「いきなり手荒い歓迎だな……ってか、ここは!?」
旧モーメントからいきなり転送された牛尾が現れたのは、ネオダイダロスブリッジを望む埠頭。
涼が言っていた場所かと一瞬思ったが、あの時彼がいたのはシティ側。
目を横に向けると、その先には建設途中で放棄された、天へと続く架け橋があった。
「あれはダイダロスブリッジ……つうことは、サテライトから出たわけじゃねえ、か。ん、遊星?」
そして、D・ホイールに入る着信。
遊星から、他の面々へ向けた警告だった。どうやら牛尾以外の面子もそれぞれに飛ばされたらしい。
通信はそこで切れてしまい(恐らく相手方の妨害だろう)、それ以上のことは聞けなかったが、ここまで来た以上あとは戦うだけだ。
「さあ、俺の相手はどいつだぁ?」
「お呼びかしらぁ?」
かかった声は、明らかに先ほどまで誰もいなかったはずの場所からだった。
甘ったるい女性の声に振り向いてみれば、そこにいたのはウェーブのかかった金髪をなびかせる妙齢の美女だった。
メリハリの利いた体つきに露出の高い服装、美貌と言って差し支えない顔立ち。普段の牛尾なら一度は鼻の下を伸ばすところだったが、この時に限ってはそうはならなかった。
(なんだ、こいつは……!?)
色香たっぷりの物腰や外見を容易く裏切る、強烈なまでの違和感。
そこにいる、そのこと自体が不自然であるかのような、不快なのに目を引く、そんな感覚。
それが、牛尾の経験と記憶を刺激し、警戒を否応なしに引き出していた。D・ホイールを降りてディスクを展開する。
そんな牛尾を見て、女性は面白そうに「あらぁ?」と笑う。
「なーんの力もない凡人かと思ったら、私の存在を感じ取れるなんて……多少は楽しめそうじゃなぁい」
「おうおう、言ってくれるじゃねえか。じゃあその凡人の力、味わってみるかぁ?」
戦意の高揚もかねた挑発に、女性はしかし笑って応じる。
「まあいいわぁ、軽く遊んであげる。考えようによっちゃ、雑魚が相手でラクが出来たってことね」
「つくづくバカにしやがって……後で泣いても知らねえぞ!」
「うふふ、果たして泣くのはどっちかしらねぇ? 私はエクリプスに属する
「「デュエル!」」
牛尾:LP4000
タウルス:LP4000
「行くぜぇ、俺のターン! ドローだ!」
牛尾:手札5→6
牛尾が今使っているのは特殊なデッキで、公式ルールでは使用禁止とされているカードが何枚か投入されている。
なので、戦術も通常のデュエリストのそれとは異なる。
「まずは、俺は魔法カード《天使の施し》を発動するぜ」
実は、デュエルをただの手段と割り切る面においては、牛尾はデュエルギャング達と変わらない。
違うのはその目的。
「緊急事態用のアンリミットモードの力、存分に味わいな! 3枚ドロー、そして2枚のカードを捨てるぜ」
牛尾:手札6→6
「そして俺は、チューナーモンスター《ジュッテ・ナイト》を召喚! さらに俺のフィールドに戦士族モンスターがいるとき、《キリビ・レディ》を特殊召喚するぜ!」
しっかりと引き込んだ十手持ちのチューナーと、着物姿の女性を象った下級モンスターが並ぶ。
「レベル1の《キリビ・レディ》に、レベル2の《ジュッテ・ナイト》をチューニング! シンクロ召喚、いでよ《ゴヨウ・ディフェンダー》!」
そして2体のシンクロにより、大きな盾を持った岡っ引きのモンスターが牛尾のもとに出現した。
「なぁに、大げさな割に攻撃力1000じゃないの」
「そいつはどうかな、《ゴヨウ・ディフェンダー》の効果発動! 1ターンに1度、俺のフィールドに戦士族で地属性のシンクロモンスター以外が存在しない場合、エクストラデッキから新たな《ゴヨウ・ディフェンダー》を特殊召喚できる!」
「はぁ!? そいつも同じ効果持ってるってことは……」
「そのとーり、2体目も効果発動! 現れろ3体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》!」
それが、いきなりカカンッ!と3体。
もちろん、このままではタウルスのモンスターは倒せない。
