。

 

『自信とは、自らを信じる力だ。それがない今のお前では、俺を倒すことも、“彼女”を救うこともできない!』

 

―――サテライトを出たあの日から今まで、遊星に付きまとっていたのは「自信の欠如」だった。

本当に自分は……そんな思いが心のどこかに巣食っていた。

 

確かに仲間も友達も多く出来た。大切な人もいる。やりがいのある目的も、全霊を打ち込むべき理想も抱いている。

だが。

 

 

(オレは本当に、それに相応しい人間なのか?)

 

 

自分は皆の信頼を、期待を、未来を、背負うに値するのか? 

常に心のどこかに置き去りにしていたそれが、今になって表に顔を出していた。

皆は言う。

 

運命だとしたら、遊星に出会ったことがそれだと。

一人で背負い込む必要はないのだと。

 

だが、仲間達の言葉に救われながらも、遊星の心の隅には常に闇が蟠っていた。

そこに、謎の存在が容赦なく追撃をかけて来る。

 

『人は誰しも、他人の人生を生きることは出来ない。自分の存在にすら疑念を持つ今のお前には即ち、今を生きる力すらもないということだ! 己を信じられぬ者に、出来ることは何一つない! そうではないのか!?』

 

それは、遊星にとって致命的な一言だった。

ゼロ・リバースという災厄を齎すことになった研究を主導した不動博士、その子である自分を誰も責めなかった。父亡き今、誰かが憎しみをぶつけて来てもおかしくなかったはずなのに。

ジャックも、クロウも、誰も。

 

だからこそ余計に、遊星は迷うことになった。

それがために一度はプラシドの口車に乗せられ、アクセルシンクロに失敗した。

 

厳然たる事実として、ゼロ・リバースについて遊星の負うべき責任は何もない。不動博士にしても途中で研究を打ち切り、それを強引に引き継いだルドガーがイリアステルの差し金でモーメントを暴走させ引き起こした……それだけだ。

だが、誰も責めないからこそ、誰も咎めないからこそ、遊星は自分を認めることがどうしても出来なかった。

 

仲間を信じることが出来ても、仲間との絆を信じることが出来ても、どこかで自分自身を信じ切れなかった。

ゆるぎなき境地に至り、WRGPやイリアステルとの戦いに没頭することで、無意識に記憶の底に遠ざけていた、それ。

それが、全てが終わり己の道を歩み始めた今になって―――今だからこそ―――表に出てきた。

 

『デッキはデュエリストの心を映す鏡。今のお前は何も見えない現実に不安を覚えるあまり、存在することそのものを迷っている。だからこそ今、デッキはお前に応えない!』

「……!」

『いや……今の、ではなかったか。お前は常にそうだった。他者を優先し己を省みない。命を惜しまないその姿勢は、裏を返せば己の命を軽く見ているということだ! 己を重んじない人間が、本当に誰かを救えると本気で思っているのか!?』

 

まるで遊星をずっと見て来たかのような物言いだが、今の遊星はそれに気づくほど余裕がなかった。

 

(オレの道……オレの使命……オレは……)

 

目前が闇に閉ざされたかのような錯覚に陥り、視点が定まらずその場に崩れかける。

 

 

―――だが、忘れてはならない。不動遊星は常に、仲間と共に戦い、道を切り開いてきたということを。彼が折れかけたならば、必ずそれを支える誰かがいる。そう、今この時のように。

 

 

「遊星――――っ!!」

 

 

エンジン音と共に飛び込んできたその声は、遊星にとって馴染み深い男の声。

 

「! この声は……!」

『ようやく来たか。時の彼方からの来訪者』

 

デュエルレーンに飛び込み、猛追してきた流線型のDホイール―――デルタイーグル。

デュエルディスクの通信越しに、その乗り手が叫ぶ。

 

「惑わされるな、遊星! 確かに君の父親の研究が、結果的にゼロ・リバースを引き起こした……それは事実だ! それはどう足掻いても変えることは出来ない! だが、遊星! あの戦いから君は何をして来た!? 破滅の未来を実現させないために、父の足跡を引き継ぎ、それは確かに形を成している!」

「それは……」

「それだけじゃない! 君の、いや君達のして来たことで多くの人々が救われて来た! 僕自身がそうだったようにだ! それもまた確かな現実だ、遊星! 痛みを伴ってでも前に進むことを、君は選んだんじゃなかったのか!!」