「さらに俺は魔法カード、《ダブル・リボーン・プラス1》を発動! 墓地から種族の同じ、レベル3以下のモンスターを2体、特殊召喚する。いでよ《ジュッテ・ナイト》、そして《キリビ・レディ》!」
「またその2体?」
「この効果で復活したモンスターは、レベルが1つ上がる。というわけで、レベル2となった《キリビ・レディ》に、レベル3となった《ジュッテ・ナイト》をチューニング! 地獄の果てまで追い詰めよ! 見よ、清廉なる魂!」
「シンクロ召喚! いでよ、《ゴヨウ・チェイサー》!」
それを突破するべく出現するのは、捕縄のついた大振りの十手を刀のように構える、奉行の姿のゴヨウモンスター。
《ゴヨウ・ディフェンダー》共々、最近になって追加されたモンスターだ。
「こいつの攻撃力は1900だが、俺のフィールドの他の地属性、戦士族のシンクロモンスター1体に付き300ポイント上がる。つまり、今は2800だ!」
牛尾:手札6→3
「俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
牛尾:手札3→0
「あーらら、いきなりハンドレスとは強気ねぇ」
「先に言っとくが、《ゴヨウ・ディフェンダー》は攻撃対象になった時、俺の場の他の地属性・戦士族のシンクロモンスター1体につき、攻撃力が1000ポイントアップするぜ」
「攻撃力4000が3体と2900が1体ってわけねぇ、実質。私のターン、ドロー!」
タウルス:手札5→6
謎の組織・エクリプスに身を置き、超常の力を操る未知のデュエリスト。
果たしてどんなデッキを使ってくるのか、牛尾の警戒心も否応なく高まっていく。
「でも、私の前にモンスターを並べたのはちょーっと不用心じゃないかしらぁ?」
「なにぃ?」
「魔法カード《パワードレイン》を発動! 全てのモンスターの攻撃力を0にするわ!」
「何だと!? だが、《ゴヨウ・ディフェンダー》の効果があるぜ!」
牛尾:LP4000→5200
「っと、ライフが回復した?」
「このカードの効果には続きがあるわ。攻撃力が0になったあと、お互いのプレイヤーは自分のモンスター1体につき300のライフを回復する」
タウルス:手札6→5
「それじゃあ、まとめて食べちゃいましょうか。チューナーモンスター《レプティレス・バイパー》を召喚!」
「!? ありゃあ、確か……」
タウルスが呼び出したモンスターは、牛尾も話だけは聞いていたデッキのもの。
ダークシグナー事件の際に敵方が使用していたカードの一つだ。
「このカードは召喚に成功した時、効果で相手フィールドの攻撃力0のモンスターのコントロールを得るわ」
「なぁにぃっ!?」
「けど、ここはその効果は使わないことにするわ。今そっちのモンスターが減るのはよろしくないし」
タウルス:手札5→4
「さらに闇属性の爬虫類族が存在するとき、手札からチューナーモンスター《レプティレス・コアトル》を特殊召喚!」
呼び出されたのは尾の先端が剣となった半人半蛇の怪物。
これでタウルスの場にはチューナーが2体並んだ。
「チューナーばっかり並べやがって、何を考えてる……」
「コアトルの効果には続きがあるわよぉ? この効果で特殊召喚した時点で、相手の場に攻撃力0のモンスターがいれば、その数まで手札のレプティレスを特殊召喚できるわ」
「はあ!? 俺の場には4体……ってことは!」
「モンスターゾーンが足りないから3体ね。《レプティレス・ガードナー》2体と《レプティレス・ナージャ》! 見事に攻撃力0ばっかりね」
のみならず、さらに同じく少女の特徴を持つレプティレスと、カメの姿をしたモンスターが2体。
全て守備表示だ。
「そしてコアトルのもう一つの効果! このカードはチューナーだけど、レプティレスのシンクロ召喚に使う時に限り、チューナー以外のモンスターとしても扱えるのよ」
「なんだと!?」
「レベル4のコアトルとレベル2のバイパーでシンクロ召喚! 来なさい、《レプティレス・ラミア》!」
口上もなく急ぎ足のシンクロ召喚で、降り立ったのは5つの蛇頭を伸ばす半人の大蛇。
あのシンクロモンスターは牛尾も見たことがないが、元はダークシンクロだったのだろうか。
「ラミアのシンクロ召喚に成功した時、強制効果発動! 相手フィールドの攻撃力0のモンスターを全滅させ、その数だけ私はカードをドローする!」
「ぬぁんだとぉ!?」
「受けなさい、ペトリフィケート・サイン!」
そして、5つの頭が一斉に放ったその眼光が、牛尾のモンスターを石化させ粉砕する。
一瞬にして牛尾のフィールドはがら空きになってしまった。
「そして私は、その数、4枚のドローね」
「待ちな! この瞬間トラップカード《逆転の明札》を発動だ! 俺も4枚ドローさせてもらうぜ」
タウルス:手札0→4
牛尾:手札0→4
「遊星や涼が使ってるから入れてみたが、確かにあるとだいぶ違うな、こいつは」
「あらら。……でも残念ね、いいカード引いちゃった。装備カード《巨大化》をラミアに!」
「うぉっ!?」
さらに、見る間に《レプティレス・ラミア》の体が大きくなり、見上げるほどの巨体がそこに具現する。
「自分のライフが相手より少ない時、装備モンスターの攻撃力は元々の倍になるわ。つまり4200よ」
「おいおい、マジか……」
「ライフは残っちゃうけど、このダメージに耐えきれるかしらぁ? バトルフェイズ、ラミアでダイレクトアタック!」
そのまま石化の光が牛尾目掛けて放たれる―――前に、その眼前に何かが割り込んできた。
「永続トラップ《トーテムポール》発動! 攻撃を無効化し、カウンターを置くぜ!」
「多少備えはあったみたいね。まあ、そんなカードじゃ何の役にも立たないでしょうけど。いいわ、ターンエンドよ。ただ、《レプティレス・ナージャ》は強制効果で攻撃表示になっちゃうけどね」
タウルス:手札4→3
「実際今役に立っただろうが。俺のターン!」
牛尾:手札4→5
タンカを切ったはいいが、牛尾のフィールドはがら空き、伏せカードが1枚と《トーテムポール》のみ。
せっかく展開したモンスターも軒並み破壊され、このままでは次のターンで終わりだ。
そしてもちろん、牛尾はそうさせるつもりはない。
(まずは、あのでかいのをどうにかしねえとな)
「俺は魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地の《ゴヨウ・ディフェンダー》2体と《ゴヨウ・チェイサー》、《ジュッテ・ナイト》と《キリビ・レディ》をデッキに戻し、2枚ドローだ!」
牛尾:手札5→6
「……結局、俺は俺らしくやるしかねえってことか」
「何を言ってるのかしらぁ?」
「《ジュッテ・ロード》を召喚! こいつは召喚、特殊召喚に成功した時、手札からレベル2以下のチューナーを特殊召喚できる。来い、チューナーモンスター《ジュッテ・ナイト》!」
反撃の口火として現れたのは、やはり巨大な十手を携えた捕り方。
その隣には先ほども現れた《ジュッテ・ナイト》が並ぶ。
「そして《ジュッテ・ナイト》の効果発動! こいつは1ターンに1度、相手の攻撃表示モンスター1体を守備表示に変更できる。《レプティレス・ラミア》だ!」
「あらぁ?」
投げつけられた捕縄が《レプティレス・ラミア》の胴体を捉え、地面に引き倒す。
攻撃態勢を強引に解除された蛇の怪物は、本能的に己を守ろうと捕縄を振り払い、身を固めた。
「そして行くぜ、レベル4の《ジュッテ・ロード》に、レベル2の《ジュッテ・ナイト》をチューニング! シンクロ召喚!」
「艱難辛苦乗り越えて、見せてやろうか男意気! 出合え出合え、《ゴヨウ・ガーディアン》!」
派手に見得を切りながらフィールドに現れたのは、歌舞伎役者そのものの姿をした人間型のモンスター。
セキュリティのシンボルとも言うべきカードであり、先ほど現れたゴヨウモンスター達は全てこのカードをルーツとした派生だ。
「さて、攻撃表示がいるが、あいつを殴ると攻撃力が消えちまうのか……よし、バトルだ! 《ゴヨウ・ガーディアン》で《レプティレス・ラミア》を攻撃! 神妙にお縄を頂戴しなぁ!」
―――ゴヨウ・ラリアット!