「!」

「遊星、思い出せ! 君の背には、多くの人の未来がかかっている! それだけの人が君を必要としている! 君は見つけたはずだ、君だけのアクセルシンクロを……仲間との結束が生み出す力を!」

 

―――そうだ。

 

「本当はわかっているはずだ! 君は一人ではない……いや、最初から一人ではなかったのだと! ゼロ・リバースの悪夢に負けるな! 不動博士の研究は間違ってなどいない! 君が信じるべきは他の誰でもない、君自身! 僕が、みんなが、仲間が信じている、不動遊星という存在だ!!」

 

彼の言うとおりだ。

本当はわかっていた。ただ、怖かったのだ。

自分の歩んでいる道は本当に正しいのか、このままで本当に未来を救えるのか。それが不安で仕方がなかった。

シンクロ召喚の勃興を発端に、人の負の心が招いたモーメントの暴走……その果てにあった滅亡。

イリアステルが示したその未来へ、今この時も向かっているのではないか、と心のどこかでずっと悩んでいた。

 

チームの仲間達と肩を並べて歩く時は、既に過ぎた。それはわかっていた。いや、わかっていたつもりだった。

だからこそ、研究が進む程に、先を予感する程に、どうしようもない不安に襲われていた。その不安から目を逸らし、見ないふりをしていた。

そんなことで、前に進めるはずもない。

 

だが、それでいいのか? 否、いいはずがない。

仲間達がそれぞれの道を選んだように、遊星もまた、己の意志でこの道を選択した。他の誰も歩めない、遊星だけの道だ。

 

そこで得たものがどれほどに重くても、背負って歩み続けるしかない。いつかこの街に帰ってきた仲間達を、胸を張って迎えるその時まで。

あの日、そう決めたはずではなかったのか?

 

そして何より、とっくの昔にわかっていたはずだ。

新たな境地にたどり着いたあの日、遊星にはわかったのだ。未来を、運命を背負っているのは自分一人ではない。

みんなが遊星を励まし、そしてその進む道を信じてくれていることを。

 

並走し始めたDホイールの乗り手に、小さく返す。

 

「………そう、だったな。ブルーノ!」

「ああ、そうだとも!」

 

そうだ、そんなことは初めからはっきりしていた。

遊星は一人ではない。例え傍にいなくとも、遊星には仲間がいる。

不動遊星という男を信じてくれる仲間がいる。

 

ならば―――今、自分がすべきことは何だ?

 

「オレの使命は……人の心を導き、繋ぐこと。みんなの心の間を繋ぐ絆となること! そのためにこの街を守り、発展させること! このネオ童美野シティを守ることだ!!」

『は。出来るのか、今のお前に?』

「出来る! いや、やって見せる! オレはそう決めたんだ!! それがオレの道だ!!」

 

気力に満ちた叫びをあげる遊星を、その姿をした何者かは面白げに迎え撃つ。

 

『それでこそ、それでこそだ、不動遊星! 言ったからにはやって見せろ! お前の守ると言ったこの街に闇が広がりつつある……それをも退けようというならば、この俺ごときは容易く超えて行け!』

「望むところだ! オレの……ターン!!」

 

もはや迷いは消えた。気合を込めて引いたカードを見た遊星の口元に、ニヤリと笑みが浮かぶ。

 

遊星:手札1→2

 

「トラップ発動! 《ジャンク・リサイクル》! 自分のターンに、デッキからジャンクと名のつくカードを4枚まで手札に加える! ただし、そのカードはこのターンの間、同名カードも含めて効果を使うことはできず、フィールドに出すこともできない。オレは《ジャンク・サーバント》、《ジャンク・コレクター》、《ジャンク・アタック》、《スターライト・ジャンクション》を手札に加える!」

 

遊星:手札2→6

 

「そして、魔法カード《追放の宝札》を発動! 場のこのカードと今ある手札を全て除外し、その数だけドローする!」

「さすがは遊星……いいカードを引き込んだ!」

 

遊星:手札6→6

 

『では便乗させてもらうとしよう。罠カード《逆転の明札》を発動! 俺もカードをドローさせてもらう』

 

???:手札1→6

 