十手を括り付けられた捕縄がくるくると螺旋を描きながら宙を切り裂き、《レプティレス・ラミア》の体に巻きついたかと思うと恐るべき剛力で引き戻される。
たまらず地面に叩きつけられた怪物は、そのまま牛尾のフィールドへと引っ張られていった。
「《ゴヨウ・ガーディアン》がバトルで破壊したモンスターは、俺のフィールドに守備表示で特殊召喚される! 御用だ御用だぁ!」
「やってくれるじゃない、凡人の癖に。でも、まだ私にダメージを与えられてないわねぇ?」
「そいつは後だな。俺はカードをさらに伏せ、ターンエンド!」
牛尾:手札4→3
「生意気ねぇ……私のターン、ドロー!」
タウルス:手札3→4
「神官にたてつく凡人には、聖裁が必要ね。私はフィールド魔法《レプティレス・リコイル》を発動!」
タウルスのディスクの端が展開し、そこにカードが置かれた瞬間、周辺の景色が荒野へと変わった。
だが、牛尾が驚愕したのはそこではなく、頭上。
「あれは……馬鹿な!? ナスカの地上絵だと!?」
あまりにも見覚えがありすぎる、トカゲの地上絵を象ったサインが、空に浮かび上がっていた。
「効果発動! このカードは私の場の攻撃力0のモンスターを1枚破壊し、墓地から闇属性の爬虫類族を特殊召喚できるのよ」
「なんだと!」
「これによって《レプティレス・ガードナー》を破壊し、チューナーモンスター《レプティレス・コアトル》を特殊召喚! さらに破壊され墓地に送られたガードナーの効果により、《レプティレス・ヴァースキ》を手札に加えておくわ」
タウルス:手札4→3→4
「さらにチューナーモンスター《レプティレス・ヒュドラ》を召喚!」
「どんどんモンスターが増えてきたな……」
「じゃあ行くわよ? レベル4の《レプティレス・ガードナー》に、レベル2のヒュドラをチューニング! 現れなさい《レプティレス・ラミア》!」
タウルスが呼ぶのは2体目の《レプティレス・ラミア》。
「強制効果が発動するけど、ここでチェーン、シンクロ素材になったヒュドラの効果発動! 相手のモンスター2体までを選び、その攻撃力を0にするわ!」
「悪いがそいつは読めてんだよ! カウンタートラップオープン、《エフェクト・シャッター》! モンスター効果の発動を無効化するぜ!」
「な!?」
が、その眼光は2体のモンスターを粉砕することはできなかった。
変わらず《ゴヨウ・ガーディアン》がフィールドを威圧している。
「ぐぐぐ……どこまでも鬱陶しい! 凡人の分際で!」
「本性が出てきてるぜ、神官さんよ!」
「黙りなさいよ! こうなったら……魔法カード《ヴァイパー・リボーン》発動! 墓地からチューナー以外の爬虫類を復活させるわ。来なさい《レプティレス・ガードナー》!」
タウルス:手札4→2
「レベル4のガードナーに、レベル4のコアトルをチューニング! モンスターをシンクロ召喚!」
「現れなさい、《レプティレス・メルジーヌ》!」
チューニングの光から現れたのは、コアトルと同じく大蛇の体に女性の姿を持った異形。
頭にかぶった角つきの兜と背に広がる翼があいまって、どことなくドラゴンを思わせる。
「このカードは爬虫類族のみを素材に召喚された場合、バトルでも効果でも破壊されることはない! さらに相手モンスターが効果を発動した場合、相手モンスター1体を対象として、その攻撃力を0にできるのよ。何度でもね」
「げえ、また厄介な奴が出てきやがった……」
つまり、これで牛尾はうかつにモンスター効果を使えなくなったということだ。
タウルスのデッキはどうやらミスティが使っていたものの単純な強化版のようで、攻撃力0のモンスターを生み出すことで戦術を機能させているらしい。
「バトルよ! メルジーヌで守備表示のラミアを攻撃! ストーン・トルネード!」
「そいつは……通しだ!」
放たれた魔術の竜巻が、奪われたモンスターを爆砕した。
デュエルは非情である。
「私はカードを伏せて、ターンエンド!」
タウルス:手札2→1
「俺のターン!」
牛尾:手札3→4
「とりあえず《強欲な壺》だ。2枚ドローするぜ」
牛尾:手札4→5
(さあて、まずはあの新顔のシンクロモンスターを何とかしねえとな。とは言え破壊されない上にモンスターを無力化して来る……どうしたもんか)
破壊されないモンスターというのは、思いのほか対処に手間取るものだ。
とはいえやり様はある。
(こんだけ数並べて攻めて来るとなると、《アサルト・ガンドッグ》とか《サーチ・ストライカー》は悠長すぎるな。こっちも何とか食い破らねえと)
牛尾の持っているカードの中だと、《ゴロゴル》ならメルジーヌを突破する足掛かりになる。
ただ、あのモンスターは守備力が2800と高く、戦闘で突破するなら攻撃表示の方が楽だ。
とはいえ現状は破壊耐性を得ているため殴り倒すのも無理と来ている。
(……そーすっと、まともに倒すのは考えねえ方がいいか。伏せカードもあるし、ここはこうだ!)
「俺はチューナーモンスター《トラパート》を召喚するぜ! そして、レベル6のシンクロモンスターである《ゴヨウ・ガーディアン》に、レベル2の《トラパート》をチューニング! 正義の力のその前に、悪が栄えたためしなし!」
「シンクロ召喚! 捕り物の始まりだぜ、《ゴヨウ・キング》!」
白い鬣を振り乱し、長柄の十手……というよりサスマタを構え、新たなるゴヨウモンスターが姿を現した。
「そんじゃ行くぜ、バトルフェイズ! 《ゴヨウ・キング》で《レプティレス・ラミア》を攻撃! この時、強制効果が発動し、《ゴヨウ・キング》の攻撃力は俺の場の地属性・戦士族のシンクロ1体につき400上がる!」
「だったらそれを無駄にしてあげる! 《レプティレス・メルジーヌ》の効果発動、対象はもちろん《ゴヨウ・キング》よ!」
「そこだぁ! トラップカード《スキル・プリズナー》を発動! このターン、《ゴヨウ・キング》を対象としたモンスター効果は全て無効になるぜ!」
「なぁっ!?」
突撃する《ゴヨウ・キング》に《レプティレス・メルジーヌ》が石化の光を浴びせかけるが、謎の光がそれを弾いて寄せ付けない。
そうこうしているうちに走り込んだ奉行の一撃が、《レプティレス・ラミア》を粉砕した。
タウルス:LP4000→2900
「ここで《ゴヨウ・キング》の効果発動! 相手モンスターを破壊した時、相手フィールドのモンスター1体のコントロールを得る! 《レプティレス・メルジーヌ》を戴くぜ!」
「ぐ、くっ……!」
「そして、そのまま《レプティレス・ナージャ》を攻撃だぁ!」
タウルス:LP2900→400
「がああああっ!? ば、馬鹿な……!」
「何だよ、大したことねえな。そいつの効果で《レプティレス・メルジーヌ》の攻撃力は0になっちまったが、元々てめえのモンスターだしな」
ただ、だからと言って棒立ちにさせておけば次のターンで大ダメージを喰らってしまう。
「《アドバンスドロー》発動! メルジーヌをリリースし、2枚ドローさせてもらうぜ。そしてカードを2枚セットして、ターンエンドだ!」
牛尾:手札3
圧倒的優勢となった牛尾だが、対するタウルスの方は自分のターンが回って来たにも関わらずうつむいたまま肩を震わせている。