「! 手札を補充したか」

『確かにこれはいいカードだ……これで手札は互角。さあ、どう来る』

「ならば……オレはさらに、チューナーモンスター《マッハ・シンクロン》を召喚! レベル1の《シンクロ・ビリーバー》に、レベル1の《マッハ・シンクロン》をチューニング! 集いし願いが、新たな速度の地平にいざなう! 光さす道となれ!」

 

呼び出されるシンクロモンスターは、遊星のコンボにとって鍵となる存在。

 

「希望の力! シンクロチューナー、《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

手足のついたレーシングカーのようなそれが、最初の一手だ。

 

「この瞬間、《フォーミュラ・シンクロン》とお前の《天輪鐘楼》の効果で、2枚のカードをドロー! さらに《マッハ・シンクロン》の効果により、素材となった《シンクロ・ビリーバー》を手札に戻す!」

 

遊星:手札6→5→7→8

 

《スターダスト・ドラゴン》の横で疾走する《フォーミュラ・シンクロン》。

自らがかつて示した光景を前に、遊星号を追うように走るデルタイーグルの上でブルーノも不敵に笑む。

 

「遊星、一気に攻め込むチャンスだ!」

「ああ! オレは、レベル8の《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

「クリア・マインド! 集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光さす道となれ!」

 

「アクセル・シンクロ―――――ッ!!」

 

 

 

「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!!」

 

 

 

光をも超える速度の中から、流星のドラゴンがその姿を見せる。

遊星のデッキにおける今の最大の切り札、果たしてこの相手にどこまで通用するのか。

 

「《天輪鐘楼》の効果により、ドロー!」

 

遊星:手札8→9

 

『これがアクセルシンクロ召喚……ドラゴアセンションを上回って来たか』

「まだだ! 俺は《シューティング・スター・ドラゴン》の効果を発動! デッキの上から5枚のカードを確認し、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!」

「相手のモンスターは3体いるけど、そのうち1体は1度だけ戦闘では破壊されない……突破するには、5枚すべてチューナーでなければならないってことか!」

『賭けとしては分が悪いな』

 

確かに分の悪い賭けではある。

だが遊星は、不思議とそれができないとは思わなかった。

 

「1枚目、《チェンジ・シンクロン》! 2枚目、《スチーム・シンクロン》! 3枚目、《ジェット・シンクロン》! 4枚目、《サテライト・シンクロン》! 5枚目……《スターダスト・シンクロン》! すべてチューナーモンスターだ!」

(……なんだ、このカードは!?)

 

めくったカードは全てチューナーモンスター。

これで突破のめどが立った……のはいいが、問題はその中にあった見知らぬカード。

 

(鬼柳が言っていたのと同じことが……だが、今は考えない!)

「バトル! 《シューティング・スター・ドラゴン》でドラゴアセンションを攻撃!」

 

上空高く舞い上がり、5色に分身した《シューティング・スター・ドラゴン》が、敵陣目掛けて急降下する。

 

―――スターダスト・ミラージュ!

 

???:LP4000→3900

 

『倒されたか……だが、効果発動だ! ドラゴアセンションが破壊された時、墓地からシンクロ素材となったモンスターを特殊召喚できる! 甦れ《ライトニング・ウォリアー》、《武力の軍奏》!』

「なに!?」

『ただし、その効果はすべて無効になるがな。天・翔・輪・廻(ヘブン・リンカーネーション)!!』

 

天穹覇龍を突撃で粉砕した《シューティング・スター・ドラゴン》だが、そこにはいつの間にか雷の戦士と楽器を装備したロボットが身を固めていた。

 

「モンスターが増えたか……だが、一番厄介なのはその《閃珖竜 スターダスト》だ! 攻撃!」

『ダメージは受けるが、その戦闘では破壊されない!』

「だが次は防げない! 《シューティング・スター・ドラゴン》でもう一度攻撃だ!」

 

一撃を跳ね返した閃光竜目掛けて、別の分身が突撃する。

だが、それは不意に生じた球状の障壁に阻まれた。

 

『《閃珖竜 スターダスト》の効果発動! 1ターンに1度、場のカード1枚の破壊を1度だけ無効化する!』

 

???:LP3900→3100→2300

 

「それでも、これで突破だ! 攻撃!」

 

4体目の分身の攻撃で、ようやく《閃光竜 スターダスト》はフィールドから姿を消した。

しかしこれで、《シューティング・スター・ドラゴン》の攻撃はあと1回のみ。

 

(ならば……)