そして、
「……もう、いいわ」
「あ?」
「至高神の神官であるこの私に、凡人の分際で傷を負わせた大罪……死んで償え! ドロー!!」
タウルス:手札1→2
先ほどまでとは別人のような、悪鬼の形相でカードを引き抜いた。
「トラップカードオープン! 《毒蛇の宝札》を発動! 墓地の爬虫類族を全て除外し、その数だけドローできる!」
「ぬぁにぃっ!? 何枚だ?」
「墓地の爬虫類族は8枚、よって8枚のドロー!」
タウルス:手札2→10
「さらに、フィールド魔法を張り替える! 《サベージ・コロシアム》発動!」
タウルス:手札10→9
「《レプティレス・ナージャ》をリリースし、永続魔法《リリース・チケット》を発動! 私がアドバンス召喚か、効果のコストとして2体のモンスターをリリースする場合、代わりにこのカードをリリースできる!」
《リリース・チケット》
永続魔法
自分フィールドのモンスター1体をリリースしてこのカードを発動できる。
①:自分がアドバンス召喚、またはカードの効果を発動するために2体のモンスターをリリースする場合、代わりにこのカードをリリースできる。
「《リリース・チケット》を2体分のリリースとして、アドバンス召喚!」
「長き眠りより再び解き放たれよ! 《地縛神 Ccarayhua》!!」
そして、伸びあがった黒い巨影。
カエルともトカゲとも見えるそれは、大地に縛られた冥界の眷属の一柱。
「ついに出やがったな、地縛神……!」
「まだよ! さらに私は、手札を2枚捨てて《魔法石の採掘》を発動! 墓地から装備魔法《巨大化》を手札に戻し、地縛神に装備!」
タウルス:手札9→7→5→4
「攻撃力5600だぁ!?」
「永続魔法《フィールドバリア》! これでフィールド魔法は破壊されない!」
タウルス:手札4→3
周辺が古代ローマの闘技場を思わせる客席に囲まれ、観客らしき無数の声援が上がり始める。
「バトルよ! 《地縛神 Ccarayhua》でダイレクトアタック! これで私の勝ちだぁぁぁぁ!!」
2倍以上に巨大化した地縛神の手が、牛尾を押し潰さんと空気を押しのけて迫る。
だが、
「こいつがあるのを忘れてねえか? 《トーテムポール》2回目の効果発動! カウンターを置いて、攻撃を無効にするぜ!」
いつしかタウルスが存在を忘れていた永続トラップが、それを受け止めた。
「なっ、あ……」
「お、通ったな。抜け殻っつってたからもしかしてと思ったが、やっぱ弱体化してやがるな」
「……カードをセット。ターンエンド……」
タウルス:LP400→700 手札3→2
「何なのよ……何なのよ、お前は!? シグナーでも魔術師でもない、ただの凡人の分際で!」
「ヒステリー起こされると手に負えねえな……俺のターン!」
牛尾:手札2→3
とはいうが、牛尾の方も見た目ほど余裕があるわけではない。
冥界の王が滅びた今、地縛神も弱体化しているのではないかというのは予想していたが、今確認したところテキストが変わっていた。そして問題がこの部分。
(攻撃対象に選択できない……つまり俺自身に影響するってことは、遊星がやってたみたいにすり抜けてプレイヤーに攻撃ってのはできねえわけか……まずいな、要するに無敵の壁ってことかよ)
その代わりにフィールド魔法が無くなった途端に自滅するリスクを抱えているが、それが《フィールドバリア》でフォローされている今、地縛神を倒すのは限りなく難しい。
さて、どうしたものか?
(……いや、何も正面突破に拘る必要はねえか。ん、おっ、ちょっと待てよ? これってイケるんじゃねえか?)