「《ジャンク・デストロイヤー》を攻撃! スターダスト・ミラージュ!」

 

???:LP2300→1600

 

『やるな……!』

「しのぎ切られたか……! カードを3枚伏せて、ターンエンド! これがオレの……いや、オレ達が作り上げてきた力だ!」

 

遊星:手札9→6

 

啖呵を切る遊星に、ブルーノが問いかける。

 

「状況はデルタイーグルを通して聴いていたけど……遊星、どうなっているんだ? あいつは一体……」

「オレにもわからない……。ただ言えるのは、ヤツは俺の力を試しているようだ」

「力を試す……」

 

ブルーノの脳裡に浮かんだのは、つい先日戦ったばかりの骸骨騎士。過去からの使者……彼の言っていたことの意味はまだわからない。

だが、この戦いにその手がかりがあるような気がする。

 

『俺のターン! ドロー!』

 

???:手札6→7

 

そして、謎の存在にターンが回ってくる。ドローカードを確認した「それ」は、遊星とブルーノを見てこう言った。

いつしか、その声は遊星のそれではない、全く別のものに変わっている。

 

『確かに貴様達には力がある。闇に対する力が』

「……?」

『時の彼方の来訪者……重力の渦より貴様を選び、呼び戻した意味もあったというものだ。闇の番人に食い下がり、のみならず打倒するとはな』

 

その意味するところを一拍遅れて理解したブルーノは、目の前の存在が何であるのか直感で悟った。

骸骨騎士は何と言っていた?

 

 

―――貴様がここにいることは、我の力の及ぶところではない。我はただ、赤き竜の導きによってこの地を訪れたのみ。そして赤き竜は我に告げたのだ。この地に舞い戻った者の力を見定めよ、と。

 

 

何より、ブラックホールから引きずり出される直前に見た赤い光。

 

「……まさか……お前は!?」

『カードの発動がなければメインフェイズに入るが?』

「……発動するカードはない。そちらのメインフェイズだ」

 

ブルーノの動揺の理由に見当がつかず、ともかくもターンの進行を促す遊星。

が、その耳に聞きなれた咆哮が届いた。

《スターダスト・ドラゴン》の声。魂の半身ともいうべきドラゴンが、何かに反応している。

 

(スターダスト……? どうしたんだ)

『閃珖竜と天穹覇龍を突破したのならば、本気でかかって構わんだろう。俺は魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《セブン・ソード・ウォリアー》、《閃珖竜 スターダスト》、《ライティ・ドライバー》2体、《スカー・ウォリアー》をデッキに戻し、2枚ドローする』

 

???:手札8→9

 

『そして俺は《ジャンク・ブレーダー》を召喚し、《武力の軍奏》をチューニング! レベル7、《セブン・ソード・ウォリアー》を再びシンクロ召喚する』

「だが、そのモンスターでは《シューティング・スター・ドラゴン》は倒せない!」

『その通りだ。だが、さっきも言ったように、《武力の軍奏》を素材に召喚されたシンクロモンスターは、チューナーとなる。俺は……我はレベル7の《ライトニング・ウォリアー》と、チューナーとなったレベル7の《セブン・ソード・ウォリアー》をリリースし……マイナス・チューニング!』

 

 

『混沌の次元より湧き出でし力の源! 原点にして、全ての頂点! 今こそこの地に、この時に、その姿を現せ!!』

 

 

完全に変わった声が、その名を宣言する。

 

 

 

『神降せよ!! 我が化身、《究極神 アルティマヤ・ツィオルキン》!!!』

 

 

 

時間が止まったのかと思った。

呼び出されたそのシンクロモンスターの姿は、遊星にとってはある意味もっとも因縁深い存在。

 

何度となく導かれ、何度となく助けられた、全ての始まりたる存在。

 

長すぎる時の流れの中、大地に縛られし邪神と死闘を繰り広げて来た、星の神。

 

 

 

ゆらめく赤いオーラを纏い、翼を広げて嘶く巨大な龍。

 

 

 

<クォォォォォオオオオオオ!!!>

 

 

 

「赤き竜……だと!?」

「やはり……! 僕をブラックホールから引きずり出し、骸骨騎士をこの世界に呼び込んだのは……!!」

 

確信を得たブルーノの言葉に、

 

『我だ』

 

遊星の姿をしたそれは、心底楽しそうに笑った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。