このターンでドローした永続魔法。これとリバースの1枚を合わせれば、上手くすればタウルスの場をガラ空きに出来る。
ここは勝負どころだ。
「行くぜ! まずはリバースカード《リバイバル・ギフト》発動! この効果で《ジュッテ・ナイト》を蘇生し、さらにてめえのフィールドにギフト・デモン・トークン2体を特殊召喚だ!」
「私の場にトークン? それで攻撃対象を確保して《サベージ・コロシアム》を回避しようって? それくらいお見通しなのよ、凡人が!」
「だったらこいつは予想したか? 永続魔法《熱き決闘者たち》を発動! 懐かしのルールが蘇るぜ!」
牛尾が発動した永続魔法カード。
これはハイウェイパトロールの新規カードではなく、いつの間にか紛れ込んでいたものだ。
鬼柳や遊星に起きたのと同じ事象だろう、となんとなく思っていた。
「そして、《サムライソード・バロン》を通常召喚! 行くぜ、バトルだ! まずは《ジュッテ・ナイト》でギフト・デモン・トークンを攻撃!」
「何よ、結局自滅?」
「だがこの瞬間、《熱き決闘者たち》の効果を発動! 俺のモンスターが攻撃する時、その攻撃を無効化し、代わりに相手の魔法・罠カードを破壊する!」
「!?」
十手を振りかざして走る《ジュッテ・ナイト》が、途中でコースを変えて《フィールドバリア》へと向かっていく。
「昔風に言えばこうだな。《ジュッテ・ナイト》でてめえの場の《フィールドバリア》を攻撃だ!」
そして、十手の一撃が永続魔法を粉砕した。
展開されていたバリアが消え、そこにどこからか現れたポリスモンスターたちの集団が殴り込んでいく。
「さらに《サムライソード・バロン》の攻撃宣言時、《熱き決闘者たち》の効果でそれを無効に! そしてフィールド魔法を破壊するぜ! つまり、《サムライソード・バロン》で《サベージ・コロシアム》を攻撃! てめえら全員逮捕だぁっ!」
「ゴヨウだ!」「ゴヨウだ!」「シンミョーにしろ!」と怒鳴る声と悲鳴が響く中、闘技場に詰めかけた観客たちと運営スタッフを一人残らず捕縛、どこかに連れて行ってしまった。
「そ、そんな!」
「これでフィールド魔法はなくなったぜ! よって地縛神は自滅だ!」
《地縛神 Ccarayhua》の巨体が、それを支える場を失ったことで崩れ、炎と共に消えていく。
これで相手の場には、トークン2体が残るのみ。
「行くぜ、《ゴヨウ・キング》でトークンに攻撃だ! ゴヨウ・ストライク!」
「ま、まだ! トラップカード《ホーリージャベリン》!」
タウルス:LP700→3900→700
「があああああっ! ば、馬鹿な、どうして!? どうして神官の私が、凡人ごときにここまで!?」
「見くびってもらっちゃあ困るぜ。確かに俺ぁ、遊星やジャックみてえな力も運もねえが、人生経験は連中の倍だ。若い後続に超えられるのは当然だがな、過去の遺物に負けるほど落ちぶれちゃいねえんだよ!」
牛尾哲という男は、決して特別な存在ではない。どこにでもいる普通の人間だ。
ただ、彼はこれまでの人生の中で色々なことを学び、身につけてきた。
風紀委員の肩書きに任せて横暴を尽くしていた学生時代に食らった「罰ゲーム」が、今思えば分岐点だった。
そこから更生し、高校を出てから志した法の道。
「一つになった二つの町を、守る男がここにあり! セキュリティ最強のデッカーライダー、牛尾哲たぁ俺のことだぁっ!」
「凡人風情がさえずるなぁぁぁ!! 神官の私に逆らうなんて、ありえない! 許されない!」
「もうてめえらの時代じゃねえってことだ! 俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
牛尾:手札0
「ありえない、あってたまるか、こんなことが! 私のターン!」
タウルス:手札2→3
半狂乱でカードをドローしたタウルスだが、そのカードを見て高笑いを上げた。
「は、はは、あははははは! やっぱり神官の私に勝てるはずがないのよ! 魔法カード《デストラクション・ブラスト》! 相手フィールドのカードをすべて破壊し、その数×1000のダメージを与える!」
「待て待て待てぇ!? 何だそのカードは!?」
が、彼女はここで打つ手を間違えた。
牛尾はネオ童美野のデュエリスト、それはつまり、
「やりたい放題にもほどがあるだろうが……なら、このカードを使わせてもらうぜ! トラップカード《ダメージ・リフレクト》発動! 発動後、ターン中に俺が受ける効果ダメージは、全て反射される!」
効果ダメージへの対処については、並ぶ者がないということなのだから。
「な、えっ」
「俺の場のカードはこいつを含めて5枚! つまり、5000ダメージがてめえに跳ね返るぜ!」
牛尾の場のカードが全て光の粒子となって霧散する。
次の瞬間、俄かに起きた大爆発が、タウルスのライフを消し飛ばした。
「こ、こんな……こんな馬鹿なあああああああ!!!」
タウルス:LP700→0